短歌人九月号 永田きよ子 2010-09-25 05:56:54 | 平成22年短歌人誌より 覗くなと言われし古き井戸の中遠き記憶にスイカが浮かぶ 覗くなと言ったのは父だろう。しかし、スイカが浮かんでいた記憶がある。そのスイカはどうなったのだろう。もしかして、今も浮かんでいるのかも知れない。
パピルス「紙沙草(パピルス)」阪森育代 2010-09-25 05:56:04 | クンストカンマー(美術収集室) やんはりと試しみること、ヴェランダを飛び立つ春のシーツのやうに ヴェランダを飛び立つシーツから春の柔らかな光と風を感じる。そんな光景のように日々、新しいことを試してみること。飛び立つという言葉も軽やかなイメージだ。
短歌人九月号 中井守恵 2010-09-24 06:06:17 | 平成22年短歌人誌より 樹の下に読書をすれば禁断の欲求がでる 服を脱ぎたし この一首のポイントは「樹」だ。「樹」は大きく揺るがないもの(自然)の象徴ではないだろうか。そんな樹の下で読書という野生の対極にある行為を行っているからこそ、野生そのものの欲求が芽生えるのだろう。自然なエロチシズムを感じる。
パピルス「褒美のやうに」阪森育代 2010-09-24 06:04:57 | クンストカンマー(美術収集室) ずいぶん長い一日だつたこんなにも重いひかりを見たことがない ひかりの重みという感覚が分かる。とくにどっと疲れた長い一日が明けた朝に感じる。そのまま眠れればいいのだが、起きなければならず長い一日がまた始まる。まさに何かも身に纏わるもののすべてが重いのだ。
短歌人九月号 三島麻亜子 2010-09-23 05:55:08 | 平成22年短歌人誌より ニッポンと日本(にほん)の違ひ問ふやうに屋根打つ雨と花ぬらす雨 ニッポンはカタカナ表記で軽く、サッカーやバレーの代表を応援する掛け声と同じで騒がしい印象がある。まさに、屋根を打つ雨の音のようだ。一方、日本(にほん)というと、どこか暗く重い。花ぬらす雨という比喩にも日本独自の叙情がある。多分、多くの人が納得する比喩ではないだろうか。