『花形選手』(清水宏監督、1937年)を観た。
関と谷は大学陸上部のランナーで好敵手。
中でも関は校庭で昼寝していても、ひとたび起てば力を発揮する花形選手である。
学生たちは演習のための行軍に出発した。
いつしか村童たちも従っている。
突撃で一番乗りの谷が、子供たちを煽って「勝った方がいい」と囃し立てて関を怒らせる。
落伍した木村と付き添った森を捜しに戻った関は、男女の子供を連れた若い門付け女に出会う。
関は女の子に柿を与えた。
夜、木賃宿や民家に分宿した学生隊。
女の子が柿が原因で病気になった。
女は薬代に窮して一夜、体を売らねばならぬ。
関は行商人たちに絡まれるが、森と木村に任せて女の後を追う。
そこへ出て来た学生隊一同。
隊長の難詰。谷の友情の鉄拳制裁。
翌朝、彼らは帰路についた。
昨夜の行商人たちは追われていると思って、一散に逃げて行く。
今度の突撃は関が勝った。
グラウンドに戻れば秋の競技大会も間近い。
(「映畫読本 清水宏」より)
大学の軍事教練のために大勢が道を進軍していく。
その道で彼らが追い越していく人やすれ違う人たち。
これと言った物語らしい起伏のある筋があるわけでもないが、ここには典型的な清水宏の特徴が出ている。
ロケーションによる移動撮影や、それによって映し出される風景。
ユーモアを交えた内容の爽やかさ。
そのユーモアを醸し出すのが、花形選手の関・佐野周二と谷・笠智衆。
印象的なのは、女の子が腹痛になり夜間やって来た医者に払う治療費がない門付けの女。
そこへ、木賃宿の婆さんから客から指名が入っていると言われ、女は仕方なく出かけようとする。
居合わせていた関は、その様子を見て「芸人がお座敷に行くのになぜ三味線を持っていかないのだ」と詰め寄る。
女は言い訳もせず、ひと言も喋らない。
外に出た二人は、やはりひと言も喋らず沈黙する。
その二人が歩んでいる所へ行軍の隊長たちが来て、逢引きしていると思う隊長は叱責し、谷は関を殴る。
それに対して、関は言い訳をしない。
何気なくサラリと描かれるシーンだが、それが反って強い印象を残す。
清水宏の作品にはよく、貧しい浮浪の旅人などが出てくるが、今回の場合、まだまともに世間を知らない学生の関が現実社会を知る切っ掛けとなっている。
そして、映画は一見暢気そうな軍事教練を描いているが、時代はその後、果てしない戦争一色の社会に突き進んでいく。
関と谷は大学陸上部のランナーで好敵手。
中でも関は校庭で昼寝していても、ひとたび起てば力を発揮する花形選手である。
学生たちは演習のための行軍に出発した。
いつしか村童たちも従っている。
突撃で一番乗りの谷が、子供たちを煽って「勝った方がいい」と囃し立てて関を怒らせる。
落伍した木村と付き添った森を捜しに戻った関は、男女の子供を連れた若い門付け女に出会う。
関は女の子に柿を与えた。
夜、木賃宿や民家に分宿した学生隊。
女の子が柿が原因で病気になった。
女は薬代に窮して一夜、体を売らねばならぬ。
関は行商人たちに絡まれるが、森と木村に任せて女の後を追う。
そこへ出て来た学生隊一同。
隊長の難詰。谷の友情の鉄拳制裁。
翌朝、彼らは帰路についた。
昨夜の行商人たちは追われていると思って、一散に逃げて行く。
今度の突撃は関が勝った。
グラウンドに戻れば秋の競技大会も間近い。
(「映畫読本 清水宏」より)
大学の軍事教練のために大勢が道を進軍していく。
その道で彼らが追い越していく人やすれ違う人たち。
これと言った物語らしい起伏のある筋があるわけでもないが、ここには典型的な清水宏の特徴が出ている。
ロケーションによる移動撮影や、それによって映し出される風景。
ユーモアを交えた内容の爽やかさ。
そのユーモアを醸し出すのが、花形選手の関・佐野周二と谷・笠智衆。
印象的なのは、女の子が腹痛になり夜間やって来た医者に払う治療費がない門付けの女。
そこへ、木賃宿の婆さんから客から指名が入っていると言われ、女は仕方なく出かけようとする。
居合わせていた関は、その様子を見て「芸人がお座敷に行くのになぜ三味線を持っていかないのだ」と詰め寄る。
女は言い訳もせず、ひと言も喋らない。
外に出た二人は、やはりひと言も喋らず沈黙する。
その二人が歩んでいる所へ行軍の隊長たちが来て、逢引きしていると思う隊長は叱責し、谷は関を殴る。
それに対して、関は言い訳をしない。
何気なくサラリと描かれるシーンだが、それが反って強い印象を残す。
清水宏の作品にはよく、貧しい浮浪の旅人などが出てくるが、今回の場合、まだまともに世間を知らない学生の関が現実社会を知る切っ掛けとなっている。
そして、映画は一見暢気そうな軍事教練を描いているが、時代はその後、果てしない戦争一色の社会に突き進んでいく。