六 春龍膽・筆桔梗・文字ずり草・貝母・白蒲公英│「四季の花」春之部・壱, 芸艸堂, 明治41年
貝母(バイモ)は、ユリ科、バイモ属の多年草、アミガサユリ(編笠百合)、別名バイモユリ(貝母百合)、学名
Fritillaria verticillata Willd. var.
thunbergii Bakerの鱗茎から得られる、化痰止咳平喘薬に分類される生薬である。中国では浙貝母(セツバイモ)、川貝母(センバイモ)に区別され、日本市場品は浙貝母である。浙貝母の薬性は苦、寒、川貝母の薬性は苦、甘、微寒、両貝母ともに帰経は肺・心経である。両貝母の効能は同じく清熱化痰、散結消腫であるが、浙貝母は開泄の力が大で清熱・開鬱・散結の働きが強く、川貝母は潤性で潤肺止咳の作用に優れる。配合される方剤に清肺湯(効能は清肺養陰、理気化痰)、滋陰至宝湯(効能は滋陰清熱、疏肝健脾)などがある。なお2023年3月現在、COVID-19における需要増加の為、医療用漢方製剤の多くが出荷制限され安定供給が滞っている状況である。
編笠百合/貝母百合の花期は3~4月、花弁は淡緑色で、内側に名の由来となる網目模様を持つ、鐘状の下垂する花を茎頂に数個つける。「貝母の花」は春の季語である。