荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『黒薔薇昇天』『実録白川和子 裸の履歴書』

2009-01-16 01:55:00 | 映画
 夜、久しぶりに「麗郷」にてあつあつの台湾素麺をたぐってから、円山町のシネマヴェーラへ。20数年ぶり神代辰巳『黒薔薇昇天』(1975)と、初見となる曾根中生『実録白川和子 裸の履歴書』(1973)。後者は曾根が、引退する白川和子を送別するために撮った記念映画だが、正直あまり面白くなかった。『関東緋桜一家』(1972)は未見なのだが、そもそもどうもスター女優の引退記念映画ということ自体が、あまり近づきたい代物ではない。

 『黒薔薇昇天』も神代の中では良い部類には入らない作品だと思うが、それでも結局、『黒薔薇昇天』における、ブルーフィルムの監督(岸田森)がよそ様の妾(谷ナオミ)を嘘八百重ねてナンパする──いやナンパと言っては失礼、これはれっきとした自作への出演交渉なのだが、なに、ブルーフィルムをご存じない? ウィキペディアか何かでお調べ下さい──白昼のデパート屋上のゴンドラからタクシー後部座席へ、さらに岸田のアパート内へと延々と持続する、執拗な〈説得〉の儀式を凝視しつつ、ジル・ドゥルーズ著『マゾッホとサド』で指摘されていたザッハー=マゾッホの小説における〈説得〉の重要性だかそんな記述を想起しながら悦に入っていたずっと昔の学生時代を思い出す、という、きわめて後ろ向きの作業に終始することとなった。


P.S.
 『黒薔薇昇天』は1/16(金)、つまり本日もシネマヴェーラ渋谷で上映される。併映となる崔洋一監督『性的犯罪』(1983)も結構いい映画だった記憶があり、お得な2本立と言える。