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廿七 紫陽花│「四季の花」夏之部・貮, 芸艸堂, 明治41年
雨に濡れた路地に咲くアジサイが見頃の季節を迎えた。連城三紀彦著の小説『あじさい前線』初版の帯に、著者は「アジサイはむしろ好きな花ではない」でありながら、自作中にこの花を使う理由として「アジサイではなく、この花が連想させる雨の色や陽の光や空の色が好きなのである。たぶんアジサイの周辺の季節を書きたいのだろう。」と記しておられる。
「綉球」はユキノシタ科、アジサイ属の落葉低木であるアジサイ(紫陽花、八仙花、綉球花)、学名Hydrangea macrophylla (Thunb.)Ser.の花と葉から得られる生薬名である。花には配糖体ヒドランゲノール(hydrangenol)が含まれる。薬性は苦,微辛、寒、小毒、効能は抗瘧、清熱、解毒、殺虫(抗瘧疾(Malaria)作用があり、熱毒を冷まし取り除き、腸管内寄生虫などを駆除する。)である。厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」、植物性自然毒に分類掲示され、アジサイの中毒事例や毒性成分が未だ不詳であることが明示されている。不用意に薬用や食用に用いることは避けるべきである。
末尾に掲げた白居易の「紫陽花」に詠われた花はアジサイではない。牧野博士著『花物語』の「アジサイ」、「そうじゃない植物三つ」で詳細に論じられている。
紫陽花 白居易
招賢寺有山花一樹、無人知名。色紫気香、芳麗可愛、頗類仙物。因以紫陽花名之。
招賢寺に山花一樹有り、人の名を知るもの無し。色紫にして気香ばしく、芳麗愛す可く、頗る仙物に類す。 因って紫陽花を以て之を名づく。
何年植向仙壇上 何れの年にか 仙壇の上(ほとり)に植ゑたる
早晩移栽到梵家 早晩(いつ)か 移し栽ゑて梵家に到れる
雖在人閒人不識 人閒に在りと雖も 人識らず
與君名作紫陽花 君の與(ため)に名けて 紫陽花(しやうくわ)と作す
白氏文集・巻二十
参考資料:
牧野富太郎著:ちくま学芸文庫「花物語」, 筑摩書房, 2010
連城三紀彦著:「あじさい前線」, 中央公論社, 1989
岡村繁著:新釈漢文大系「白氏文集(四)」, 明治書院, 1990
三橋博監修:原色牧野和漢薬草大圖鑑, 北隆館, 1988
南京中医薬大学編著:「中薬大辞典 下(第二版)」, 上海科学技術出版社, 2006
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