遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(492) 小説 希望16) 他 多様性

2024-03-31 12:10:55 | 小説
             多様性(2024.3.25日作)


 人にはそれぞれ その人なりに
 持って生まれた運命 人生 世界がある
 その運命 人生 世界が 他者に害を与え
 不正なものでない限り 他者は
 その人の運命 人生 世界を 軽んじ 嘲笑
  軽蔑する事は許されない
 この世界 人間社会で 人の為に尽くし 尽力
 その尽力に成功した人は それなりに評価
 賞賛されて然るべき それでもなお
 尽力 人の為に尽くす事の出来ない人 その人を
 無能 無益 と批判 批難する事は許されない
 人 おのおの それぞれ それなりに独自の世界
 運命 個性を持って この世に生を受け 生きている
 その個性 独自性 他者に無いもの 人間社会 
 この世に存在する人の数だけ 存在する
 多様性 豊かな森は 樹一本では生まれない
 多様性 多様な樹々 その密集
 密集する樹々の一本一本 おのおの それぞれ
 各個が持つ個性 独自性 その一本一本が
 豊かな森を生 み 育む
 人の社会 この世界 人それぞれ おのおの持つ個性
 その個性 独自性が育む人の森 人間社会
 豊かさ 深さ 厚さ 堅固さ 人それぞれ おのおの
 各自が持つ個性 独自性によって 揺るぎない 人の森
 人間社会が形成 形作られる
 人 それぞれ 各個が持つ個性と独自性 その尊重
 多様性の失われた世界 やがて衰退 消滅 へ




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              希望(16)




「みんな、きれいな子ばっかりね。こんなの見てたら我慢出来なくなっちゃうでしょう」
 女将さんはそう言って再び熱に潤んだような眼差しを修二に向けた。
 修二は羞恥で赤くなった。
 女将さんはそんな修二に、
「でも、若いんだもの、しょうがないわね」
 と言って、微笑みと共に修二を見た。
「アダルトビデオは無いの ?」
 そう言ってから女将さんは部屋の中を探す様に周囲を見たが何も無かった。
「無いみたいね。あれば一緒に見られたのにね」
 と、意味ありげに言って再び修二を見た。
 修二は赤くなって身体を堅くしたままでいた。
 女将さんはその修二には構わず、
「あんた、夜は何処へも出ないの ?」
 と聞いた。
「はい」
 そう答えただけだった。
「今夜、わたしここに泊っちゃおうかな」
 女将さんはまるでからかうかのように依然として、意味ありげな眼差しを修二に向けたままで言った。
 修二は息が詰まった。
 何時だったか、鈴ちゃんが「女将さん、修ちゃんの所へ行かない ?」と言った時の言葉が途端に思い出された。
「なんだか、帰りたくなくなっちゃったの」
 微笑み掛ける女将さんの眼が潤んでいた。
 修二は突然の思わぬ言葉に狼狽した。その狼狽のまま、
「駄目ですよ。俺、困りますよ」
 と、思わず言っていた。
「あら、どうして ? 大丈夫よ。今夜、うちの人、帰って来ないから」
 女将さんは修二を説得する様に言った。
「違いますよ。そんな事じゃないんですよ」
 強い口調で言っていた。
「じゃあ、何故 ? どうしてなの ?」
 女将さんの眼差しも真剣みを帯びていた。
 修二には咄嗟には答えられなかった。
「怖いんでしょう。あんた、初めてで怖いんでしょう」
 女将さんは修二を追い詰める様に言って、なおも熱のこもった熱い眼差しで修二を見詰めた。
「違いますよ !」
 修二は投げ捨てる様に言った。
「大丈夫よ、わたしが教えてあげるから」
 女将さんは昂ぶる気持ちを抑え切れなくなった様に言って修二の方へ身体を寄せて来た。
「違いますよ ! そんな事じゃないんですよ。帰って下さい。俺、困るから」
 怒りの感情に捉われたまま修二は厳しい口調で言っていた。
 女将さんはそれで漸く修二の本心を理解したようだった。修二を見詰める眼差しがみるみるうちに憎悪に満ちて来た。
「何よ ! 意気地なし。せっかく心配して来てやったのに !」
 女将さんの声は怒りを含んで涙声になっていた。
 その声の震えに気付いて修二は我に返った。
 女将さんに強い言葉を返した事に心の痛みを覚えた。
 その痛みに耐えるように呆然としてその場に立っていた。
「いいわよ ! もう、あんたの事なんか心配してやらないから」
 女将さんは修二の愚鈍を責める様に言って立ち上がると、そのまま入口近くに立っていた修二を押し退けて部屋を出た。
「覚えてらっしゃい。意地悪をしてやるから !」
 叩き付ける様に言って階段を降りて行った。
 修二は呆然としたままその場に立っていた。
 女将さんの足早に階段を降りて行く足音が聞こえて来た。
 乱暴に表のシャッターが引き下ろされる音がして、女将さんが外へ出た事が分かった。
 修二はその場を動かなかった。
 女将さんが残していった女の匂いが部屋の中に籠っていた。
 それに気付くと女将さんの薄手のセーターの下に見えた胸のふくらみや、白い脚のしなやかだった事が改めて思い出された。
 あの時、確実に手の届く距離に普段の夜とは違う、温もりを感じさせる女の肉体があった・・・・
 その現実が修二を息苦しくさせた。
 それでも結果的には後悔はしていなかった。
 女将さんの機嫌を損ねた事だけが唯一の気懸りだった。
「覚えてらっしゃい。意地悪をしてやるから」
 憎しみを浮かべて言った女将さんの顔が眼に浮んだ。
 明日からの店での生活を思うと不安になった。
 此処での生活が出来なくなってしまうのだろうか ?
 マスターはなんて言うだろう・・・・ ?
 考えてみても仕方がなかった。
 布団の上に仰向けに転がって頭の下に両手を組み、天井を見詰めた。
 漸く馴れて来た穏やかな生活が思いがけず突然乱されて、明日からまた不安定になる・・・・。
 女将さんの愚行を思って腹立たしさを覚えた。
 女将さんがこんな事をしなければ、悩む事など何もなかった !
「女なんか大ッ嫌いだ。みんな薄汚い !」
 鬱憤を晴らす様に思わず声に出して言っていた。
 女将さんも母親も高木ナナも、みんな小狡(ずる)くて薄汚い !


