憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

踊り娘・・13

2022-12-21 14:17:06 | 踊り娘

「それ・・は、どういう事?」
「そうだね。
まず、恵まれてるってこと。
うまくいえる自信はないんだけどね。
まず、あなたは、どうにしてでも、
ん~~~。
例えば、身を売ってでも、
どうにしてでも、
踊り続けたいって、そんな事しなきゃ
舞台にたてない。
そんな目にあってないよね。
ぽっと、入った劇場でいきなり、ソロをはって、
アフターに入ったって十把一絡げのラインダンスから
登っていくのが普通のところを
これまた、いきなり。ソロデヴュー。
恵まれてるとしか、いえないけど、
そのおかげで
あなたは、石にしがみついてでも、
踊りぬく、って、情熱に欠けてる。
あたしは、踊りたい。
パトロンがど~の。
アフターがど~の。
裸がど~の。
そんなことどうでもいい。
踊り続けていくための材料でしかない。
まあ、アフターのソロにしたって、
イワノフさんのてこいれが随分あると思うけど、あなたは、それさえ、あたりまえに考えて
踊れる事を喜んで無いし
イワノフさんに感謝さえしない。
そして、その事実に気がついたら
今度はあなたは、てこいれされてソロに立った自分でしかなかったって、落ち込む。
それが、プライドの高さ。
あたしだったら、どんなに有り難いか。
何も見返りも求めず、後援してくれて、
そのおかげで、踊れる。
パトロンというよりスポンサーなんだろうけどさ。
その後押しに答えるためにもすこしでも、いい踊りをしたいって思うのが本当でしょ?
なにが・・・迷ってるよ。
笑わせないでよ。
黙って応援してくれていた人間に
感謝一つもしないで、
パトロンを持とうかしら?
そんなのね。
踊り娘より先に人として、失格。

あなたね・・・。イワノフさんが
女性としてみてくれてないって、
おもってるでしょ?
商品みたいに扱われてるって・・・。
それも、とんでもな~~~~い・・よ。
イワノフさんは
貴方の意思をなによりも尊重してるし、
あなたのことはよく分かってる。

あなたは、
ただの負け犬。
踊りじゃ身をたてられない自分の思いいれのなさを、
裸踊りのせいにして、
そこからイワノフさんにすがれば
もっと自分が惨めになるから、
気になってしかたがない存在に蓋をして
いやいや、胸を晒し
踊りを踊るんじゃなくて
胸をさらすだけ。
そして、胸を晒さなきゃならなくなった。
惨めになった。
落ちる所まで落とされたって、
わざと、イワノフさんに面当てして見せてる。

あなたが、イワノフさんをどんなにか、心の内に住まわせてるか、自分で気がついてない?

あなたが取った態度。

あなたがイワノフさんを雇用主と、考えてたら叩くなんてできないよ。

あなたは、イワノフさんに護ってもらえなかったって、思い込んで怒り狂ったわけだろうけど、
イワノフさんがただの雇用主ならあなたを
護る義務さえない。
でも、あなたの中でイワノフさんは
あなたを護ってくれる人だった。
だから、怒る。

それ、どういう意味か、わかるよね」

カタリナに解き明かされた
ターニャの心の襞はあまりにも鮮明だった。

「私は・・・踊れない・・?」
「そうよ。
踊って無いわね。
踊りたくて、踊りたくて
無性に踊りたくて・・・。
あなたのどこに、踊りがあるの?
踊りを捨てきれない未練と
妹さん?への仕送り?
妹さんのせいとは、いいたくなくて、
わが身を犠牲にする美談で宥めて
いやいや、
仕方なく、踊る。
そこから抜け出して
あっさりイワノフさんに救いだしてもらうも、
沽券にかかわって・・。
ちゅうぶらりんで、いつまでも、もがいてなさい」

「じゃあ・・私は・・イワノフさんを断らなかったほうが良かったってこと?」

「そうかもね・・・。
でも、今のあなたじゃイワノフさんまで、ちゅうぶらりんにして、苦しめるだけ。
あなたから踊りを奪い取った・・・って、苦しめられるだけ。
そんな結婚生活が幸せ?」

「わ・・た・・・し・・」
どうすればいいのだろう?
なにか、言いかけたターニャにカタリナの声が被った。

「ターニャ・・・行こう。
もう、舞台が開く・・・」



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