異教の地「日本」 ~二つの愛する”J”のために!

言論宗教の自由が保障され、ひとりひとりの人権が尊ばれ、共に生きることを喜ぶ、愛すべき日本の地であることを願う。

【元祖】あかりちゃん@覚醒の刻(とき)…4月8日~ 8連投

2016-04-10 23:38:25 | シェアー

https://twitter.com/oshieteakari

あかりちゃん@覚醒の刻(とき)

◆あかりちゃん@覚醒の刻(とき) ‏@oshieteakari 4月8日

まあ、普通に思うのはね。自民の皆さんは米国の覚えもめでたくしたい、でも愛国者ぽくも振る舞いたい、かつ景気も良くしたい、でも支配者特権も手放したくない…てゆう、全ての矛盾を臆面もなく全部叶えようとしてきたんだよね。その無茶な遠慮のなさにおいて戦後最高の画期的な内閣でした。

 

あかりちゃん@覚醒の刻(とき) ‏@oshieteakari 4月8日

今までの普通の政治家はまあやっぱりそれほど馬鹿ではないのて、矛盾が生じることには及び腰になっていた。すると当然身動きが取れなくて、それが国民から見たときに「じれったさ」にみえたんでしょう。一方アベさんは「とにかく全球大振りだ!」みたいな一種のわかりやすさがあったのかも😆

 

あかりちゃん@覚醒の刻(とき) ‏@oshieteakari 4月8日

ただどこまでいっても矛盾は矛盾なわけで、「AもBも実現したぜ!」と嘯いたところで確実に片手落ちになる。当たり前の話。アベさんはそれを「ウソで固めれば国民は騙せる、乗り切れる」と考えている。そして実際乗り切れたこともあった。でもさすがに同じ手法を使いすぎたよね😎

 

あかりちゃん@覚醒の刻(とき) ‏@oshieteakari 4月8日

結果どうなったか❓全ての真偽の判断基準が崩れ、言葉の意味は失われ、発言の重さは限りなくゼロに近くなり、政治的に何かを積み重ねることはもうほぼできなくなってしまった。あとはもう、一部の富裕層と宗教右派と一蓮托生で同じ夢を見続けるしかない。朝が来て太陽が昇れば消えてしまう、黒い夢。

 

あかりちゃん@覚醒の刻(とき) ‏@oshieteakari 4月8日

だからもう、どうみても崩壊のカウントダウンは始まってて。アベ内閣が積み上げてきたものといえば、ほぼ下の方の段を全部抜いて上に積んだだけのジェンガみたいなもので。ありえない背伸びをするために全ての土台を食い潰しちゃった。もうスカスカ😭

 

あかりちゃん@覚醒の刻(とき) ‏@oshieteakari 4月8日

あとはもう、どれだけの市民がその「信じられないくらいの矛盾ぶり」の「信じられなさ」を乗り越えて「信じられないほどヒドいけど残念ながら現実です」てことに気づくか、てだけなんだよね。人は大きな嘘とか、存外な酷さとかには騙されやすい。正常性バイアスだっけ❓あれね🤔

 

あかりちゃん@覚醒の刻(とき) ‏@oshieteakari 4月8日

ので、ぶっちゃけもうほっといても数年で勝手に崩れるだろうという気もしてる。だけどまだ今は力があって、駆け込みで改憲とかやれちゃうかもだし、そしたら自衛隊の皆さんが実害被ったり他国との間に消えない禍根が残ったりするから、矛盾を矛盾として知る私達は、淡々とその可能性を潰したいよね。

 

あかりちゃん@覚醒の刻(とき) ‏@oshieteakari 4月8日

この話特にオチはないんだけど😝 、あとひとつだけ。政府が格差拡大を進めてて、一方資本家はパナマで租税回避し続けトリクルダウンが夢ならば、もしかしてリスク回避のために社畜続けるより一時の社会運動に賭けて権利勝ち取った方が、長い目で見て生涯年収上がるかもよ❓ていう😂特に私達庶民はね

 

 

 

 

 


【講演全文】木村草太氏「憲法は、国家権力の失敗を繰り返さないためにある」(沖縄タイムス)

2016-04-10 18:56:56 | 憲法

沖縄タイムスhttps://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=162783より転載

木村草太氏「憲法は、国家権力の失敗を繰り返さないためにある」【講演全文】

2016年4月10日 06:58
憲法と国家権力などについて講演する木村草太氏=3月31日午後、那覇市久茂地・タイムスホール
 

 憲法学者で、沖縄タイムス紙に「憲法の新手」を連載中の木村草太氏(首都大学東京教授)の講演会「沖縄で憲法を考える」(主催・沖縄タイムス社、連合沖縄)が3月31日、那覇市久茂地のタイムスホールで開かれた。木村氏は、憲法は国家権力の暴走を止める役割を持った重要な法律だと存在意義を説明。名護市辺野古の新基地建設については「米軍基地の移設場所は一内閣だけで決めていい話ではない」と指摘した。以下は講演全文。

» 【木村草太の憲法の新手(1)】なぜ、住民投票もなしに、新基地建設が進むのか?

 

憲法は何のために

 まず、憲法とは何かという所から話をしていく。

 さて、憲法とは何ですかというのは、私が良く聞かれる質問だ。

 憲法についてはいろんな説明の仕方ある。たとえば国家権力を縛るものだという説明だとか、フランス人権宣言がどうのこうのという説明だとか、いろいろ聞いたことあると思うが、私としてはポイントはここだと思う。憲法というのは国家権力の失敗を繰り返さない、そういう目的がある。国家権力の失敗を繰り返さないための仕組みが憲法なんだというのが一番分かりやすいと思っている。

 昔から国家権力の失敗は非常に致命的なものであり、緊張感もって受け止められてきたが、国家権力のコントロールという課題は近代社会に入ってから非常に大きな、重要な課題になっている。

 なぜそんな重大な問題になるのか。近代というのは、かいつまんで説明すると、その国の領域内で暴力・実力を独占する、そういう国家が成立した。

 では近代以前の国家秩序はどうだったか。中小規模の武将集団が併存している。日本の戦国時代では、天下統一するだけの武将は徳川家康まで出てこなかった。公家は公家で勢力を持っているし、僧侶たちも武装している。ですから武家集団や公家、僧侶がそれぞれ武装集団を抱えて併存していた状況であった。

