The 理科ロマンスカー

人生を振り返りつつ見過ごしては禍根を残すであろう事柄に着目。
日本の正義・倫理・規範・疑惑等々婉曲的に発信。

次期学習指導要領「授業構想の着眼点」――授業づくり関係図の読み取り  その5(評価論)

2017-09-30 15:50:23 | 日記

 関係図の説明が最後になります。右下側の5「評価論」のところをご覧ください。(図1)評価は「何が身に付いたか、どのような力が付いたか、どのように問題解決ができるか」などを見取る。



 目標と評価は一体であるので、当然のこととして、「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」と「学びに向かう力・人間性」(目標では「学びに向かう力、人間性等」と表示)の三つを対象にして評価するようになる。現行の評価の4観点から、3観点になると考えられる(図2)。

 これらの観点のほかにも、対人関係やコミュニケーション力などの社会的側面の能力や誠意や倫理などの倫理的側面も育っているかは見取ることも極めて大事になる。
授業の際に肌で感じる教師の勘も極めて大事な評価になるが、その勘の中身は上記の三つの観点を中心にして、教科学力面のみでなく、将来の社会生活で人として大事にしなければならない、社会的側面や倫理的側面も見取る力も身に付けたいものである。

 評価は自動車に例えると授業展開のブレーキ的役割であって、乱用すると授業展開であるアクセルを踏めずに授業は進まない。バランス感覚や塩梅が大事になる。その判断の拠りどころは、近未来の社会と人の在りようと子どもの事実とになる。

 いまの教室の子どもたちは、少子化で家では「王子」「王女」の集まりになっている。ですから、他の子どもと比較して劣っている評価には、敏感に反応して感情的になる。俗に「キレる」という姿である。できるまで粘り強く指導するとか、その子の良いところ、得意なところを目敏く見つけ、さらに伸びるような助言をすることである。すなわち目標に照らした評価をしたり、個人内評価をしたりしてやる気や意欲を喚起したい。子どもにとっては良いところと悪いところは相対的であるので、良いところを伸ばすことが、悪い面が目立たなくなり、子どものやる気にも繋がる。努力している児童に報いる評価ができるよう、日頃から子どもを詳しく観察し、メモって置くことである。

① 自然事象への関心・意欲・態度・・・「情意面」         ⑴知識・技能
② 科学的な思考・表現・・・「能力面」              ⑵思考力・判断力・表現力
③ 観察・実験の技能・・・「技能面」               ⑶学びに向かう力・人間性
④ 自然事象についての知識・理解・・・「理解面」



次期学習指導要領「授業構想の着眼点」――授業づくり関係図の読み取り  その4(教科本質論)

2017-09-23 10:11:45 | 日記
 関係図真ん中上側の4「教科本質論」のところをご覧ください。(図1)
ここの視点は、「教科本来の学問的背景を見据えて、それをどのように活かし教えるか」の教科本質論であり、それが教科固有の「見方・考え方」とネ--ミングしている。換言すると、教科の本質をどのように捉え、それを如何に活かして授業を設計し、授業を通して学習者に浸透させていくのか、ということである。



 理科は実験・観察という理科固有のものがあり、それは近代科学が確立し、知識が生まれてきた方法論が背景になっていて、教科はそれぞれの親学問が根拠になっている(一部そうでない教科もある)。これが理科教科の本質である。
 小学校でのことであるが、授業参観をした折にどの教科の授業か、一瞬判断に戸惑うことがあった(低学年の教室ではそういうことはあると思われるが…)。国語の教科を一言で表したら・・・・・。算数科は何をねらっている教科か・・・・・。すなわち教科の役割である。理科は何と言っても「実験・観察」である。これを大前提として「教科の見方・考え方」を考察する。



 植物を観察する際には、まずは草花全体をながめさせ、次に①花びら(花弁)の形は。②葉のつき方は。③葉の形は。と一つひとつ問いかけて確かめる。さらに、草花は季節よって違う。花が咲いている時は目に付きやすいが、①花が咲くまで。②種子。③実のできるとき。④そこにどんな虫が来るか。⑤種子の運ばれ方はどうか。などの働き掛けは大切になる。
 これは「全体」から[部分]へ、見る視点・観点で「見方」にあたる。この見方を通して、葉の形や葉のつき方から草花の共通性や多様性に気付いていくのである。

