遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(473) 小説 いつか来た道 また行く道(33) 他 惑わされるな

2023-11-12 12:56:08 | 小説
            惑わされるな(2023.11.7日作)



 
 宗教に帰依するな
 教会などに頼るな
 神は自身の心の裡で
 自身を律する主として
 育めばいい
 全智全能の神など
 存在しない
 只今 現在 2023年 
 この地球上 世界に於ける
 人の命の奪われ 失われてゆく悲劇
 果てし無く続くこの惨状
 この状況を前にして 神 教会                      
  どれだけ救いの手を
 差し延べているのか ?
 姿が見えて来ない
 宗教 教会 教皇 教祖 祖師
 名ばかりの存在 各々 それぞれ
 自己を主張 飾り立て 世界の
 対立 抗争 煽るだけ
 豪奢な衣装に身を包み 
 虚構の世界を練り歩く 教皇 教祖 祖師
 滑稽 尊大 道化の醜い姿 この
 醜い道化師よりも
 たった一人の子供の命 この世に
 ただ一つの幼い子供の命の方が
 この世に於いては はるかに尊く貴重
 宗教 教会などに惑わされるな
 虚名 虚飾に惑わされるな
 神はあなた自身の心の中で秘かに そっと
 育むもの




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             いつか来た道 また行く道(33)




 
 暮れも押し詰まった二十三日に仮契約を交わした。
 購入金額は双方が折り合う形で話しが付いた。
 その夜、わたしと専務の高木は仲介役の田崎明夫を事務所の近くの料亭に招いて労をねぎらった。
 新店舗の工事は引き渡しが済み次第、すぐにでも取り掛かる心算だ、とわたしは田崎に言った。
 宮本俊介はこの時期、新年早々の新作発表に向けての準備で忙しかった。
 それが済めば東京へ帰って来るとの事であった。
 その帰国はわたしに取っても、宮本俊介と組んでの新たな出発点ともなるべきもので、当然、大きな喜びに包まれていいはずのものだった。
 しかし、わたしの心の中では、絶えずあの見知らぬ男との約束が重荷となって重く圧し掛かって来ていた。その席でもわたしは、酒が入って意気盛んな高木と田崎の会話に入ってゆく事が出来ずに滅入る気分のまま、二人の会話を別世界の出来事のように聞いていた。
 男と二人で別荘へ向かったのは、その四日後だった。
 前日、わたしはし午前中、事務所に居た。
 午後一時過ぎに早引けをして、秘書の浅川すみ子には、明日は休むかも知れないから、と言って置いた。
「お母さんの具合いが悪いんですか ?」
 秘書は、これまで仕事を休んだ事のないわたしの度重なる休みに心配顔で聞いた。
「そうなの。でも、今度はすぐに帰れると思うから」
 わたしは余計な気遣いをされたくなくて明るく言った。
「お大事になさって下さい」
 それでも二十五歳の秘書はわたしを気遣うように言った。
「有難う」
 わたしは素直に言った。
 男を拾ったのは外苑前だった。
「あなた、そんな薄着で来たの ?」
 助手席のドアを開けて乗り込んで来た男にわたしは言った。
「うん」
 男は手に何かの入った白いビニールの袋を持っていた。
 何時もの見馴れた服装だった。
「そんな恰好では東京とは違って寒いかも知れないわよ」
 親しい友達に語り掛けるようにわたしは言った。
「大丈夫だよ」
 男も気軽に、気に掛ける様子もなく言った。
「どう ? 約束の物は持って来てくれた ?」
「ああ」
 そう言って、わたしと並んで腰を落ち着けた男は早速、白い袋を開いて見せた。
 中にはごっちゃになって写真やネガフィルムが入っていた。
 車を動かす前にわたしは中身を確かめた。
「これで全部 ?」
「そうだ」
「信用出来ないけど、仕様がないわね。わたしには調べる手立てがないんだから」
「大丈夫だ、心配すんなよ」
 男は言った。
「でも、あなた、ちょっとおかしいんじゃない。例えばね、あなたが 向こうへ行って中沢に会うでしょ。それで、これを全部、わたしに呉れるでしょう。すると、あなたが商売をする元手が無くなってしまうじゃない。たとえ、中沢栄二に会えたとしても、あなたに取ってはなんの得にもならないんじゃない」
「だから、前にも言ったろう。俺は中沢が居さえすればそれでいいんだよ。後の事は中沢がなんとかするから。俺は元々、あんたの事なんか計算に入れてねかったからね。だけど、肝心の中沢が居なくなっちゃった・・・・、あんたに聞くより他、仕様がねえもんね」
「あなた、まだ、中沢はもう居ないって疑っているの ?」
「ああ」
「わたしが、中沢に合わせて上げるって言ってる今になっても ?」
「信用出来ねえね」
「なかなか疑い深いのね」
「当たり前めえだよ。俺達みてえな人間がそう易々、人を信じていたんじゃ幾つ体があったって足りねえからね」
「そう、大した覚悟だわ。でも、そんな覚悟ももう、無用だって言う事がすぐ分かるわ」
「そう、願いたいもんさ」
「あなた、中沢が居なくなった事ではそんなに疑っているのに、自分の身が危なくなるって考えた事はないの ?」
「なんで ?」
 男は不思議そうな顔で問い返した。
「だって、あなたの口振りでは、何度も言うようだけど、わたしがあの人を消したとでも言ってるように聞こえるわよ。だから、今度も、わたしがあなたを誘って、消そうとしているかも知れないじゃない」
「大丈夫だ。俺は酒も飲めねえし、女にも興味はねえからね」
 男は達観している様子で言った。
 そうか ! そういう事だったのか ! 
 男の言葉にわたしは、思いがけず膝を叩くような真実を垣間見る思いがして胸が高鳴った。
 そうだ、それで男は執拗に中沢栄二を探していたのだ 。麻薬の代金を取り戻す事だけが男の目的ではなかった !
 わたしは思いも掛けずに展開された世界に戸惑いのような気持ちを抱きながらも昂揚した気分に包まれていた。
 その昂ぶる気分を抑えたままわたしは言った。
「悪いけど、車を出すから後ろの席へいってくれない ? 傍に男の人に居られると鬱陶しくて困るから」
「いやに冷てえんだな」
 男は苦笑いをするように言って、それでも素直に受け入れた。
「でも、あなたは女なんかに興味はないんでしょう」
「それとこれとでは違う」
 男はそう言いながらも後部席へ移った。
 男は中沢栄二を繋ぎ留めて置く為にクスリで縛っていたのだ !
 男と中沢の関係が初めて明確に見えて来る気がした。
「別荘に着くのは遅くなると思うわ」
 わたしはなんとなく気持ちの開けた思いで車を出しながら言った。
「中沢は別荘に居るのかい ?」
「違うわ。別の場所に軟禁しているのよ」
「軟禁してるって、まさか、動物園の猿みてえに檻の中に入れてある訳じゃねえんだろうね」
 男は笑いながら言った。
「勿論、違うわよ。病院に入れてあるのよ。クスリを止めさせる為に」
 咄嗟に出た言葉だった。
 その言葉と共に男の顔が突然、緊張感と共に奇妙に引き攣り、歪むのが車内のミラーに映って見えた。
 男は明らかに戸惑っていた。
 病院という言葉は男の頭の中には無かった言葉に違いなかった。そしてまた、わたし自身、無意識裡に口にした言葉だったが男への思わぬ効果に驚いた。その効果に勝ち誇ったような気分を覚えてわたしは言葉を続けた。
「もし、病院であの人がきっぱりクスリを止める事が出来れば、あなたとの縁も切れるわ。そうすればもう、あの人がクスリ代の為にわたしを強請る事もなくなるし、わたしは麻薬の売人としてあなたを訴える事も出来るわ。嫌な写真も取り戻せたしね。それに何より、あの人が無理矢理、あなたに変な関係を迫られる事も無くなるわ」
「俺は無理な関係なんか迫ってねえよ」
 男は苦虫を嚙み潰したような口調で言った。
「あなた、ちょっといい男の中沢に眼を付けてクスリで縛ったんでしょう」
「冗談じゃねえよ。奴の方から売ってくれって来たんだ」
「証人が居なければなんとでも言えるわ」
 わたしはそう言いながら、次第に滅入って来る気分に陥っていた。
 そうだった。何故、最初から中沢を施設に入れる事を考えなかったのだろう・・・・ほぞを嚙む思いに胸が搔きむしられた。
 もし、中沢が病院に入って更生する事が出来ていたら・・・・。
 わたしの人生もまた、違ったものになっていた。生涯、殺人犯の汚名に怯えながら生きなければならない今の境遇からも逃れられたーー。 
 目先の保身だけに気を取られ、そこまで考える事が出来なかった 自身の浅はかさへの取り返しのつかない後悔と共に、煮えたぎる思いの無念さに思わずハンドルを握っていた手から力が抜けて車がぶれた。
「おうッ ! 危ねえな」
 男は後部席で身体を揺すられて思わず声を上げた。
 わたしは必死の思いでハンドルを握り締め、鋭い音でタイヤをきしませながらブレーキを掛けた。
「どうしたんだ」
 男は身を乗り出して言った。
「ちょっと、目まいがしたの」
 わたしはハンドルを握り締めたまま、荒い息遣いと共に言った。
「大丈夫か ?」
 男は心配そうに聞いた。
「大丈夫なんかじゃないわよ」
 男に唾を吐きかけるようにわたしは言った。
「どうする ? 行くのを止めるか ?」
「止めないわよ。行くわよ。行って、あなたに中沢が更生する姿を見せて上げるわよ」
「無理すんなよ。事故でも起こされたりしちゃあ、目も当てられねえからなあ」
「事故を起こしてあなたと一緒に死んでやるわよ」
 わたしは感情的になって声を荒らげた。




