荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『地球が静止する日』 スコット・デリクソン

2009-01-07 18:56:00 | 映画
 以前にも記したことであるが、『アイ・アム・レジェンド』『ハプニング』『WALL・E ウォーリー』『ブラインドネス』など、ここ1、2年のアメリカ映画は人類の破滅を、正体不明の理由による薄ら寒い現象として提示することに余念がない。おそらく、「近い将来、人類はこんな風に訳の分からない理由で破滅するのではないか?」という予感が、メジャーな娯楽作品にまで影を落とすほどリアルなものになっている証拠だろうから、この傾向は仕方がないように思う。

 『WALL・E ウォーリー』が見せる、絶望の彼岸に位置するかのような手放しのオプティミズムも困ったものだが、『地球が静止する日』の時代錯誤性には、どこか滑稽ささえ漂ってしまっている。ラオール・ウォルシュ、マイケル・カーティス作品なども手がけた保守派のシナリオライター、エドマンド・H・ノースが脚本を書き、ロバート・ワイズが監督したオリジナル版(1951)は未見であり、私自身はさして興味も引かれないが、キアヌ・リーヴス主演の縁ゆえか、例の〈人類は、地球にとっての癌細胞だ〉という『マトリックス』風のテーゼを再び蒸す返すこと自体は悪くはないとは思う。
 しかし、このリメイク版新作は全体が硬直化していて、米ソ冷戦下のSF映画にしか見えない。もはや地球外生物が攻撃的だったり、友好的だったりというような枠にはめること自体がカビ臭い手法となってしまったようだ。

P.S.
 私にとってキャシー・ベイツはいつまでたっても『ミザリー』なのだが、その彼女が国務長官にまで登りつめるとは感慨深いものがある。


日劇PLEXなど、全国で上映中
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