 理科の「見方」(エネルギー・粒子・生命・地球の各領域の事物・現象の特徴や特性に応じた自然を見る視点や分類の視点など)としては、まずは感覚である五感で捉えたものを、全体と部分、量的と質的、共通点と差異点、定量的と定性的、時間的、空間的、多面的などの視点をもって対象を観察、分析していくのである。これらの見方の視点で捉えたことを、意味付けて結果や結論に導く際(理科の「考え方」=問題解決や科学的探究を通して自然の規則性や法則を得るための実証性・客観性・再現性に裏付けられた理科固有の方法論につながるもの)には、思考の方法・仕方として、比較したり関係づけたり、あるいは、図表化したり、グラフ化したり、構造化したり、あるいは帰納的や演繹的な考えを動員して、問題解決を図って行くのである。これが理科の「考え方」である。
一連のこれらのことを教科の見方・考え方といっている。そのことを図2に表している。

 理科の本質を基盤として、対象である事物・現象をどのように見て(観て)追究し、捉えたものを如何に考察して結論に導くかであり、指導者である教師が教科の本質を掴んで、指導計画を立て、授業を行うことは、深い学びに繋がることは確信できる。教科内容研究の意義が増していることは間違いない。


次期学習指導要領「授業構想の着眼点」――授業づくり関係図の読み取り  その3(指導方法論)

2017-09-16 06:05:42 | 日記
 今度は関係図左下側の3「指導方法論」のところをご覧ください。
 ここは子どもが「どのように学ぶか」の学習の方法に焦点を絞っているところである。教師側から見ると「どのように教えるか」の指導方法の視点であり、「主体的・対話的で深い学び」と冠を付け、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の3つの柱が学び方として示され、授業展開の際の重点になる。



 この視点の指導方法論については、これまでの学習指導要領では学校や授業者に任されていたが、次期からは汎用性が高く、全ての教科領域に通用できることを想定の上で、授業改善の柱として登場してきた。
三つの柱のキーワードは授業展開上においてどれも大事であり、現在も心ある授業者はその育成に取り組まれていて新鮮味には欠けると思われる。だかしかし、指導方法の柱として示されたことは意味は大きく、授業者は常に意識して実践することになり、授業改善につながる価値は大きい。

 指導方法の3柱の捉えを具体的に考察する。まず「主体的な学び」の実現のためには、学習問題を明確にすること、45分間の授業や単元での見通しを持つ場を設けること、考えを記録させたり発表をさせたりすること、興味や関心を抱かせる投げ掛けを用意すること、学習の振り返りをさせることなどが考えられる。授業者は、どの子どもに主体性を身に付けさせるために腐心している。が、一足飛びには育たないのが現状である。

 次に「対話的な学び」では、本来学びはソクラテスの頃から対話を持って行われていた。仏教の世界で師匠と弟子との面授も同様である。授業のイントロは、先生の投げ掛けである質問より入ることが多い。授業では当然教師と子ども、隣の子ども同志の一対一、グループでの話し合いなど、話し合う場が多い。ここで重要なことは話し合う場の設定の意味を授業者がもち、どんな内容を話し合うか事前に綿密に練っておく必要がある。また、外部講師の方々や地域の方々との触れ合いの場もあり、ICTなどの機器の活用や情報収集も考えられる。要するに人とかかわり、事物や現象との触れ合いなどが該当する。

 三つ目の「深い学び」は、「実感できる学び」「本わかりの学び」「教科の本質に気付く学び」「応用が利く学び」「問題解決に働く学び」など授業ではどの教師もこれらのレベルに到達する学びを狙っていることは間違いない。
観察、実験、調査、レポート作成、プレゼンなど体を使い、足を用いて、頭をグルグル回して理解に至る学びが深い学びになる。
 
 学んでいることを生活に結びつける授業。なぜこの公式が成り立つのか、この法則は日常生活、社会、世界でどのように使われているかに気付かせる授業。今学んでいることと、実際の世の中に現れる現象のつながりをできるだけ豊かなイメージともに伝える授業などなど。これらの授業は、「深い学び」の域に達していると思われる。

次期学習指導要領「授業構想の着眼点」――授業づくり関係図の読み取り  その2(指導内容論)

2017-09-09 15:33:18 | 日記

 次は関係図左上側の2「指導内容論」のところをご覧ください。

 ここは子どもが「何を学ぶか」の学習の中身であり、教師側から見ると「何を教えるか」の指導内容の視点である。指導内容はご承知の通り学習指導要領に示されており、次期の学習指導要領の内容は現行の学習指導要領の内容とほぼ同一である(追加した内容や学年・校種間移動した内容はある)。

