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唐木田通り 38

2007-04-01 16:47:16 | 唐木田通り
「結局、私は中谷さんに捨てられたのです、でも恨む気持ちはありませんでした、水商売しか知らない自分を一人前の社会人に育ててくれた、いまでも感謝しています」
重要参考人ではあったが決め手はなく、その日は帰すことにした。鈴木刑事は、この女はシロだと感じた。やはり岐阜に集約されているのだろうか。

警視庁の取調べ結果を聞いて、岐阜の刑事二人は気合いを入れ直した。
「もう一度、あの村瀬氏を今度は呼んで調べてみましょうか」
杉橋刑事は直属の上司である部長に同意を求めた。
「やるしかないな」
許可が下りたので、翌日村瀬に対し任意出頭を求めた。

沢村は由起子が岐阜に行った次の日、誰にも連絡を取らず一人で岐阜に着いた。
どうしても向井智子の事を知りたくなったのである。
着いた日の昼前、早速向井の住んでいる家の近くまで行ったのだが、古い家並みが続く静かな一角なので隠れ場所がなく、川の近くを観光に来た様なふりをして歩き回っていると、親子三人連れが歩いてくるのが見え、よくみると父親らしい男は村瀬であった。
沢村はとっさに隠れて三人を窺っていたが、他の二人は向井とその子供らしい。
子供は村瀬にとてもなついているらしく、手をつないで嬉しそうだ。
本当の親子みたいだ。沢村はもしや、と思った。
いままで村瀬の話をうのみにしていたのだが、彼とは短時間会って話を聞いただけでなんの確証もない。自然と彼らの後をつける格好で歩いていったのだが、買い物をしながら昼食の為レストランに入ったのを見届けて、その場を離れ、市内にある
興信所に村瀬と向井の個人的な繋がりを至急調べる様依頼した。
夕方になり、由起子に電話を入れてみた。
「お疲れ様でした、取調べも受けたのでしょう」
「ええ、疑われているみたい、片づくまでいる、と言ってきたわ・・・良一さんに会いたいわ」


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