荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『ハプニング』 M・ナイト・シャマラン

2008-09-04 04:10:00 | 映画
 ニューヨークのセントラル・パークで始まり、メリーランド、プリンストン、フィラデルフィアと、アメリカ北東部各地で人間が一斉自殺する怪奇現象が蔓延する。7年前にテロリズムの標的になったこの地域のトラウマがいっこうに解けない現代社会を楯に取ったシナリオだろう。近作ではかなり不評の声も聞かれるようになっているのに、相変わらず同じような映画を作っていて、その頑固さには頭が下がる部分もある。
 米東部を舞台に人々が逃げまどう点で、これはM・ナイト・シャマランによる、彼の敬愛するスティーヴン・スピルバーグ『宇宙戦争』(2005)への果たし状であろうか。NYからフィラデルフィアへ避難する途中の田舎駅で下車してから、画面は美しい森林、ドライヴイン、一軒家、草原などの実寸コレクションを写し出していく。それらの事物はなんの変哲もないのだが、まるで未知の存在が刻印を残した《幻影のオブジェ》のように思われてくるし、恐怖を煽るはずのあの不穏な突風に、身を預けたくなる人々が確かに写っていた。


7月26日(土)より全国で上映中
http://movies.foxjapan.com/happening/