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              takeziisan様

        
               秋の気配一杯
              暑い暑い 騒いでいる間に秋の気配一杯
              時の流れの速さに感情が追いつかない感じです
              もう こんな季節・・・
              間もなく冬が・・・
              人生は無情に過ぎて逝く あと何年と数える歳になってしまいました
              でも まだ気持ちは萎えていません まだまだ
              やる事はある 幸い 健康な事が救いになっています
              腰痛 どうぞ余り無理をなさいませんように
              でも 十九時からの水泳教室 その意気込みがあれば大丈夫
              気力をなくしたら人間 終わりだと思って日々
              生きています
               枯葉の季節 モンタン 何時聴いてもいいです
              晩年は俳優の仕事が主になりましたが
              数々の作品の中でも取り分け 恐怖の報酬 が強い印象と共に
              心に焼き付いています
               落ち葉並木 何時見ても 何度見ても引き寄せられます
              わが家の近くの大きな公園も色付き始めました
              それにしても東京都 大きな樹を切るというバカ話し
              呆れて物が言えません これまで積み重ねて来た年輪
              一度切り落としてしまえば二度と取り戻す事は出来ません
              愚かさを批判する気にもなりません
               鈴懸の径 鈴木章治 定番ですね
              いいです 無論 北村英治も同じ事 いい音を響かせます
              こんな人達の音を聞いていると昔が懐かしく甦ります
              しかし それも二度と帰らぬ過去の事 ここにも人生
              時の流れの無情を感じます
               野菜 果物 豊富 何時も羨望の思いで拝見しています
              楽しい時間を有難う御座いました