遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(434) 小説 私は居ない(8)  他 心

2023-02-12 12:30:00 | 小説
           心(2023.2.6日作)


 人の一生は短い
 人間 百二十歳が命の限界
 それなら人は せめて その
 短い命の中で これが
 あの人の手に為るもの 
 と言える 何かを一つ
 残そうではないか そこに 
 その人独自の暖かみ
 温もりの感じ取れる何か
 ーーたとえ庭の木一本でもーー
 その何かを残す事で 人は
 今は亡き あの人 この人 その
 姿を思い その心を
 感じ取る事が 出来る
 人は心 心は人 人の心は  
 人から人へ 胸から胸へ 通い合う
 通う心 触れ合う心 
 姿 形は見えなくても
 通う心 触れ合う心は永久不変
 永遠(とわ)に繫がり
 結ばれる



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            私は居ない(8)





「実は、女将にお会いしていろいろお話しを伺って帰ったあとで、三、四日すると私の所に見知らぬ女が訪ねて来たんです。それで、話しを聞いてみると女は、自分が〆香だって言うんです。だから私は川万の元女将は〆香は死んでるって言ってますよって話したんですが、女は、それは何かの間違いだって言って譲らないんです」
「〆香だって ?」
 元女将は呆れた様子を見せると、私の話しの途中にも係わらず言葉を挟んで来た。
「ええ」
「それは、あなた、嘘ですよ。インチキです。偽者ですよ」
 元女将は少し気色ばんだ口調で早口に言い立てた。
「私も始め、そう思ったんです。何しろ、女将さんに詳しい話しを聞いて帰った後なので。でも女は、やっぱり何かの間違いだって言って譲らないんです。それに、川万の当時の女将は二十五年前に死んでいるとも言うんです」
「ちょっと、ちょっと、待って下さいよ。わたしが死んでる ? 二十五年前に ? なんて事を言うんです。わたしは現に此処にこうしているじゃありませんか。全く、なんて嫌な事を言うんです !」
 元女将は腹立たしげに言った。
「女も全く同じような事を言ってました。川万の元女将は、〆香は死んでいると言ってますって言うと、わたしは現に此処に居ますって。それで私も困ってしまって、それならと思い、当時の〆香を知っているっていう私の伯父に会って貰ったんです。すると伯父は女を一目見て、この人は〆香だって言うんす。それで私は一層、こんぐらがってしまって女将さんにもその女に会って貰えないかと思い、伺っような訳なんす」
 元女将は私の申し出に躊躇う気配も見せず、むしろ積極的な様子で言った。
「ええ、構いませんよ。わたしの方にはなんの不都合もありませんし、わたしも死んだなんて言われては良い気持ちのものではありませんから。それにしてもあなた、気を付けた方がいいですよ。何かの騙(かた)りかも知れませんから」
 それから元女将は私がここまで〆香に拘る事に疑念を抱いたらしく、
「いったい、何故、そんなに〆香って言う芸者の事を知りたいんですか」
 と聞いて来た。 
「いえ、ちょっと訳がありまして」
 私は事の真相が分からないままに、私の出自に対する疑念を公にはしたくない思いだった。
 私は川万の元女将という女性の許諾を得ると早速、それぞれの日程を聞き、調節して元女将に連絡した。
 元女将は、わたしは足が少し弱いので、出来ればこちらへ出向いて欲しいという希望だった。
 それから二週間後の日曜日、わたしは車でまず三光町の伯父の家を訪れ、その後、築地にある女のマンションへ向かった。
 元女将に来訪を告げると、元女将自らが玄関へ出て迎えてくれた。
 元女将は三人で並んで立った玄関先で、伯父の顔を見ると、
「まあ、川名先生。これはこれはお珍しい方が !」
 と言って、心底、驚いた様子を見せた。
「いやあ、お久し振り」
 と伯父も笑顔で応えて手を握り合った。
「その後、お変わり御座いませんか。テレビなどでは時々、拝見しております」
 女将は言った。
「いや、もう、駄目だね。すっかり老いぼれた」
 と言って、伯父は嬉しそうに笑った。
「こちら、伯父様が川名先生と申しますと、横川社長さんの・・・・」
 元女将は驚いたような顔で言って、伯父の顔に視線を移した。
「そう、横川の一人息子」
 伯父は言った。
「そうでしたか」
 元女将は初めて納得したように言って笑顔を見せ、私を見詰めた。
 それからすぐに、
「さあ、どうぞ、どうぞ」
 と言って、扉の開かれたままになっていた玄関の内へ三人を導いた。
 その間、女と元女将の間に通い合うと思われるものは何もなかった。私達三人の中で女は門外漢のようにさえ見えた。
 私達はすぐにこの前、私が通された部屋へ案内された。
 テーブルの上には真新しい花が飾られていて、私達を迎える準備を元女将が抜かりなく済ませていたようだった。
 三人が並んで丸テーブルを囲むと元女将は、
「お食事は ?」
 と聞いた。
「済んでます」
 私は言った。
 お茶の道具が運ばれて来た。
 お手伝いの若い女性が部屋を出てゆくと早速、女将が口を開いた。
「まさか、横川社長さんのお坊ちゃまとは存じませんでしたので、失礼を致しました」
 元女将は改めて私に向かって言った。
 私はは早速、本題に入る心算で、                    
「この方が〆香さんです」
 これまで門外漢でいた女性を紹介した。
 元女将は軽く頭を下げて女に挨拶をしたが、すぐに、
「あなたは昔、うちに居たのですか ?」
 と聞いた。
「はい。昭和十六年まで、この川万さんに御厄介になっていました」
 女が初めて口を開いた。
「〆香としてですか」
「そうです」
「失礼ですが、わたしはあなたを存知上げませんが」
 元女将は不審の色を浮かべたまま、幾分、厳しい口調と共に言った。
「わたくしも女将を存知上げません」
 女は、はっきりとした口調で言った。
「おいおい、二人は一体、何を言ってるんだよ」
 伯父が二人の遣り取りに入って、呆れたような口調で言った。
「お互にああして、毎日、顔を合わせていたじゃないか」
「わたし達がですか ?」
 元女将が信じ兼ねる思いの表情を滲ませて言った。
「そうだよ」
「いえ、そんな事は御座いません。わたくしは女将さんを存じ上げておりませんので」                                  
 女が言った。
「わたしも、この方を知りませんよ」
 元女将も女に口調を合わせるように言った。
「二人とも全く、何をとぼけているんだよ。女将、あんたは本当にこの人を知らないのかい。この人は〆香だよ」
 伯父は元女将にねじ込むように言った。





