米長会長との思い出。

2012-12-19 | 将棋

米長先生と初めてまともに話をしたのは、僕が竜王戦に初出場した年の年末だった。シリーズは3対3か2対3という状況だったはず。先生がまだ会長になる前で、もし会長になれたらこんな事をしたい、という構想を数名の棋士の前で語る、そんな食事会だった。店を出て駅に向かう途中、酔っ払いのおじさんに「おお、将棋の米長さんじゃないの?」と話しかけられる姿を見て「自分もこれくらい有名になりたい。竜王になるぞ」と思ったものだ。

先生が会長になってからはスポンサーへのご挨拶や宴席にお伴する機会も増えた。知識は多岐にわたり、どんな話題でも合わせられるのはすごかったし、会長ってのはこういうもんだ、見て覚えろとその背中が言っているようだった。米長会長就任後、将棋界には色々な出来事があった。やる事に全て賛成というわけではなかったけれども、リスクや批判が伴うことを断行する行動力と勇気は組織のトップに立つ人間らしかった、と思う。右肩上がりならばじっとしていれば良いけれども、将棋連盟はそういう状況ではないわけだから。

いつも明るくユーモアがある先生で、いつだったか、年配の方に差し上げる色紙に「余性」と書かれた。その色紙は別にいらないけど、その隣にあった左馬は素晴らしい字で、自分も欲しいと思った。いつかもらおう、いつでももらえる、と思っていたのだが。改めてご冥福をお祈り致します。

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