ツイッターで、学生団体による安保関連法案反対デモを「利己的個人主義」などと指摘した自民党の武藤貴也衆院議員(36)は4日、発言内容を撤回しない考えを明言した。一方、3年前のブログでは、日本国憲法の3原則を「日本の精神を破壊する」などと「トンデモ発言」をしていたことが、参院特別委員会の質疑で判明した。国会では、礒崎陽輔首相補佐官の「法的安定性」軽視発言が問題になったばかり。自民党議員の言葉の「軽さ」は、相当深刻だ。

 武藤氏は4日、自民党本部で、学生団体のデモに対する自身のツイッターでの発信について「撤回するつもりはない」と明言。「法案が通っても戦争に行くことはないのに、扇動や間違った情報で若い人がだまされている」と主張した。

 武藤氏は日ごろからツイッターやブログで持論を発信。この日の参院特別委員会では、別の日のブログの「問題発言」を、民主党の小川勝也議員が指摘した。武藤氏は3年前の7月23日、「憲法に破壊された日本人的価値観」と題した文章の中で、日本国憲法が定めた3原則(国民主権、基本的人権の尊重、平和主義)について「この3つとも、日本精神を破壊するものだ」と、記していた。

 「国会議員にも思想信条、発言の自由はあるが、少し逸脱している」。そう指摘された安倍晋三首相は「3原則はしっかり堅持すると党でも決めている」と強調したが、日本国憲法を激しく批判した内容だけに、問題は収まりそうにない。

 武藤氏は滋賀4区選出で、12年衆院選で初当選した2回生。6月下旬、沖縄やメディアへの「圧力発言」が大問題になった、自民党若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」のメンバーだ。安保関連法案が強行採決された衆院特別委員会の自民党委員も務める。

 谷垣禎一幹事長は3日に続き、4日の会見でも苦言を呈した。党支持団体の日本遺族会を例に「党の中核を支えた人たちに『戦争は2度としたくない』という思いがあることを、保守主義者は忘れてはいけない」と指摘。「私たちの先輩が何を考えてきたか。良き遺産は後世に引き継がなければならない」とも述べた。

 「法的安定性」を軽視する発言をした礒崎氏(参院議員)も武藤氏も、当選2回。老舗政党の中で、経験の浅い議員から問題発言が続く現状を、永田町のベテラン秘書は「自民党では、こういう時に注意できる重鎮議員が減った。政治家が言っていいこと、悪いことのイロハも分からない議員はまだ出てくるのでは」と、危機感を示した。