南屏山昇月 曹操/月岡芳年「月百姿」
3 Rising moon over Mount Nanping --- Cao Cao
歩出夏門行(神龜雖壽) 曹操孟徳
神龜雖壽 猶有竟時 神亀 壽なりと雖も 猶お竟くる時有り
騰蛇乘霧 終爲土灰 騰蛇 霧に乗るも 終には土灰と為る
老驥伏櫪 志在千里 老驥 櫪に伏するも 志は千里に在り
烈士暮年 壯心不已 烈士の暮年 壮心 已まず
盈縮之期 不但在天 盈縮の期は 但だ天に在るのみならず
養怡之福 可得永年 養怡の福 永年を得可し
幸甚至哉 歌以詠志 幸甚 至れる哉 歌いて以て志を詠ぜん
楽府詩集│「曹操・曹丕・曹植詩文選」, p61-63
*蛇足の独り言:魏の曹操孟徳は群雄割拠の後漢末期における、慧眼無双、文武両道の覇者である。『三国志演義』を基本に制作されたテレビドラマ「三国志 Three Kingdoms」のDVDを毎日一話ずつ視聴していた頃、桃園の誓いや三顧之礼、単騎救主、出師の表等々が偲ばれる蜀の英雄群像推しの眼には、第84話「麦城に敗走す」以降の蜀の落日が甚だ傷ましく、未だに全てを見終わっていない。
「おごれる人も久しからず、唯春の夢のごとし。たけき者も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ」は『平家物語』の冒頭である。風塵の如く歴史の彼方に消えゆくとも、其の上には時世に挑み力の限り生きた烈士達がいた。両書はともに私の愛読書である。自らの人生は清淡虚無には程遠いが、卑怯陋劣とは無縁でありたいと切に思う。
参考資料:
川合康三編訳:「曹操・曹丕・曹植詩文選」, 岩波書店, 2024
吉川英治著:吉川英治歴史時代文庫「三国志」, 講談社, 2012
落合清彦校注:「完本三国志」絵本通俗三国志, ガウスジャパン, 2006
井波律子訳:講談社学術文庫「三国志演義」, 講談社, 2019
小川環樹, 金田純一郎訳:岩波文庫「完訳三国志」, 岩波書店, 2012
羅貫中著:中国古典文学読本叢書「三国演義 」, 人民文学出版, 2019
Stevenson J: Yoshitoshi’s one hundred aspects of the moon, Hotei Publishing, 2001
市古貞次校注・訳:日本古典文学全集「平家物語」, 小学館, 2014