荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『ワールド・オブ・ライズ』 リドリー・スコット

2009-01-03 05:38:00 | 映画
 リドリー・スコットの新作だが、友人Hからのe-mailに「彼の作品中、『テルマ&ルイーズ』と並んで評価したい」とあったため、さっそく見ることに。とはいえ、私とHはずっと昔、映画をめぐる議論の中で「リドリー・スコットこそアメリカ映画をだめにした張本人の一人」と規定し、意見の一致を見たことがある。

 ところが今回は、イスラム原理主義テロ組織との抗争を描いたスパイ・アクションとしても決して悪くなく、90年代から00年代にかけて全盛を誇ったヴィジュアル偏重、美術デザイン偏重から脱し、主人公ディカプリオの行動をシナリオ上で練り込む姿勢へと変化している。もともと主人公の中で胎動していたアラブ世界への共感が、イラン&アラブ混血女性との恋によってやや盲目的に加速していく様は、まるでアラビアのロレンスが体現した無償のアラブ愛のようだ。リーンとスコット、同じイギリス人監督としての異文化受容の有り方が通じ合っているのだろうか。

 Hによれば、この混血女性を演じた女優は、なんとダリウシュ・メールジュイやバフマン・ゴバディ作品で主演していた女優なのだそうである。


丸の内ピカデリーなど、全国で上映中
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