          五


 夜の明ける前に此処を出てしまおうか ?
 明日の朝、女将さんと顔を合わせる事を思うと不安だった。
 どんな顔をして挨拶すればいいんだろう ?
 女将さんに無視されたり、嫌味を言われたりして傷付く事を考えると耐えられない気がした。
 漸く得た心の平安がまた、何処かへ行ってしまった。ーー
 明け方までとうとう眠る事が出来なかった。


              (都合により 次週は休載します)
           


           ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





             takeziisan様

         
              有難う御座います
             ようやく春の気配 と言うより初夏の気配 昨日はちよっと動くと汗をかきました
             気紛れ天気には翻弄されます
             野菜の新鮮な緑 羨ましい限りですが 苦労無くして収穫は無い
             何事も現実は甘くはない という事ですね
             それにしても野菜の値段の高い事 軒並み 例年の二倍近くの値段です
             家計の遣り繰りの苦労が偲ばれます
              川柳 相変わらず楽しいですね 好いですね
             何時も楽しく拝見しています
              由布院 辻馬車 中学校卒業旅行の折り 塩原の町中で見た
             辻馬車の光景をふっと思い出し郷愁を覚えました
              昭和二十年代前半 わたくしの居た村にも馬車の姿が見られたものでしたが
              何時の間にか消えてしまいました
              ポールモーリアサウンド 懐かしいですね 相変わらず好いですね
              言葉の問題 言葉には専門 最も敏感であるべきはずの
              アナウンサーの中にも近頃は首を傾げたくアクセントや
              使い方をする人が多く見られる様な気がします
              もともと言葉は時代と共に変化する ものとは言え             
              せめて言葉を専門にするアナウンサーぐらいは基 本をしっかり
              押さえて置いて貰いたいものだと思います
               見事なウスラウメの花 実は食べられるのですね
              豊かな食の世界羨ましい限りです
               御忙しい中 御眼をお通し戴き有難う御座います


