24日投開票の衆院道5区(札幌市厚別区、石狩管内)補欠選挙は、激戦との見方が広がっている。総力戦を繰り広げている与野党の両陣営は訴えの中身を変えるなど、1票でも掘り起こそうと手を尽くしている。

■和田陣営、町村夫人を前面に/池田陣営、年金や子育て強調

 20日、自民党公認で公明党などが推薦する新人和田義明氏(44)の千歳市での演説会。最後に故町村信孝前衆院議長の妻の淳子氏(71)が「和田も頑張っているが、あと一押しです。主人も一緒に戦っていると思う」と涙ながらに語った。

 当初は和田氏の知名度アップを優先し、弔い合戦の色を消していたが、不遇な生い立ちを語る対抗馬に負けじと、情に訴える作戦に出た。町村氏の次女である和田氏の妻があいさつする機会も増やしている。

 和田氏自身も中盤から「新札幌の駅前再開発は、のるかそるかのプロジェクトだ」などと、地域ごとに演説の内容を変えている。既に国会議員200人以上が選挙区に入り、地方議員や秘書らもフル回転。陣営幹部は「(選挙対策の)カードは全て切った」と話すが、情勢は予断を許さず、人海戦術を続けるしかない状況だ。

 選挙区内の寺を1日で6、7軒回った道議は「ここまでしたのは初めて」と話した。20日には中央区のホテルに、経済界や支持団体の幹部100人以上を集め、引き締めを図った。

 無所属で民進党、共産党などが推薦する新人池田真紀氏(43)は20日、石狩市での演説で「安倍政権は年金改革を先送りしてきた。だから皆さんの年金が下がっている」と声を上げた。福祉の専門家を強調してきたが、より身近な年金や子育てにテーマを絞った。

 告示直後は生活保護や父親からの暴力など自らの体験談に時間を割いたが「もう有権者に人間性は伝わった」(陣営幹部)。無党派層の取り込みが鍵とみて、厚別区などの住宅街を縫うように動き、約2分間の短い演説を繰り返している。

 だが手詰まり感も漂う。民進党や共産党が精力的に団体や企業を回り、接戦に持ち込んだ手応えはあるが、終盤の目玉となる仕掛けが見当たらないからだ。

 それでも19日には作家の澤地久枝氏、評論家の佐高信氏らが東京で池田氏の応援集会を開き、道外の市民団体も5区の有権者に300人体制で電話作戦を展開している。民進党幹部は「弱気になった方が負けだ」と繰り返して終盤の緩みを警戒。21日には岡田克也代表が推薦4党のトップとして初めて応援に入る。(報道センター 佐藤陽介、仁科裕章)