 ヨーロッパに目を移してもそう言う状況であったわけで、領主などがそれぞれ武装集団もっていたり、傭兵を雇い入れて闘いを続けてきた。それが中小規模の武将集団が併存するという前近代的な国家秩序だった。

 前近代的国家秩序というのは暴力を独占している人がどこにもいない秩序なので、どういうことが起きるか。けんかが起きると殺し合いになる。そういう世界ということになる。

 実際、中世ヨーロッパでは、争いがあったら自力で相手を殺してしまおうというのはれっきとした法制度。今でも法制史の勉強なんかをすると、たとえば、今の時代、たとえば借金を返さなかったから殺しに行くことはあまりないと思うが、昔は借金返さないとか、自分のものを取ったとか、勝手に取られたとなると、誰もそれをコントロールする裁判所とかがないので、自分たちで傭兵を雇うなどして相手に襲いかかっていった。

 そういうような時代を経て、中小規模の武装集団が併存していると闘いはじまると歯止めがきかない、それを何とかしないといけないということを考えて、新しい近代国家秩序が生まれていく。

 特に近代国家秩序の思想が生まれてきたのは、最初はホッブズとかロックとか、イギリスの内戦時代の話だが、イギリスでは非常に長く宗教がらみの内戦が続く時代だった。そういう時代を見て、政治学者たちはいろいろ考え、内戦がずっと続く状況を何とかできないかと考えた。そこで、登場したのがトマス・ホッブズという哲学者だ。

 ホッブズは非常に有名な「万人の万人に対する闘争」という話をしている。放っておくと人間というのは万人の万人に対する闘争がずっと続く状況になってしまうので、殺し合い止めるためには誰かが暴力を独占し、暴力を集中管理しなければならないんだという構想を提示する。これが近代国家の秩序ということになる。

 分かりやすくいうと、学級崩壊しているクラスがあって、担任の先生が争いを止められない。担任を変えて竹刀を持ったこわもての先生を送ったら学級崩壊が収まったというのが近代国家の成立。

 今の例えでピンときたと思うが、竹刀を持った先生が、暴力をふるった生徒を片っ端からたたいていく。争いは収まると思うが、問題はそこから先で、その先生の体罰をどうやってコントロールするかが課題になる。近代国家でもまったく同じで、要するに領域内の暴力を独占するような主権国家が成立すると、今度は主権国家というのは権力の乱用を始めるという時代が到来する。

 その主権の乱用どう防止するかということで、今度は主権を確立しよう、暴力を独占して管理しようという構想に加えて、主権乱用をコントロールする。こういう議論が出てくる。

 今の話が基本的な憲法学、あるいは近代以降の憲法学とか政治学が前提としている権力とか国家。つまり国家秩序というのは階段があって、まず非常に内戦が続いていて、その地域で全然秩序が安定しない。そういう状況がある。

 1段階目を上ると内戦が収まった、内戦を収めるだけの実力集団をつくれるという状況になるが、ただ国家が作れただけでは、今度は主権国家が権力を乱用して人民を弾圧するということが起きてしまう。

 そこで、それをさらに権力の乱用を防ぐような階段をもう一つ上がってもらわないとまっとうな国家になりませんよという2段階の考えになる。

 世界を見渡してみると、たとえば現在、イラクやシリアででは絶え間ない内線が続いている。こういう状況は1段階目の階段が上れていない状況。近代国家論からすると、それはまさに、もっとも悲惨な状況であるということになる。

 次に1段階目の階段を上ったとしても今度は国家が主権乱用するという段階が待っている。たとえば北朝鮮だとか、軍政時代のミャンマーなんかは、内戦がない。北朝鮮もミャンマーも内戦がずっと続く状況ではないのでイラクやシリアとは違うが、あれが理想的な状況かというとそうではない。そこでもう1段上らないと行けない。そこが立憲主義という段階になります。

 

立憲主義と国家

 立憲主義というのは、国家権力の失敗を繰り返さない。そういう憲法を確立しようという考え方だ。

 さて、国家権力の失敗とは何か。それは、立憲主義というか憲法学会では通常三つにまとめることができる。国家権力の三大失敗というのは無謀な戦争、人権侵害、独裁、いずれも三大失敗として記憶される。

 無謀な戦争で国力が衰退した国はたくさんある。古代ギリシャとか中国、ローマ帝国、いずれも無謀な戦争によって国力を疲弊し、場合によっては国家崩壊まで起きた。

 それから人権侵害は、国家権力がしでかしがちな失敗。人権侵害の例で言うと、大事な例としては拷問による人権侵害を忘れてはいけない。ヨーロッパでは昔、魔女裁判をやっていた。

 どういう裁判か。悪魔と契約して魔法を使って人にいたずらしたことに対して、それを罰する刑事裁判。魔女の疑いをかけられた人は、捕まり、裁判に掛けられ、有罪になれば火あぶりが相場。そういうことが繰り返されてきたのが魔女裁判。

 今の感覚からすると、おそらく魔女裁判の有罪とされた人の多くが無実の罪だったことは確実だが、欧州では大量の人間が有罪の判決を受けた。

 パニックになった国家権力はこういうことをしがちである。魔女裁判は一例に過ぎないが、人権侵害というのを国家権力は何度も繰り返してきた。たとえば拷問をされない権利の侵害を何度も繰り返してきた。これを二度と繰り返さないようにしなければならないというようなことが立憲主義の考え方に出てくる。

 最後に独裁。だいたい国家権力はほとんど独裁を始める。どこの国家権力も一緒だが、始まるとまず独立した裁判をやらせなくする。次に、権力者に従わない新聞社やテレビ局なんかがいじめを受けた時に裁判所が救えないようにする。そんなことから始まって、司法の独立を侵したり、国会で議論するのは面倒くさいので、国会の権限を全部政府に移してしまうというようなことをやったりする。

