憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

踊り娘・・・7

2022-12-21 14:18:36 | 踊り娘

あの日。
サーシャのキエフ行きをお願いしにいって、
そして、
アフターで踊るとイワノフに告げた。
「それは、すなわち、僕と結婚しないという意味だろうか?」
求婚を断っておいて
まだ、イワノフの元で働かせてくれというのは、いかにも、あつかましいと判っていた。
判っていたが
それでも、ターニャにも考えがあった。
もし、他の劇場に移ったら、
収入面も減るが、
客もへると思った。
ソロマドンナとしてのターニャを知っている客が、
アフターのターニャに対しても特殊なまなざしでなく
以前からの踊り娘としてのターニャとして、
見つめてくれるはず。
だから、アフターを踊るにしても、
ココが一番好条件だった。
ターニャのあつかましい申し出に
イワノフはビジネスの顔で応対した。

「収入はおそらく、今の2倍以上になると思う。
あと、どうしても、アフターに入ると
後援者という名目で、
君は特別な援助を申し込まれるだろう。
もちろん、これは、君のプライベート部分に関わることなので、援助を断る、受ける、は、君が決める事なのだが、
直接交渉になると、客は断られた時に
やはり、気分を害す。
だから、交渉は踊り娘に直談判でなく、
私を通してという事になっているので、
そこのところは、心得ていて欲しい」
イワノフのいい口は
まるで、ターニャがパトロン漁りのために、
アフターにいったようにきこえ、
「私は援助が欲しいわけじゃありません」
切り口上で畳み込むと
イワノフは淋しそうに頷いていた。
「判っているよ。
金が欲しいなら・・へたな客よりも、
この私が一番金を出す。
君がそういう面で私を望まなかったように、
私も逆に君のパトロンになる気もないよ。
私が欲しいのは、
共に人生を歩んでくれる人だから・・・」

イワノフの言葉は少なからずターニャの心を痛めた。
サーシャにも言われたように、
ターニャの心の底では、イワノフの存在を受け入れ
よりどころにしている自分がいるせいだったのかもしれない。
だから、アフターの同僚である彼女にとっても、
ターニャが
イワノフと一緒になるのが、自然に見えたのかもしれない。
でも、なぜ、そう見えるのだろうか?
「わたしが、イワノフさんと一緒になるのは、
変にみえないってこと?」
アフターの同僚はそうねと頷いた。
頷いたついでに、
「むしろ、貴女がここに来るほうがおかしいわね」
「ココ?」
「そうよ。このアフタータイムの踊りがどういうことか、わかっているのでしょ?」
わかっている。
胸をさらけだし、欲情をそそらせる。
客は女の子の裸身を目当てにかよう。
でも、そうじゃない観客だって居るはず・・・。
「ここに来る半分以上の女の子がパトロンを掴むのが目的。
そうでなくても、いつまでも、芽のでない自分にジレンマを起し、まわりでは、同僚がパトロンのおかげで裕福に暮らしている。
そのじれんまに追い詰められ、
身を売るような考え方にも、いつのまにか、慣れてしまって、気が着いたときには、流されてる。それが・・・おち」
「そんなことはないわ。
ちゃんと、自分を見失わず、目的をもって、
アフターで踊ってる人も居るはずよ」
子供の話はきいちゃ居られないと、
彼女は
「そうね」
と、あっさり賛同をみせる。
それが、いっそう、ターニャの癇を高ぶらせ
彼女をへこませてやるためだけの言葉を返す結果につながる。
「あなたが、自分を見失って、パトロンを掴んで楽に暮らしたがる人間だから、あたしのこともそんな眼でしかみれないんだわ」
「おとなしいだけのおじょうさんかと思ってたら、けっこうな口をたたくじゃない」
ターニャの反撃をものともせず、
むしろ、ちっとは、骨があるとターニャを認めると彼女は
「でも、世間知らず・・で、恵まれた人間でしかない」
と、ターニャへの評価は辛らつである。
また、サーシャに言われたと同じ「恵まれている」が、でてくると、ターニャも自分を調べなおしたくなってくる。
「世間知らず、恵まれてる・・・そうなのかもしれないけど、なぜ?どうして?
あなたが、そこまで言うほどに、あなたは、世間を知っていて、恵まれない人間なわけ?」
ここが、ターニャの生真面目さ。
こんな女のひとこと、ふたこと、
軽くうけながしておけないのも、
ずばり、世間知らずであるターニャを証明しているとも気づきもしない。



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