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           takeziisan様


            有難う御座います
           過ぎ逝く時の速さに今更ながらに驚かされます
           河津桜まつりの写真 もう四年前になりますか
           拝見しております 記憶に残っています
           人もこうして気付かぬ間に老いてゆくのでしょうね
            愛の賛歌 越路吹雪 今 このように華を持ったエンターテイナーがいるでしょうか
           あの時代が懐かしいです
           わたくしは今 かつてのラジオ歌謡にはまっています
           無論 パソコン上での視聴ですが 懐かしさを誘われます
           隠れた名曲が幾つもあります 川柳ご同様 引導パソコンに近い機種です
            百人一首 むしろ添えられた写真に感嘆 よく御撮りになりました
           川柳は相変わらず楽しく・・・ ニュウーフェス どうぞ御用心を
            栴檀の実 懐かしいです 以前にも書いていますが
           子供頃いたわが家には門前に二本の栴檀があり 沢山の実が生り 落ちました
           その実を思い出します  
            初雪 こちらは雪なし 驚きです
            都々逸 漫談などいろいろありましたね あのような情緒はもう
           無理なのでしょうか 公共放送のNHKは 民放番組を真似したような
           愚にも付かない娯楽番組などを放送せず このような芸能の持続継承に                            
           力を入れて貰いたいものです
            お忙しい中 何時もお眼をお通し戴き御礼申し上げます
           有難う御座いました