 こうした三大失敗を何とか繰り返さないようにしようと、まず憲法という法律を作り、憲法の中に軍事力のコントロール、基本的人権の保障として権力分立という、三大失敗を繰り返しませんというルールを書き込んでこれを守らせようとする。これが立憲主義という発想だ。したがって立憲主義の構想に基づいて作られた憲法は、国家権力が非常にやりがちな失敗なので、放置しておくと国家権力はこういう失敗をまた繰り返していく。

 なので、憲法に違反するような国家権力の動きがある場合は早めに止めておかないと、大変なことになる。以上が立憲主義の考え方であり、憲法の存在意義。

 憲法というのは、こういう役割持った法典であり、だからこそ国の最高法規なのだ。憲法の構造を見ると、98条では国の最高法規だと。この条文に違反するような法律や命令は全て無効だと宣言している。

 この条文は非常に重要で、これに基づいて違憲な法律や命令を無効にしていくが、ただこの条文だけだと、「自称最高法規」なだけ。何でこれが最高法規なのかということを説明したのが前の条文の97条。

 97条ではこの憲法が保障する基本的人権というのは、過去幾多の試練に耐え、現在及び将来の国民に対し侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 まさにこの憲法は、人権保障という極めて重要な役割を担った法典で、だからこそ最高法規でなくてはいけないんだということが構造として書かれている。

 

■差別されぬ権利

 不平等というのは、何に原因があるかはともかくとして、本当は同じであってほしいところで、何かが違っている。一方、差別されないというのはべっ視感情、あるいは嫌悪感といったものが背景にある。

 差別の定義といえば、人間の類型に向けられたべっ視感情、あるいは嫌悪感と定義される。もちろん皆さんも人間だから、個人的な好き嫌いはある。個人的に私があの人を好き、嫌いというのは差別でない。

 人間の類型、どのような個性をもっていようとこの人種だと嫌だとか、こういう性別は嫌だというような、人間を個人としてではなく、類型として評価し、そこにべっ視感情を向ける、人間の類型に向けられたべっ視、あるいは嫌悪感が差別ということになる。

 米国では、憲法に平等条項が盛り込まれたにもかかわらず、長らく人種分離の法律が続く。考えにくいことだが、特定の人種の人たちはこの学校に行け、電車の後ろに座れ、など人種の分離をしている法律があった。

 実際ある時期までの米国は、例えばビーチ、白人用と黒人用で分かれている。プールも、学校も。そういうわけで、人種分離は不平等じゃないかと訴訟で争うのだが、平等権で闘った時、20世紀半ばまでかんばしい成果をあげられなかった。

 人種分離する側の反論は、なぜこう分けるのかというと、有色人種と白人の間には対立があるので、同じ場所にいると争いが始まるかもしれない。だから治安維持と社会秩序のために分離が必要という。

 そこを平等権でやれば、裁判所はそこに区別をすることに合理的な理由があるかということしか考えないので、秩序を維持するという目的を達成するために人種分離は役に立ちそうなので合理的といえるでしょうと、合理性の判断だけになってしまい、こういう判決がずっと続いていく。

 人種分離は社会秩序のためという目的があったとしても、やっぱりこれは差別的じゃないですか、社会の差別を助長するんじゃないですかというのが問題になると思う。20世紀の半ばから、法律家たちは人種分離について合理的な分離で、役に立っていても、特定の人種に向けられたべっ視感情という差別に基づき、差別を助長するものなんだから、合理的なだけじゃなく、それとは別に差別されない権利の侵害があるという形で問題を形式化しないといけないということで展開をはじめた。

 20世紀半ばから法律家は差別されない権利、平等権とはまたちょっと違う、特定の人種を分離するような、迫害するような法律は差別されない権利の観点から、また別に検討されないといけないという観点から始まり、この観点から議論が始まった結果、人種差別、差別を背景にした社会制度がどんどん憲法違反にされてきた経緯がある。

 私は差別されない権利が重要であると考えた。差別されない権利が日本国憲法で保障されているので、平等権と、自由権と区別された重要な権利として確立する必要があるのではないかということを、最初の論文で書いた。そのタイトルは「平等なき平等条項論」。平等権とは違う、憲法14条の使い方が実はある、ということを書いている。

 外国の憲法ではディスクリミネーションという単語が必ずしも入っていない。日本国憲法は両方ちゃんと分けて書いてある。先進的な平等条項、差別されない条項の規定で、これを利用しない手はないと、そういう解釈を展開してみた。割と包容力があるものだと思っている。

 どういうところでこれまで使ってきたかということだが、憲法上訴訟の問題となってきたもので、自由や平等ではなく、差別されない権利という観点でアプローチするのが有効なのではないかと思っている。差別されない権利は大変重要なアプローチだ。

 9・11テロのあと、日本国内にいるムスリムの行動、テロリストで疑われる方だけでなく、ただ国内にいるイスラム教徒を全員捜査して、データベースつくるということをした。

 この捜査もテロリストに関係する人だけではなく、網羅的にムスリム全般を捜査の対象にする、このこと自体が違法なのではないか。差別されない権利、宗教に対する差別ということになるのではないか。

 あるいは同性婚。婚姻をする権利があるという闘い方ではなく、同性愛に対する差別という闘い、議論をするのが有意義ではないかという主張をしているわけだ。 

 

集団的自衛権問題

 集団的自衛権の問題を扱ってみたい。おととい安保法が施行されて集団的自衛権の行使ができるようになった、とされているが、集団的自衛権の行使が憲法違反、おそらく違憲だろうという感覚自体はみなさんお持ちだと思う。

 実は集団的自衛権の問題は憲法9条論ではなく、それと別に権力分立の問題、統治機構の問題からのアプローチもできるという話をしたい。

 日本国憲法は権力の独裁を防ぐため、権力を分立するというのが基本的な考え方。権力分立とは、国会、内閣、裁判所、地方自治体それぞれが自分たちの与えられた権力以上のものを行使してはいけないという考え方になる。

 例えば、国会に立法権はあるが行政権を行使してはいけない。あるいは司法が立法権を行使してもいけない。権力は分立し、権力の独裁を防ぐのが統治機構の考え方だ。

 集団的自衛権行使は9条違反の問題があるが、政府が集団的自衛権を行使するのは、日本国憲法が与えた権限外の行為だということになるという説明ができ、この点が非常に重要な論点になる。

