ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『回転』を観て

2022年08月03日 | 1960年代映画(外国)
『回転』(ジャック・クレイトン監督、1961年)を観た。

ミス・ギデンスは、ロンドンの裕福な男性から甥と姪のための家庭教師として採用される。
郊外の古い屋敷に到着したギデンスを、幼いフローラと世話人のグロース夫人が迎えた。
少し経って、寄宿学校を退学させられた兄のマイルスが屋敷に戻ってくる。

兄妹はギデンスになつき平穏な日々が続いていたが、
ある日、庭から屋敷の塔を見上げたギデンスは、いるはずのない男が彼女を見下ろしているのに気づき、そこに行くとマイルスだけがいた。
数日後、夕方に突然フローラがいなくなり、ギデンスが池の端まで探しに行くと、池の草むらの向こうに黒衣の女が立っていた。
やがてギデンスは、屋敷で何かと不気味な人影を目撃するようになり、また、兄妹の行動にも割り切れぬものがあると気づかされる。
そのためギデンスは夜、寝てもうなされるようになり、この屋敷の真相を知ろうとグロース夫人に問いただす。

グロース夫人によると、使用人だった男と前任の家庭教師の女は恋愛関係にあった。
ある夜、使用人が何者かによって惨殺され、家庭教師はその後を追って池で自殺した。
それ以後、二人の霊は幼い兄妹の体を通して恋を語っているのだった。
その事を知ったギデンスは、マイルスとフローラの体から亡くなった二人の霊を追い払おうとするのだったが・・・

まず、驚くのはマイルスとフローラ役の子供の演技が真に迫っていること。
幼い兄妹の、可憐でありながらどこか邪悪さを秘めた眼差し。
それに対する、家庭教師ギデンス役のデボラ・カーの動揺。

隠されていた屋敷の秘密と潜む幽霊。
その雰囲気を、広大な屋敷の中で陰影を効かせたモノクロ映像が醸し出し、ギデンスは幼い二人を悪霊の手から必死に守ろうとする。
ただ、悪霊が兄妹に取り憑いているのは間違いなさそうだが、実際に幽霊を見たのはギデンスだけである。
うがった見方をすると、悪霊の存在はギデンスの妄想かもしれないとも想像できる。
そこのところは、意識してなのか作品として曖昧模糊にしてある。

この作品の作り方は申し分がなくて、そのためか隠れた傑作と言われるとのこと。
ただ、キリスト教的悪霊祓いの類は、最近観た『尼僧ヨアンナ』(1961年)や『エクソシスト』(1973年)同様、いくら出来が良くっても、
なぜかシックリしないところがあって、評価は“成る程なぁ”というぐらいのところから私は抜け出せない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする