「生きる力を育む」教育実現のために①「資質・能力の三つの柱」②「学び方の三つの柱」③「教科固有の見方や考え方」の三本柱を核に据えている。
まず「資質・能力の三つの柱」を捉えてみる。資質・能力を「何ができるようになるか」と育成を目指すフレーズを置き、「知識・技能等」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力や人間性等」の三つの観点を選定している。これらは知識・技能面の習得を図り、その習得したものを活用して思考力・判断力・表現力を育成し、学びに向かう力や人間性などの態度を涵養することによって資質・能力を培うように踏んでいると推測できる。
次に「学び方の三つの柱」は、授業改善や学習過程の質的改善の視点として挙げられている、例のアクティブ・ラーニング、即ち「主体的・対話的な深い学び」の授業実践である。それを「どのように学ぶか」と括り、「主体的な学び」では、授業の中で意欲的に発表したり見通しを持ったりして追及し、振り返りがある授業を求めている。「対話的な学び」は、教室や学校の色々な友達や地域の方々と話し合い、コミュニケーションを図り、ICTなどの活用を伴ってより拡がりと深まりがある学びにすることを狙っている。最後の「深い学び」とは、問題解決的な学びを通して見方や考え方を養い、教科の本質に至る学びを形成できる授業実現を構想している。
三つ目の「教科固有の見方や考え方」は、教科の特質に応じた物事を捉える視点や考え方であり、「どのように活かすか」と端的な表現で述べられている。理科「溶ける」の見方や考え方で具体的に考えてみる。水を張ったビーカーに食塩の粒を入れ、その観察結果は、「①食塩の粒が小さくなる。②食塩の粒の周りにモヤモヤが現れる。③次第に粒が見えなくなる。④もやもやがビーカー一杯に拡がりやがて消えてしまう。⑤食塩が溶けた液は透き通っている(食塩が見えなくなった液は透き通っている)」などが上げられる。そして、「見えなくなった食塩はどこにいってしまったのか」と追究が続き、蒸発乾固より白いもの(食塩)が析出して納得できるのである。小学校5年生の「溶ける=溶解」の見方や考え方を簡潔に示した。この観察結果より「食塩が水に溶けた」と、「溶ける」の概念を理解でき、「理科用語=溶ける」を教えるのである。
情報化社会に生きる現代の子どもたちは、「溶ける」の言葉を聞いたり見たりしている子どもは多いと思われるが、用語・概念に内包している見方や考え方までに至る経験は皆無に近いと推測する。授業では「そこまで気付かせるように構想実践を行いたい」。それが次期学習指導要領の狙いの一つである。換言すると「本質に気付かせる授業実現」である。それは「応用が利く知識・技能」を培うことになる。汎用的な知識・技能が求められる所以でもある。
読売新聞「地球を読む」に大阪大学名誉教授 猪木武徳氏が受験に臨んだ学生の話を紹介している。第一次大戦前の欧州の同盟・協商関係を憶え、皇太子夫妻が暗殺されて戦争が勃発したと暗記していたようだ。その後「『チボーの家の人々』を読んで初めて戦争がどのような経過をたどって起きるかが少し現実味を持って理解できた」ことを報告している。このことからも見方や考え方を育成する教育の重要性を認識できると思う。