 日本国は国民主権の原理をとっている。国会や政府、裁判所の国家機関は国民から負託された権限だけを行使できる。これが基本になる。そうすると、政府が集団的自衛権を行使するといった時に、その行使は果たして政府に与えられた権限なのかというのが問題になるわけだ。政府に与えられた権限というのは、憲法第73条に書いてある。これを読むと、要は行政と外交が内閣の権限だと書いてある。

 内閣は、まず一般行政事務、行政の事務を行い、外交関係を処理する。外交関係で特別重要な法律を締結するときは国会の承認を受ける、というようなことが書いてある。ちょっと説明すると、行政というのは何かというと、国内を統治支配する宰務のうち、立法や司法を除いたものと定義するのが、これが行政という概念。個別的自衛権、日本の防衛のための実力行使はこの行政に含まれる。だから内閣の権限として、内閣が責任を持ち、また内閣がコントロールするものとして、内閣の権限になる。これが従来の政府の説明だった。

 実際、日本を防衛するのは防衛行政というが、自衛隊は行政機関だし、防衛大臣は防衛行政をつかさどる行政機関と位置づけられてきた。行政といってしまえば全部それにおさまるわけではなく、行政権は外交を含んでいるが、国内を支配するものなので、外との交わりのある作用については行政の概念に含まれないということに基本的にはなる。

 しかし、外交については、日本の主権は外国に及ばない。従って、外交というのは行政とはちょっと違う関係になる。普通に、法的な概念としても、一般的な概念としても、外交といえば相手の主権を尊重して対等な立場で行うもの。これが外交ということになる。

 これに対して外との関係性、相手国の主権を無視する関係というのがあり、それが軍事活動。空爆したり、地上軍を派遣したりするが、外交関係は相手も納得いかなければできない。例えば首脳会談はお互い合意の上でないとできない。 一方で軍隊派遣したりする、相手国の同意がないのが前提で行われる。外交とは別に相手国の主権を尊重し、対等の立場で行う外交とは別の、軍事という活動があるということになる。

 日本国憲法は、軍事活動を行うことを想定していない。防衛行政を超えた軍事活動、外交関係の処理を、外交関係の行使を超えた軍事活動というのを想定していないので、実は日本国憲法の中には内閣に軍事権を与えた規定は存在しない。 ただ日本国憲法73条だけみればよく分からない。ここにない、他の国にはあるんだけれどもない、というのは他の国の憲法や条文をみたことがないとなかなか分からないので気付かれにくいが、ここには軍事という権限が欠けているのが日本国憲法の大きな特徴といっていい内容だ。例えば米国憲法は、軍事活動の場合、議会の承認が必要。承認がとれないと一定以上の活動できない。ドイツもそう。どこの国をみても、軍隊を動かす、軍事活動には緊密な規定を置いて、軍事権の責任者は誰で、どういう手続きをとりなさいというのが書いてある。

 問題はどこか。集団的自衛権の行使は、日本防衛以外の目的で武力行使するという権限の行使、活動だが、果たして集団的自衛権の行使は内閣が持っている権限の中にあるか。この中に軍事というのがあれば、確かに軍事活動として入っていると言えるが、それが入っていないので、軍事ですと説明ができないわけだ。では、どうやって説明するのか。私はこういう質問をよくする。集団的自衛権の行使が合憲なのは分かった、では73条のどの権限なのか聞くわけです。

 集団自衛権の行使が合憲だという人たちも昨年、何人かいらっしゃった。発見された人たちはものすごく少ない。ちょっと解説しておきますと、マスメディアがいろいろな調査をし、だいたい憲法解釈の専門家の95%が違憲という。残り5%はどういう人なのか。彼らが言っているのは、結局、集団的自衛権を行使してはいけないと書いてある条文がないので、したがってやっていいですと。書いてないからやっていいと。これでいいわけがない。

 書いていないからやっていいという論理だと、何がおきるか。内閣が責任者とも書いていない。どういう手続きを踏んで集団的自衛権を行使するのか全く分からないということになる。責任者も書いていないし、議会の承認が必要という手続きも書いていないとなれば、現場が暴走して、自衛隊の判断で集団的自衛権を行使しても違憲ではないということになる。これが書いていないからやっていいという解釈のインパクトだ。

 統治機構論は集団的自衛権の良い例。内閣の権限はどこからどこまでで、そこからはみだすと権力の集中独裁になるからやめてという権力の線引きをしている。そこがまた憲法学、憲法解釈の重要な役割ということになる。

 

■普天間移設・辺野古基地建設問題

 問題なのは米軍基地の移設場所は、内閣だけで決めていいのかということだ。米軍基地の移設場所は一内閣の決定だけできめていい話ではないのではないか。国会は唯一の立法機関(41条)。立法は国会以外やってはいけない。立法というのは、国政の重要事項(立法)については国会が決定する。

 法律で決めなければいけない事項を「法律事項」と言うが、法律で決めなければいけないような重要な事項を決めることが立法であり、そのような重要なことは、内閣や裁判所だけではなく、国会が担う。米軍基地の設置場所は国政の重要事項であり、国会が決めなくてはいけないというのが私の意見。

 憲法92条を見ると米軍基地の設置が何をもたらすかというと、日米地位協定が適用されるので、基地の設置場所については自治権が制限される。沖国大にヘリが墜落したとき、地元の消防の権限が制限を受けた。相模原市の米軍基地での火災でも地元の消防権限が制限された。

 自治体の自治権の範囲は、どう考えても92条にあたる。これは、一内閣が決定していい話ではない、どの自治体の権限をどのように制限するかということは、法律で決めなくてはいけない。憲法95条には、特定の地方公共団体へ適用される法律は、住民投票が必要とある。この通りの手続きがとられれば、今わたしたちが見ているのとは違う風景になるのではないか。

 直後に国会で議論してくれた先生がいた。松田公太議員が昨年4月8日の参議院予算委員会で、全国民の代表である国会でこれについて審議して、例えば辺野古設置法のような法律を制定して、法律事項として進めるべきではないかと。安倍総理は今ある法律に上乗せしてつくっていく必要は無いのではないかと答えている。

 一方で安倍首相は、基地の設置場所は国の最重要事項と言っていて、総合するととても重要なことなので、国会に関与させないという議論にも聞こえる。

 代執行訴訟で沖縄県は、辺野古の新基地建設には具体的な根拠法が存在しないため、仮に埋め立てを行っても米軍基地として運用できないから、およそ合理性を欠くと主張している。

 国側は基地建設の理由を明示しないといけないが、国側は安全保障に関わる事務は地方公共団体の権限ではないと主張している。でもこれは反論になっていない。県の主張は、自治権が制限されるので、根拠法は何ですかと指摘している。

 辺野古の問題は、さまざまな問題を含んでおり、統治機構を考えるきっかけになる。沖縄だけに基地負担を押し付けることは、憲法的に差別されているという議論に行き着くのではないか。統治機構の問題は、沖縄から考えなければならない。日本全体の人権・統治機構の議論を深化させることにもなるだろう。(了) 

 

 

 

 


日本の大企業・富裕層はタックスヘイブンで世界第2位の巨額な税逃れ、庶民には…

2016-04-10 18:14:42 | 経済 金融

editor  月刊誌『KOKKO』編集者・井上伸のブログ
http://editor.fem.jp/blog/?p=675より転載

日本の大企業・富裕層はタックスヘイブンで世界第2位の巨額な税逃れ、庶民には消費税増税と社会保障削減

2015/9/7

安倍政権は、新成長戦略と骨太方針で法人税減税を打ち出していますが、タックスヘイブンを活用することによって世界第2位となる莫大な税逃れをしている日本の大企業からまともな税金をきちんと払ってもらうことの方を何よりも優先すべきだと思います。東証に上場している上位50社のうち45社がタックスヘイブンを活用し、ケイマン諸島だけの活用に限っても、日本の大企業は55兆円で、アメリカに次いで世界第2位の規模です。つづく、イギリス23兆円、フランス20兆円、ドイツ17兆円で、後に続く各国を合わせた額に相当するぐらい日本の大企業はタックスヘイブンを活用し税逃れをしているのです。私たち庶民は、消費税増税はじめ各種税金から逃れようもないのに、どうして大企業だけが平然と税逃れを行うことができるのでしょうか? 私、このタックスヘイブンの問題について、政治経済研究所理事の合田寛さんにインタビューしました。3時間に及ぶインタビューでしたので前半部分をまず紹介します。

大企業・富裕層はタックスヘイブンで税逃れ
庶民には消費税増税・公共サービス削減
合田 寛 政治経済研究所理事インタビュー

世界各地で莫大な利益を上げている多国籍企業と富裕層が巨額の「税逃れ」をしています。スターバックスやアップル社など名だたる大企業の「税逃れ」が明らかになり、「私はスタバよりたくさん納税した!」とイギリスでは市民が怒りを爆発させています。そして典型的なタックスヘイブンとして知られるケイマン諸島に日本はイギリスよりも巨額の、アメリカに次ぐ世界で2番目の規模の投資を行っています。もっとも担税力のある多国籍企業と富裕層には「税逃れ」を許しておいて、その結果でもある税収不足と財政難などを理由に、庶民には消費税増税と社会保障削減を押しつけたり、国家公務員労働者には違法な大幅賃下げを押しつけるなど、著しく公平性を欠く事態が進行しています。この「税逃れ」の舞台となっているタックスヘイブンの問題について研究している合田寛政治経済研究所理事にお話をうかがいました。

各国のマスコミも注目するタックスヘイブン問題

――タックスヘイブンの問題が、日本のマスコミでも取り上げられるようになってきましたが、この背景には何があるのでしょうか。

いま世界的にタックスヘイブンの問題に注目が集まっています。たとえば、アップル社やグーグル社、アマゾン社、マイクロソフト社など、そうそうたる一流の多国籍企業がタックスヘイブンを利用して「税逃れ」を行っていることが、各国のマスコミでも大きく取り上げられています。

日本でも、タックスヘイブンの問題が最近になってようやく新聞やテレビでも報道され始めましたが、イギリスやアメリカでは早くから市民運動がタックスヘイブンの問題を告発していて、最近ではそれをイギリスの「ガーディアン」や「フィナンシャルタイムス」、アメリカの「ニューヨークタイムス」などの新聞が取り上げるようになっていました。

無税だったスターバックス

特に問題になったのがイギリスのスターバックスです。スターバックスは、本社はアメリカのシアトルにありますが、世界30カ国に事業展開している大手のコーヒー専門店で、イギリスにも700店舗以上あります。このスターバックスが昨年末、イギリスの上院決算委員会に呼ばれ、アマゾンなど3社の代表と共に聴聞を受け、そこでいろいろな問題点が明らかになりました。

たとえば、過去15年間のうち14年間、スターバックスは損失を出していたというのです。どうやって損失を出していたかというと、たとえばコーヒー豆をスイスの子会社から帳簿上、高値で買い取った形をとって、イギリスにおける利益を減らしたという事実が判明しています。また、オランダにある欧州本社にブランドなどの知的財産権を移し、そこに巨額のロイヤリティを支払うことによってイギリスでの利益を減らすなど、いろいろな形で、イギリスでは納税義務を免れるようにしていたことが明らかになりました。

「私はスタバよりたくさん納税した!」とイギリス市民の怒りが爆発

こうした事実を知った市民は、スターバックスの店舗の前に座り込んで「私はスタバよりたくさん納税した!」と、無税だったスターバックスへの怒りを爆発させました。結局、スターバックスは今後2年間2,000万ポンド支払うことをしぶしぶ認めて事態を収拾しましたが、根本的な「税逃れ」の構造はまったくあらたまっていません。

アップル社は「税逃れ」で2%以下の税率だった

また、今年になってアップル社がアメリカ議会で問題になっています。アップル社はタックスヘイブンを利用した悪質な「税逃れ」のモデルとして上院小委員会が今年5月にヒアリングをしています。その中で、アメリカの法人税率は35%であるのに、アップル社は、実質2%以下の税率だったことなど、驚くべき事実が明らかになりました。

アップル社の本社はカリフォルニア州にありますが、アイルランドに3つの子会社を持っています。アメリカとアイルランドでは課税に対する考え方が異なっており、アメリカでは会社の設立地がどこにあるかによって課税しますが、アイルランドでは会社をコントロールする拠点がどこにあるかによって課税しています。この課税原則の違いを巧妙に利用してアイルランドからもアメリカからも課税されないという「税逃れ」を行っていました。また、利益の6割を占める海外での販売による利益はすべてアイルランド子会社に集中し、その利益はロイヤリティ支払いによってオランダを通り抜け、タックスヘイブンであるバミューダに流していました。この「税逃れ」の構造を「ダッチサンドウィッチ」というのですが、オランダは単に経由するだけという意味です。こうしてスターバックスやアップルなど有名な企業の「税逃れ」のあまりにもひどい実態が明らかになり、タックスヘイブンがクローズアップされるようになってきたわけです。

5年間納税ゼロの巨大企業

問題は、これが単にスターバックスやアップルだけに限らないということです。アメリカを例にとれば、タックスヘイブンを使っていない多国籍企業はほとんどないというほど、どっぷりその中に浸かっています。

アメリカの消費者団体(pirg)が2013年7月に発表した調査(「Offshore Shell Game」)によると、米巨大企業トップ100社のうち82社が、タックスヘイブンに2,686社の子会社を持っています。そして、トップ15社だけで859の子会社を持っていて、全体の3分の1を占めています。そのトップはバンク・オブ・アメリカで、タックスヘイブンに316社の子会社、2位のモルガンスタンレーは299社、3位の製薬会社のファイザーは174の子会社を持っています。これらすべては5年間納税ゼロという状況です。

トップ100社がタックスヘイブンに保有しているお金は、1.2兆ドルに達しています。これもトップ3をあげると、ジェネラルエレクトリックが約1,080億ドルでトップ。アップルは2位で826億ドル。ファイザーは金額の面でも730億ドルで3位に入っています。つまり、巨大企業は、巨額のお金をタックスヘイブンに隠しているのです。

その国の経済規模の10倍もの利益上げる多国籍企業 利益上げるタックスヘイブンで労働者は働いていない

また同じ調査によると、アメリカの多国籍企業が1999年にタックスヘイブンのバミューダであげた利益は、同国の経済規模の2.6倍に相当していました。それから9年後の2008年には、バミューダの経済規模の10倍へと急速に増えています。

2008年にアメリカの多国籍企業は海外利益の43%をバミューダなど5つのタックスヘイブンであげていることになっているのですが、これらの地域には海外労働者の4%しか働いていませんし、海外投資も7%しか占めていません。これがタックスヘイブンの最大の特徴です。帳簿上は事業利益の大半をタックスヘイブンで上げた形になっているのに、実際そこではわずか4%の労働者しか働いていないのです。

これとは逆に同じ多国籍企業が、オーストラリアやカナダ、イギリス、ドイツ、メキシコなど実際に事業を行っているところでは、帳簿上は海外利益の14%しか上げていないのに、それらの場所には40%の労働者が実際にそこで生産していて、34%も海外投資がされています。これらの事実は多国籍企業によるタックスヘイブン悪用の一端を示すものです。

日本はアメリカに次ぐ55兆円をケイマン諸島へ投資

――日本におけるタックスヘイブン問題の実態はどうなっているのでしょうか?

日本のデータはあまり新聞報道されませんが、最近、『しんぶん赤旗』(2013年8月25日付)が報道したところによると、日本の大企業も例外ではなく、東証に上場している時価総額の上位50社のうち45社――つまり上位50社のほとんどが子会社をタックスヘイブンに持っており、子会社数は354にのぼり、その資本金の総額は8.7兆円にもなるということです。これは具体的に有価証券報告書を調べた結果の数字で、そのベスト5を見ると、みずほフィイナンシャルグループのタックスヘイブン子会社が45社でトップ。続いてソニーが34社、三井住友フィナンシャルグループが27社、三井物産27社、三菱商事24社となっていて、銀行や商社が多くなっています。特に三井住友フィナンシャルグループはケイマン諸島だけで18の子会社を持っていて、その資本金は3兆円にものぼっています。国が出資しているNTTやJTも多額の資産をタックスヘイブンに投じているという事実が明らかになっています。

ケイマン諸島だけに限っても、日本の投資残高は55兆円に達していて、アメリカに次いで2位になっています。続いて、イギリス23兆円、フランス20兆円、ドイツ17兆円で、後に続く各国を合わせた額に相当するぐらい日本はタックスヘイブンを利用しているということがこの調査で明らかになっています。

タックスヘイブンとは何か?

――そうした実態があるわけですが、そもそもタックスヘイブンとはどういうものなのでしょうか?

「タックスヘイブン」という言葉を翻訳すると「租税回避地」となります。しかし、じつはタックスヘイブン=租税回避地の明確な定義は国際的にまだ確定したものはありません。

タックスヘイブンについて一番早い段階で判断基準を示したのがOECD(経済協力開発機構)です。1998年にOECDは、「有害な税の競争」という報告書を出し、タックスヘイブンの次の4つの指標を示しました。

(1)まったく税を課さないか、名目的な税しか課さない。――これがタックスヘイブンの最大の特徴です。
(2)情報公開を妨害する法制がある。――たとえばスイスや他のタックスヘイブンの国は秘密保護法を持っています。法律によって情報を制限しているわけです。
(3)透明性が欠如している。――要するに情報がないということですが、たとえば持ち主がはっきりしない会社や、匿名の預金や基金などがそれに当たります。
(4)企業などの実質的な活動が行われていることを要求しない。――つまり何もやっていないペーパーカンパニーであっても設立が認められるということです。

OECDは以上の4つの指標を出していたのですが、その後、徐々に基準が緩められ、現在は(2)と(3)だけに絞られています。つまり、情報公開と透明性だけをタックスヘイブンの基準にしたのです。

