憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

空に架かる橋   4

2022-09-17 15:57:53 | 「空に架かる橋」

そして、もう一人の医師。
佐々木先生。
彼はもう60歳い近い年齢だから、この病院でのポストは、
院長ってことになる。
スタッフが総勢5名で院長って呼ばれるのも妙だろうけど、
この病院自体はかなりおおきい。

食料の保管庫も
薬品のストックも充分だし、
手術中に停電なんてことになっても自家発電機器にリターンできる。
最新設備が整っていると言う事で、この病院が
バックアップ基地として、えらばれたんだけど・・・。

一番おどろくことは、
地下室にフォルマリン浴槽があるということかもしれない。
食料・薬などの追加搬入に
2週間に一度トラックがやってくる。
帰りの便で
この病院の治療でおいつかないものや、
もう、戦線に復帰できない人間は
つれかえってもらえるんだけど、
フォルマリンの中に保管?した、亡骸も
そのときに一緒に連れ帰ってゆくことになる。

そのフォルマリン浴槽の部屋を佐々木先生は
よく、のぞきにいく。

治療が追いつかず
空に帰った人の無念な思いに
呼ばれるかのように先生は足を運ぶ。

フォルマリンで白くふやけた皮膚。
まといつけるものなく、
浴槽にふわりとうかび、よどむ悲しみ。

先生がじゅうぶん手をつくしても、
助けられない人間がいる。
これは仕方が無いんだと思うけど・・・。
千秋の話では、
先生は昨年の暮れに奥様をなくされているそうだ。

だから、亡くなったものたちの無念さが
いっそうこたえるんだろうといってた。

その佐々木先生が露木先生と
私達をよびあつめた。



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