久し振りに映画館に行き、『シェイプ・オブ・ウォーター』(ギレルモ・デル・トロ監督、2017年)を観てきた。
1962年の冷戦下のアメリカ。
発話障害の女性であるイライザは映画館の上にあるアパートでただ独りで暮らし、機密機関「航空宇宙研究センター」で清掃員として働いている。
アパートの隣人であるゲイのジャイルズ、仕事場の同僚で、不器用なイライザを気遣ってくれるアフリカ系女性のゼルダに支えられ、
平穏な毎日をおくりながらも、彼女は恋人のない孤独な思いをつねに抱えている。
そんな日々のなか、宇宙センターに新メンバーのホフステトラー博士が一体の生物の入ったタンクを運び込む。
普段はイライザに不遜な対応を見せる軍人ストリックランドが、生物を邪険に扱った報復を受けて指を失う騒ぎがあり、
清掃のために部屋に入ったイライザは初めてその生物を直視する。
生物は「半魚人」と呼べる異形の存在だったが、独特の凛々しさと気品を秘めた容貌をもち、イライザの心を揺り動かす。
彼女は生物に好物のゆで卵を提供し、手話を教えて意思の疎通をはかる・・・
(Wikipediaより一部抜粋)
出だしからの雰囲気がいい。
監督がデル・トロと言うことで、何となくクセがある雰囲気がたまらない。
さあ、どのような異様な世界に導いてくれるか、とワクワクする。
「半魚人」は、アマゾンの奥地で神として現地人の崇拝を受けていた存在だという。
この「半魚人」は、『大アマゾンの半魚人』(ジャック・アーノルド監督、1954年)の生物が進化した雰囲気で、見た目がそっくりなのが馴染みやすい。
そんな「半魚人」に、イライザは興味以上の感情を抱いていく。
嫌みなストリックランドが権力をかさに、「半魚人」を生体解剖してこの生物の秘密を明らかにしようと企む。
そのことを知ったイライザは、いかにして「半魚人」を匿って逃がそうかと、この辺りからのサスペンスが堪らない。
それに輪をかけて、ソ連のスパイの関連も絡んで、ストーリーが重層的になってくる。
と言っても、テーマはイライザと「半魚人」の究極的な愛。
このイライザ役のサリー・ホーキンスが、正直に言って美人でないので、この愛を客観視できるところが興味深い。
そしてラストシーン。
その愛の昇華は、なぜか『鰐』(キム・ギドク監督、1996年)のラストの水中イメージを連想し、印象強い。