タックスヘイブンの3つの指標

私は、タックスヘイブンの指標として次の3つが大事だと考えています。

1つは無税、あるいは極めて低い税率であること。これはタックスヘイブンのもともとの基準ですね。

2つめは、法的な規制がまったくないか、極めて緩いということです。これは税だけでなく、金融規制や法人設立規制など、簡単に法人が設立できるような法制度になっている国も指します。また、オフショアといいますが、1つの国の中にありながらその国の法律とは別の緩い法律体系が適用されているところもあります。これはケイマン島のような小さな島だけでなく、法律上の地域なので、ニューヨークやロンドンなど先進国の中においてもどこにでもタックスヘイブンができることを示すものです。

秘密保護法などで情報が隠されている

そして3つめは、透明性の欠如です。たとえば法人や個人の真の所有者が隠されている、名義上の名前になっていて誰のものか分からない、誰の会社か分からない、というように秘密が守られてしまっているということから、守秘法域と呼ばれます。秘密保護法などによって情報が隠されていることがタックスヘイブンの大きな特徴です。

世界中に存在するタックスヘイブン

――実際にタックスヘイブンはどこにあるのでしょうか?

▼図表1は、私が作成したものです。たくさんあるのでグループごとに見てみましょう。

まずヨーロッパのタックスヘイブンは、1つはロンドンのシティが最も重要な役割を果たしていますが、その他スイスやルクセンブルグ、オーストリアなどOECD加盟国がかなり入っていることが特徴です。

またアメリカを中心とするタックスヘイブンは、ニューヨークのウォールストリートを中心にデラウエアやネバダなどタックスヘイブンの州がいくつかあります。それに加えてカリブ海の周辺ですね。ここはイギリス系統のタックスヘイブンが多いのですが、アメリカの裏庭なのでアメリカ系統のものも多くあります。またアメリカ系統のものは太平洋やマーシャル諸島、アジアにもあります。その他にも、バーレーンなど中東にもありますし、アフリカやモロッコ、モーリシャスなどにもいくつかあるということで、つまりタックスヘイブンは世界中にあるということですね。

3つのグループに大別

世界のタックスヘイブンは大きく3つのグループに分けられ、重層的なネットワークを構築しています。1つはイギリス系統のタックスヘイブンです。このグループは、シティを中心としたクモの巣構造になっています。クモの巣構造の中心部分に王室属領という、国の領土というより王室の属領があり、それがマン島とジャージーとガーンジーです。地理的にはマン島はアイルランドとイギリスの間くらいにあり、ジャージーとガーンジーはフランスとの間のチャンネル諸島にあります。この3つが王室属領です。それから大英帝国時代からの海外領土があります。それはケイマン諸島やバミューダ、英領ヴァージン諸島など14の海外領土からなっています。これに加えて、独立国ではあるけれどイギリスとの深いつながりがある国――たとえば香港、シンガポール、バハマ、ドバイ、アイルランドなどの国々がシティを中心としたタックスヘイブンのクモの巣構造の外周を形成しています。タックスヘイブンはこうした重層的な構造になっているのです。

2つめのグループはアメリカ系統のタックスヘイブンです。ニューヨークを中心としたタックスヘイブンで、これも大きく見ると3重構造になっています。まず真ん中にニューヨークがあり、次に、デラウエア、フロリダ、ワイオミング、ネバダなどの州のタックスヘイブンがあります。そして海外サテライトとして米領ヴァージンやマーシャル諸島、リベリア、パナマがあるという3重構造になっています。

3つめはヨーロッパのグループで、スイス、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア、ベルギーなどです。

タックスヘイブンの実態
――佐渡島の3分の1の小さなケイマン諸島に法人6万社が登記

――実際のタックスヘイブンはどのようになっているのでしょうか?

それではケイマン諸島の実態を見てみましょう。ケイマン諸島はキューバの南にあるイギリス領の小さな島で、1503年、コロンブスが4度目の航海のときに発見した島です。ケイマン諸島がなぜイギリス領かについては少し歴史をさかのぼらなければなりません。コロンブスはイタリアのジェノバ生まれですが、最初ポルトガルに遠征の資金援助を申し入れたところ、ポルトガルの国王は無理だろうということで断った。それでスペインの国王に申し出たところ、スペイン国王も最初は断ったのですが最終的には許可したため、そこで資金を得てコロンブスは世界航海を始めて、4度目の航海でケイマン諸島を発見しました。コロンブスが発見したので最初はスペイン領だったのですが、1655年にクロムウェル率いるイギリス海軍がそれを打ち破り、ケイマン諸島をスペインから奪って以降、イギリス領土になったわけです。3つの島からなる諸島ですが、すべて合わせても面積259平方キロメートルで佐渡島の3分の1くらいです。議会もあり民主政体を表面上は取っているのですが、イギリス女王によって任命される総督が最大の権力を持ち内閣を統括しています。公務員も、高位の公務員はその総督が任命し、最終審裁判所もロンドンにある。ですから法制定も含め、事実上ロンドンのコントロールの下にあるわけです。

税の面では、所得や利益、財産、キャピタルゲイン、売り上げ、遺産、相続、すべて非課税です。主な財源は、会社設立の場合などの免許料や、輸入に課される物品税です。小さな島であるケイマン諸島になんと法人6万社が登記されていて、銀行は600行以上、1万にものぼるファンドが登記されているのです。

5階建てのビルに1万8,000社が登記

ケイマン諸島の中心にあるジョージタウンという首都にウグランド・ハウスという名の5階建てのビルがあります。ここはよく新聞にも写真が掲載されますが、このビルになんと1万8,000社が登記されているのです。このビルの中で実際に事務が行われているということではなく、単にポストオフィスボックスになっていて、多くの企業は別の住所を持っているのです。そして郵便は別の住所に届くようになっている。つまりウグランド・ハウスにある1万8,000社は、ほとんどがペーパーカンパニーであるということです。

