マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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田中町甲斐神社のお渡り

2013年01月06日 08時36分32秒 | 大和郡山市へ
朝から雨が降っていた田中町。

この日は甲斐神社の祭りの日。

5人の氏子総代は祭りの衣装である白の浄衣装(じょういそう)に着替えて自治委員長家を出発する。

足元は白の下駄履である。

お渡りは町内の集落内を通って神社を目指す。

通過する場には提灯を掲げている。

雨がかかっても大丈夫にとビニールシートを被せている。



先頭を行くのは大祓いのサカキ。

次がツユハライである。

三方に載せた水器を持ちながら水に浸けたサカキでお渡りの道を清める。

祓いの水を右に左に撒きながら「はらえたまえ きよめたまえ」と唱和しながら歩く。

両者とも氏子総代が勤める。

太くて四角い角材に幣をつけた御幣。

相当な重さの大祓いの幣は肩から紐で下げて抱えるように持つのは自治委員長と二人の氏子総代。

自治委員長も同じような浄衣装だが青ではなく全身が白地である。



両手で抱えなくてはならない雨天のお渡り。

婦人が横に並んで傘をさす。

幣自身も雨にかかってはならないようにビニールで覆っている。

後方につくのは氏子総代、宮司、お稚児さんに礼服姿の水利組合長、役員が続く。

祭りのお渡りを一目見ようと村人が迎える。

婦人たちの傘をさす援助を受けながらのお渡り。

田中町の優しさ溢れる情景である。

集落の道を通り抜けて辿りついた神社。



鳥居を潜って参籠所にあがる。

右の座には自治委員長と氏子総代。

左の座に宮司、巫女神楽を勤めるお稚児さんや役員たちが座る。

3本の御幣を本殿に立て置いて神事が始まった。

祓えの儀、御扉開き、祝詞奏上の次は奉幣振り。

大きな御幣を片手で持つのは難しい。

本来の作法であれば右手に持って左手に持ち帰る。

右から左へ空中を飛ぶような感じで奉幣振りをするのだが、幣の太さや重さは片手で行う作法に無理がある。

仕方なく両手で抱えるようにしなければと宮司は話す。



奉幣振りの作法は右から左へ。

左から右へ。

3歩下がる。

その作法は左下がりから右下がり。

左下がりで持ちかえる。

左下がり、右下がり、左下がりを3回繰り返す。



これほど大きな幣にしている理由がある。

祭りが終われば御幣の角材は新築、改築の際に用材として利用されるのである。

奉幣振りは1本だけでなく奉納された3本とも行われる。

それを終えて行われるのがお稚児さんの舞い。



里の巫女の神楽舞は浦安の舞い。

舞殿で披露される。

宮司婦人である巫女がお稚児太鼓を打って奏でる浦安の舞曲。

雅楽を奏でる楽人でなくテープの音だが舞いは美しい。

鈴を手にして舞う姿は里の小学生女児。

かつては4人で舞っていたが現在は2人。

前年も勤めたそうだ。

玉串奉奠、閉扉で神事を終えた氏子総代は和服に黒足袋に着替えて再登場する。

これからしばらくは祭りの直会。

供えた神饌を下げて座に配る。

スルメ、トロロ昆布、菓子、果物、ザクロなどを配膳して酒を注ぐ。

お神酒の冷酒や熱燗酒で接待する。

(H24.10.28 EOS40D撮影)