憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

空に架かる橋  13

2022-09-17 15:55:23 | 「空に架かる橋」

佐々木先生とあたしが手術室をでて、
少年を診察室のベッドに連れて行くとき
あたしは不思議な光景をみた。
診察室にまで運び込まれたベッドの上で、銃口を向けられていた
患者は誰一人いない。
部屋の壁の隅に
患者が着ていた服だけが山になってつまれていた。
ちらりと、目の端でみとめただけだったけど、
下着まであった。
患者は素っ裸にされて、
どこにつれさられたというんだろう?
千秋も露木先生も居ない。
明美は?
明美はまだ、哲司をだきかかえたままなのだろうか?
もし、そうなら・・・。
あたしは、敵兵のわずかな温情に感謝するしかない。
患者は?
露木先生は?
千秋は?
頭の中に沸いてくる不安は
診察室に入ったときに
明確な事実になって
目に飛び込んできた。
少年の身体をベッドにうつしながら、
あたしは診察室から、処置室を
伺ってみてた。
何本かの注射・・。
が、殺菌庫から、だされている。
そして、薬品庫。
劇薬の部類にはいる
薬品を保管してある
扉が少し開いている。
これは・・・。
どういうこと?
恐ろしい事実から、目を離そうと、あたしは薬品保管庫から
視線をずらした。
あたしの目の中で
佐々木先生が真っ青な顔になっている。
佐々木先生も
気が付いたんだ。
そして、それが何をいみするか・・・。
敵兵が行った断行が
どういうことであるか、
フォルマリン室によく足を運んだ佐々木先生は
直ぐに考え付いたんだ。
弾丸の無駄使いもしたくない。
まして、戦いが終わった後に
傷病兵を銃で抹殺したとなれば、
戦後裁判に掛けられたときに、
いいわけがたたない。
形は・・・。
患者達の自殺?
こういいつくろうため。
そして、
彼らに死をぶつけてくるかもしれない患者の反撃を
消滅させるため。
露木先生はフォルマリン室で
素っ裸になった患者に
「死の注射」をうたされているんだ。
多分、薬品庫から、持ち出されたのはカリ系の薬品。
きっと、千秋が
薬品を注射瓶に補充して、
露木先生に渡す役目だろう。
倒れた患者をフォルマリン浴槽に投げ入れる。
服を脱がせたのはそのためだろう。
服のままなげこんだのでは、
死者への手厚さがかけていると、
裁判で、自殺説が疑問視されるだろう。
そこまで生き残った後の身の保全を
かんがえる?
奴らは自分達に死が近寄ってくるのが、
おそろしくてしかたがなくて、
患者を抹殺しているのに。
あたしの頭の中で、
露木先生の言葉がぐるぐる、回っている。
「人を殺させるため、自分を殺すために患者を治療するのか?」
その、先生が自ら
患者に死を与える役目を負わされている。
千秋は・・。
どんな思いで先生に注射器を渡しているんだ。
あたしは・・・。
ものすごく悪い夢をみてるんだ。
きっと、そう・・。
きっと・・。



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