荻野洋一 映画等覚書ブログ

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最近の映画書籍から

2008-09-12 04:27:00 | 映画
 前回記事では、他人の本にかこつけて長々と極私的な回想を自堕落に膨らませてしまい、甚だばつが悪いのだけれども、その罪滅ぼしというわけでもないが、最近興味深く手に取った2書を几帳面に記しておきたい。

 左は「nobody」の最新号(通巻28号)である。黒沢清の新作『トウキョウソナタ』についての拙文が掲載されているが、まあそれは別としても、中原昌也の『TOKYO! 〈メルド〉』についての文章をはじめとして、数多くの必読の記事が掲載されている。近日発売。

 右は、先述した、有楽町朝日ホールで開催されている《フランス映画の秘宝》の公式カタログ。ヌーヴェルヴァーグ以前のフランス映画(特に、ドイツ軍占領期にあたる1940年代のフランス映画)が不毛の時代であった、という怠惰な通念に対するアンチテーゼをメインテーマとする本映画祭の性格が、このカタログによってより明瞭に浮かび上がるようになっている。セルジュ・トゥビアナ、蓮實重彦、野崎歓、石橋今日美らによる各論評が、ヌーヴェルヴァーグ及びその影響圏内にある現代作家たちに偏向しがちな私自身のフランス映画受容の怠惰を、したたかに撃ってくれた。
 この手の催し物は、えてして関東中心になってしまうが、本カタログの序文によれば、《フランス映画の秘宝》は、仙台、川崎、神戸、広島、山口、高知、福岡などを巡回するとのことだ。また、本カタログは、会場ロビーの他、オンライン販売もされている模様。詳細は同映画祭サイトで。