ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『シェイプ・オブ・ウォーター』を観て

2018年03月28日 | 2010年代映画(外国)

久し振りに映画館に行き、『シェイプ・オブ・ウォーター』(ギレルモ・デル・トロ監督、2017年)を観てきた。

1962年の冷戦下のアメリカ。
発話障害の女性であるイライザは映画館の上にあるアパートでただ独りで暮らし、機密機関「航空宇宙研究センター」で清掃員として働いている。
アパートの隣人であるゲイのジャイルズ、仕事場の同僚で、不器用なイライザを気遣ってくれるアフリカ系女性のゼルダに支えられ、
平穏な毎日をおくりながらも、彼女は恋人のない孤独な思いをつねに抱えている。

そんな日々のなか、宇宙センターに新メンバーのホフステトラー博士が一体の生物の入ったタンクを運び込む。
普段はイライザに不遜な対応を見せる軍人ストリックランドが、生物を邪険に扱った報復を受けて指を失う騒ぎがあり、
清掃のために部屋に入ったイライザは初めてその生物を直視する。

生物は「半魚人」と呼べる異形の存在だったが、独特の凛々しさと気品を秘めた容貌をもち、イライザの心を揺り動かす。
彼女は生物に好物のゆで卵を提供し、手話を教えて意思の疎通をはかる・・・
(Wikipediaより一部抜粋)

出だしからの雰囲気がいい。
監督がデル・トロと言うことで、何となくクセがある雰囲気がたまらない。
さあ、どのような異様な世界に導いてくれるか、とワクワクする。

「半魚人」は、アマゾンの奥地で神として現地人の崇拝を受けていた存在だという。
この「半魚人」は、『大アマゾンの半魚人』(ジャック・アーノルド監督、1954年)の生物が進化した雰囲気で、見た目がそっくりなのが馴染みやすい。
そんな「半魚人」に、イライザは興味以上の感情を抱いていく。

嫌みなストリックランドが権力をかさに、「半魚人」を生体解剖してこの生物の秘密を明らかにしようと企む。
そのことを知ったイライザは、いかにして「半魚人」を匿って逃がそうかと、この辺りからのサスペンスが堪らない。
それに輪をかけて、ソ連のスパイの関連も絡んで、ストーリーが重層的になってくる。

と言っても、テーマはイライザと「半魚人」の究極的な愛。
このイライザ役のサリー・ホーキンスが、正直に言って美人でないので、この愛を客観視できるところが興味深い。
そしてラストシーン。
その愛の昇華は、なぜか『鰐』(キム・ギドク監督、1996年)のラストの水中イメージを連想し、印象強い。

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『春の調べ』を観て

2018年03月01日 | 戦前・戦中映画(外国)

チェコスロバキアの作品、『春の調べ』(グスタフ・マハティ監督、1933年)を観た。

新婦のエヴァは、新郎エミルとの新居のアパートでの生活に夢を膨らます。
しかし、年の離れている夫エミルは、妻に対して優しい気遣いをすることもなく、無頓着である。
そんな夫に対してエヴァは、自分を構ってくれないことに内心失望し、気持ちの持って行き場がない。

ある日、エミルが一匹の虻を無慈悲に打ち殺すのを見たエヴァは、夫に憎悪を感じる。
そして、田舎の実家へ逃げ帰ったエヴァは、離婚の手続きをして・・・

実家にいるエヴァは、ある日、馬に乗って森の中の河に泳ぎに行く。
しかし当の馬は、他の馬がいることに気づいてそちらに行ってしまう。
困ったエヴァは、素っ裸で馬を追う。
そして、若い建築技師のパウルと出会う。

全裸で泳ぐ場面 があるために、当時この作品は、全世界で衝撃だったようで、日本公開でも検閲でズタズタにされたと言う。
今の感覚で鑑賞すれば、何ということもない、ただバストが一瞬映る程度の話で、泳ぐシーンも、遠くで泳いでいるなと言うぐらい。
でも時代も考えれば、何事も初と言うことは、それはやはり凄いことではないか。
そうやって、物事はひとつずつ徐々に壁を乗り越えて、今に繋がっているはずだから。

パウルとエヴァが結ばれるシーンでも、端的に言えば、エヴァの表情とその周辺が映るだけである。
そのようにして、全体のイメージを描く。
まさしく時は、サイレントからトーキーに移った時期だから、セリフも最小限。
そして、風景描写を巧みに使い、それを補うように、全編に渡る音楽が雰囲気を醸し出す。

ただ残念に思うのは、未だにカットされた場面が相当箇所あるようで、オリジナルで観れないこと。
だから、DVDで鑑賞できるのは1時間チョットの作品で、ラストはオリジナルと異なるという。
それでも、歴史的価値のあるはずの作品は、やはり観れないより観れた方が余程いい。
ただし観る側が、現在の観賞眼のままで作品と対峙しても失望があるだけだろうし、もし内容に不満を感じたら、その作品に対しても礼を失することになると思う。

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