国家元首が英国女王で法律もロンドンで承認される国

ジャージー島というイギリスとフランスの間にある小さな島は、イギリス系のタックスヘイブンです。ジャージー島の国家元首はイギリス女王。王室属領ですから、イギリス女王に任命された副総督が女王の任務を代行し、軍隊の総司令官としての役割も担っています。そして代官および副代官がイギリス女王によって任命され、代官は政府を代表するので、代官が普通の国の総理大臣に当たります。そして、なんとこの代官が議会の議長と王立裁判所の裁判長を兼ねているのです。加えて、法律はすべてロンドンの枢密院で承認を受けなければならないことになっています。島内には70の銀行があり、GDPの6割は金融業によるものです。所得税の税率は一律20%ですが、ジャージー島以外での収益には税金はかかりません。

法に従わなくていいとされるシティ
住民よりも企業の方が投票数が多いという選挙制度

イギリス系のタックスヘイブンの中心部がシティです。シティ・オブ・ロンドン・コーポレーションというのが正式な名前でロンドン中心部にある1区域です。

先日、タックスヘイブンに反対する市民グループがシティウォークを計画しました。タックスヘイブンに反対するために、シティの重要なところを回ることによって、タックスヘイブンの中心であるシティがどういうものであるかを学ぼうという行動を起こしたのです。

シティは、テムズ川の北、ロンドン塔の西にある半円形の形をした約2キロ平方メートルの狭い地域にあります。市長はロード・メイヤーといい、いわゆるロンドンの市長とは別に、シティの市長として選ばれています。市長の公邸はマンションハウスといい、イングランド銀行の真向かいにあります。市庁舎はギルドホールと言うのですが、これは歴史を表しています。シティのもともとの歴史を調べてみると、1000年以上前に同業者(ギルド)が集まって同業者組合をつくり、自治都市として発展してきたという歴史があります。自治都市ですから国王の指示には従わないという自立性を持っていたわけです。国王も戦費調達源としてシティには頭が上がりませんでした。国債を発行した時には買ってもらわなければいけなかったのですね。今でも王室債権徴収官というのがいて、シティの代表として議会にも自由に出入りできる特別の権限を持っているのです。そしてシティは議会より前から存在しているので、法には従わないという伝統があるというのです。イギリスの議会はだいたい18世紀頃から存在していますが、それより前にあるシティは議会が作った法律には従わないという暗黙の伝統がある。だからシティは「国家の中の国家」であるとも言われています。大ロンドン(ロンドン市)には、このシティを含む特別区が全体で31ありますが、その中でもシティは特別な地位にあるのです。それは大ロンドンの中にシティのロード・メイヤーがいるということからも明らかですね。ちなみに、シティの統治機関である市民議会の投票権は、9,000人の居住者一人ひとりに加え、企業にも3万2,000票が割り当てられています。住民よりも企業の方が投票数が多いという選挙制度です。そうした特殊なところがタックスヘイブンの中心になっているということです。

タックスヘイブンに隠されている資産額は?

――タックスヘイブンにどれくらいの資産が隠されているのでしょうか?

昨年、タックス・ジャスティス・ネットワークというイギリスの代表的な市民運動団体が試算したものによると、タックスヘイブン全体で最低21兆ドル、最高32兆ドルの試算が隠されているということです。これをイギリスの新聞「ガーディアン」が報道し、タックスヘイブンに隠された資産としてこの数字が一般的によく使われています。

では、これだけの資産でどれだけの税収が失われているかというと、たとえば最低ラインの21兆ドルの場合、金利を少なめに見積もって3%だとし、それに課税される場合の30%税率を仮にかけた場合でも、1,890億ドルの税収が本来得られたはず、ということになります。日本円にすれば約19兆円ですね。これをマックスの32兆ドルで計算すると2,880億ドル、30兆円近くになります。これは日本の税収の半分以上です。それくらい失われているということです。しかし、これは個人資産だけの数字ですから、企業資産も含めれば実際にはもっと多くなります。

タックスヘイブンへの資産隠しに
大きな役割を果たしているメガバンク

同じくタックス・ジャスティス・ネットワークが発表した資料のひとつに、タックスヘイブンに資産を隠すに当たって、メガバンクがどれだけ中心的な役割を果たしているかを調べたものがあります。これによると、メガバンクのトップ50の合計で12兆ドルをタックスヘイブンに隠している。先ほどの21兆ドルの半分くらいはメガバンクが関わっているということです。たとえばその中でも最も残高の大きいUBSはスイスのプライベートバンクです。その他クレディスイス、イギリス大手のHSBC、ドイツ銀行などそうそうたるメガバンクがタックスヘイブンに資産を隠すことに関わっていることが分かっています。

なぜいまタックスヘイブンが注目されるのか

――いまタックスヘイブンが注目されているのはなぜでしょうか?

それは、各国とも財政が厳しくなっているからです。歳出がどんどん増え、削減しても増えていくのに対し、歳入が追いついていかない。▼図表2は先進主要国の歳出・歳入の対GDP比の推移です。たとえばOECDの平均の統計で一番新しい2013年の数字を見ると、GDPに対する歳出が41%を超えているのに対して歳入の方は37%、つまり歳入がかなり不足している状況です。これはどこの国でも同じです。日本は相当な赤字ですが、他の国も皆そういう状況になっていて、財政が悪くなっている。特にリーマンショック以降、どんどん財政支出が膨らみ、財政状況はどの国も深刻です。

しかも、税収の内訳を見ると、所得税の総税収に占める割合は70~80年代には30%台であったのが、その後20%台となり、しだいに減る傾向にあります。法人税は各国とも税率引き下げ競争によって税率は引き下げられる傾向にありますが、税収は一定比率を保っているということも特徴のひとつです。そこで問題なのは、不足した部分を補うために、ヨーロッパでいえば付加価値税、日本でいえば消費税に当たるものですが、これがずっと増え続け、税収の20%以上を占めるに至っているということです。それは今や法人税の税収の2倍以上という状況です。

間接税の増税も限界があり、各国でも反対が強まる状況のもとで、各国とも大企業や大金持の課税の抜け穴を封じよという国民の声に背を向けることはできなくなっているのでしょう。

▼このインタビューのつづきは以下です。

富裕層・大企業の税逃れの手口=タックスヘイブンで貧困層から富奪い深刻な財政赤字のツケは庶民へ、ドラッグ・人身売買・臓器販売・マネーロンダリングなど犯罪の温床となるタックスヘイブン