憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

笑う女・・・5

2022-08-19 20:58:12 | 笑う女

笑子は16になっていた。
俺たちはこの3年間、笑子の介護をしつづけてきていた。
介護というものは単に人間の生命維持のための補助でない。
肢体を自分の意思でうごかすことができない、
笑子の筋肉を萎縮させないために
マッサージを行う。
もう一度、繰り返すが、これは、筋肉を萎縮させないためだけのもので、
笑子の肢体の自由が回復するものではない。
結局、
笑子の症状は平行線を描き続け
13歳でここに来たときと
何も変わってないといってよかった。

変わった事といえば、
笑子の外見が非常に女性らしく
なってきたことと、
3年の常駐介護で、
江崎への信頼が厚いものになっていることぐらいで、
3年の月日が流れたのは
俺たちの方だけだった。

その年の5月の連休も、あいかわらず、笑子は家族の迎えを
得られないまま施設のベッドの上にいた。
俺たちは二日ずつの交代を組み、
それぞれに、連休をたのしむことにして、
まずはじめの二日間の勤務を俺が受け持った。

そして、夜勤明けになる二日目の正午に
江崎と勤務を交代した。

施設に残った非介護者は
3人いただろうか。
家族の元につれて帰ってもらえた
被介護者は5月のさわやかな風のなか、
どこかにつれていってもらえてるのだろうに、
残った3人は白い壁をみつめながら、
食事を食べさせられ、
排泄物を交換され、
コレといった変化がないことを
良しとするだけでおわる。

「異常はないよ」
3人に食事を食べ終えさせたあと、
俺は介護日誌にサインをすると、
江崎に日誌を渡した。

「うん」
江崎はどちらかというと、無口な男だ。
笑子のことについて、
少し、気になったことがあったが、
その内容が自分の考えすぎのきがして、
江崎に伝えることはやめた。

笑子の尿パッドをとりかえたときのことだ。
職業柄、なれてきたといえども、
やはり女性の身体を直視するのは、
男の変な部分を刺激する。
ましてや、簡単にではあるが、
女性の泌尿器を清拭してやると、なると、
笑子のささいな、偶然の反応を
俺の方が妙にかんぐってしまっていたのだと思う。

笑子の泌尿器近辺の皮膚が尿でかぶれたりしないように
清拭してやるのはいつものことだ。
生えそろってきた陰毛に尿がからみ、
すえた匂いを発することもあった。
その匂いに辟易して
やはり清拭をきちんと行わなければならないと自訓したこともあった。
だから、いつものように、無造作に笑子のその部分を
ふき上げてやろうとしたときだった。

女性である部分を誇示するかのように
笑子のその部分を俺の清拭する手に
押し付けた気がしたのだ。

「え?」
ここしばらく、女性との交渉がなかった、俺は
自分の欲求不満の表れでもあるような
受け止め方を笑うしかない。

『笑子はそこにふれてもらいたがっているんじゃないか?』

そのことを江崎に話そうか、どうかと俺は迷った。
俺の馬鹿さ加減をさらけ出すのもあほうなことであり、
仮に笑子に性への希求が生じているのだとしても
それは、どうにもしてやれることではない。
江崎がそれに、きがつかないなら、そのほうがいいし、
あるいは、
江崎もそれにきがついていながら、
笑子の「女」という仇花をきがつかないふりをしているのかもしれない。

ただ、
もし、本当にそれが笑子の欲求行動であるとするなら・・・。

笑子は女であることを
憎むべきだろう。
神は女性器にあまりに鋭い感受性を持つ一角をつくりあげた。
その一角は鋭い快感で
女をしびれさせ
麻痺させ、
来るべき男を迎え入れさせるために
神がしくんだ生殖の罠だ。

笑子には、不必要な生殖本能が
笑子の精神や知能という資格を無視して
人形のように動きのままならぬ
身体にも萌えてくるとしたら、

あまりにも、神は無慈悲すぎる。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