  下図は小学校理科の目標と内容との関係である。このように整理することによってピンポイントで俯瞰的・構造的に捉える事ができ、教科内容研究の羅針盤になる。

 これらの内容を扱うことを通して、1の視点である「子どもに問題解決の資質・能力を育てよう」と、仮説・構想しているのが次期の学習指導要領の哲学であると想像できる。

 授業づくりに当たっては、学習指導要領 解説編を熟読され、教科内容研究の指針の礎としたい。教科書は資料性が濃くなり内容と共に、情報量も増えページ数も厚くなっている。教科書の内容をすべて授業の俎上に載せようとすると、指導時間が何時間あっても足りなくなる恐れが強い。

 指導目標や指導内容を確実に理解し、重点的な指導計画づくりが基本になる。その際には、小学校4年間の理科、更には中学校3年間の理科内容を鳥瞰的に捉えて授業構想を立てることが、子どもの確かな成長には欠かせない。併せて教科等間の繋がりも考慮したい。このことを学習指導要領では「カリキュラム・マネジメント」と表現している。学年学校種間・教科横断を通した指導計画構想・実施と考えたい。

 加えて、補った方が良いと思われる内容や子どもの思考に沿っていない内容等、実践を通して解明・改善することも分かる授業づくりには挙げられる。


次期学習指導要領「授業構想の着眼点」授業づくり関係図の読み取り その1

2017-09-05 15:09:13 | 日記

 関係図右下側の1「指導目標論」をご覧ください。子どもに育成を目指す「何が出来るようになるか」の視点がここである。資質・能力を育成する三つの柱で構成していて、先進国が目指しているキー・コンピテンシーや21世紀型スキルの世界標準学力を参考にしているようだ。今後の10年間に必要な学力論とも捉えることができる。

 

 視点の1つ目の柱は「知識・技能等」。「認知的側面」にあたり、知ることとできることを培うことであるが、決してそれらの多寡に価値を置くわけでなく、生きて働くものでなければならない。それは習得、活用場面を実際に多くすることで獲得される。知識・技能形成までの理解の過程を重視することは、応用が利くようになる。

  2つ目は「思考力・判断力・表現力等」である。対象に対し感覚を通して捉え、「何だろう・不思議・疑問・おかしい」などの心の揺れより、「ああかな。あーでもないな。いや、こうであろう。こうも考えられる」と想いを巡らす。そうして書物で調べたり、調査・実験したり、先人の知恵を借りたりなどして友だちと協力し、一定の結論を導く。その際には直接・間接で得た先行経験や既有知識などと照合・判断して、思考し認識に至るわけであり、その結果、これらを言葉や文字、行動など、発表やプレゼン、記録など視覚化する。

 現象や事象を認識していく過程で活用される「思考力・判断力・表現力等」は一つ一つ切り離して考えるのではなく一体として捉えたい。

 これも「認知的側面」と考えられ、「知識・技能等」と「思考力・判断力・表現力等」はひと括りに扱い、もの・こと・ひとを認識し理解して、知識という概念に至る一連の過程で発揮・活用されている。

  これらの下支えをしている柱が「学びに向かう力・人間性等」である。これは「情意的側面」に当たり意欲・関心につながり日々の生活や学びを突き動かすエネルギー的役割を担っていると言える。この柱は子どもの個性や性格・人格にゆだねられる所が多分にある。それは得手不得手であったり、器用不器用であったり、センスや忍耐力や責任感の有無であったり、日々の生活リズムであったり、日頃の睡眠や体調であったり、親からの遺伝子であったりなど、どの程度学校教育で育てられるかは不確定要素が強いジャンルである。

  3柱の範疇で抜けているものは対人関係・自己調整能力やコミュニケーション能力、チームワーク能力などの「社会的側面」である。社会生活では重要視されているが、学校教育では正式に話題の俎上に乗せられていないと言える。キャッチアップ時代や偏差値教育の頃には大事にされなかった能力の一つである。

 現在社会で活躍している方々を分析・解析すると、この分野も極めて大切であることがわかり始めている。

 学級経営や行事など特別活動の領域、部活等で意識して育てていきたい能力の側面であると思うとともに、今後内容能力の洗い出しと獲得のプロセス研究が重要になってくると確信する。