荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『モンパルナスの灯』 ジャック・ベッケル

2009-12-08 21:33:27 | 映画
 今週の金曜・土曜(11、12日)両日の朝9時半から、東京・銀座一丁目の銀座テアトルシネマ〈ジェラール・フィリップ没後50年企画〉で、わが偏愛の1本『モンパルナスの灯』(1958 監督ジャック・ベッケル)が上映される。
 早死にした画家モディアーニとその愛妻ジャンヌの愛と酒と生活と死が、ジェラール・フィリップ、アヌーク・エーメという、比較する者のない端正な美男美女によって演じられた本作は、ベッケル演出を堪能するという点では、他作品に一歩譲るものの、ヌーヴェルヴァーグ前夜のフランス映画の粋に思いを新たにするという点では、恰好の例である。
 困窮ゆえパリ画壇を追われ、ニースに隠遁するジェラール・フィリップのもとを訪ねたアヌーク・エーメが、陽光あふれるニースの坂道を大きな荷物を抱えて上がってくるのを、坂の上で相好崩して迎えるフィリップのなんと美しいことだろう。破滅と死がもうそこまで来ているというのに、いやそれゆえにこそ、あの坂道はあんなにも輝いているのであろう。

 本作を見る機会というのは、珍しくもなんともないかもしれない。しかし、朝9時半から『モンパルナスの灯』を見て、そのまま引き続いて、オータン=ララ監督、オーランシュ&ボスト脚本の『赤と黒』(1954)を見る、というのがいいような気がする。貴方なら、どちらの作品と作家を支持しますか、という二者択一がいまもって有効であるかどうかは、この際どうでもいいのである。もちろん私はベッケル派であります。


〈ジェラール・フィリップ没後50年企画〉は、銀座テアトルシネマにて開催中
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