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唐木田通り 36

2007-03-25 10:15:32 | 唐木田通り
「奥さん、随分冷静だったな」
由起子をとりあえずホテルに帰らせた後、杉橋は呟いた。
「片づくまでいる、なんて随分義務的に聞こえますね」
森川も同感のようだ。
「何年も女性関係が続いていたのが分かり、冷め切ってしまったという事なのかな」
「先輩も気をつけて下さいよ」
「俺はそんなにもてないよ」
「よく柳ヶ瀬に飲みにいってるじゃないですか」
「酒が飲みたいからだけだよ、それより井上玲子の所在は分かったのか」
「確認が取れました、先週の金曜日からいつも通り出社しているそうです」
「そうか、警視庁にはもう連絡はいったの」
「岡安警部がとりました」
「そう、それじゃ任せるしかないな」
「柳ヶ瀬近くに下請け会社の事務所がありますね、今日営業しているそうなので行きたいのですが」
「そうだったな、そこの責任者に会ってみよう」
村瀬は二人の刑事が面会に来たのを知って、面倒な事になるな、と気が重くなった。
「お仕事中お邪魔します、早速ですが中谷さんが亡くなられたのはご存知ですね」
年上の刑事が鋭い目つきで質問してきた。
「はい、新聞で知りました」
「来る前にこちらに連絡はなかったのですか」
「ありませんでした、いつもですと必ず電話を掛けてくるのですが、今回は何の連絡もなくて、驚いています」
先週水曜日から今週火曜日にかけてのあなたの行動を詳しくお聞かせ願いたいのですが」
「私のアリバイ、という事ですか」
「関係者全員にお聞きしていますので、ご協力願います」
「まとめるのに少し時間が欲しいのですが、出来次第提出しましょう」
「すいませんがよろしくお願いします、所であなたと中谷さんとは仕事を通じての付き合いが深いと聞いていますが」
村瀬はどこまで警察が細かい事を知っているのか計りかねていたが、まだ殆ど分かっていないらしく少しほっとした。
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