                   
 


















遺す言葉(491) 小説 希望(15) 他 行為の範囲

2024-03-24 12:17:17 | 小説
            行為の範囲(2023.2.22日作)



 何事に於いても
 人間に許される行為の範囲は
 自身の生存を守る それが
 その時点に於ける
 最大の条件となる
 生存の為の条件が 最悪の場合
 最悪の行為も許される
 しかし
 自身の生存確保の為
 他者の生存権を犯し 奪う
 その行為は絶対的に
 許されない




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              希望(15)



 
 店が終わって風呂へ行って帰ると午前一時を過ぎていた。
 疲れていた。
 その夜は何時もの様に裸の女性達の雑誌を開いて見る気にもならなかった。
 部屋の隅に寄せてある布団を広げて仰向けになると、「あのバカ女が垂れ込んだんだ」と、改めて警察での出来事が思い出されて母親への憎悪を滾(たぎ)らせた。
 同時に何故か、今まで遠くに感じられていた母親が身近に感じられて、肉親としての感情が蘇った。
 幼かった頃の母親との思い出も蘇って、その思い出が懐かしくさえあった。
 改めて修二は思った。
 あいつは母親なんだ !
 その母親が修二を警察に売っていた !
 とは言え、修二自身も母親を焼き殺そうとして家に火を点けたーー
 そして、刑事が訪ねて来た。
 刑事達は証拠を見せてやる、と言った。
 あの言葉に根拠はあるのだろうか ?
 単なる脅しにしか過ぎないのではないか ?
 もし、放火した事実が知られるとすれば何処から知られるのだろう ?
 いや、分かるはずがない !
 声に出して言った。
 あの時、母親はぐっすり寝込んでしまっていた。
 自分のスカートに火が付くまで分からなかった。
 母親が警察に訴えたとしても、推察に依るものでしかないのだ。
 俺を罪に陥れるだけの証拠など、何処にも無い。
 安堵の中で考えを締めくくる事が出来た。
 修二は耳を澄ました。
 何かの物音を聞いた様に思った。
 確かに誰かが店先で鎧戸をいじっているらしい音がしていた。
 誰だろう ? 今頃。
 もう、警察が来たのだろうか ?
 それとも、泥棒 ?
 起き上がって音を忍ばせ、部屋の戸を開けてみた。
 物音はまだ聞こえていた。
 部屋を出て階段の上に立ってみた。
 鎧戸を開ける気配が音として伝わって来た。
「誰だ !」
 修二は叫んでいた。
「わたしよ、修ちゃん」
 女将さんの声だった。
 修二は緊張感から解放されて階段の明かりを点けた。
 女将さんは階段の下に立っていた。
「泥棒かと思ってビックリしたですよ」
 安堵の声と共に言った。
 修二が此処での生活に馴れるに従って女将さんが訪ねて来る事もこのところ無くなっていた。
 久し振りの女将さんの訪問に修二が階段を降りて行こうとすると、
「もう、寝ていたの ?」
 と言いながら女将さんが階段を上がって来た。
 修二は狼狽した。
 部屋には何冊もの女性のヌード写真が載った雑誌が放り出されたままになっていた。
 それを知られる事への羞恥から修二は自ら階段を降りて行こうとしたが、女将さんは委細構わず登って来た。
「警察に呼ばれたりしたから、どうしているかと思って心配になって来てみたのよ」
 女将さんは言った。
 修二には答えるべき言葉か見付からなかった。ただ、女将さんに部屋へ入って貰いたくない思いだけで階段の上に立ち塞がっていた。
 女将さんは昼間とは違って薄化粧をしているのが階段の上に居る修二にも分かった。
 普段見ている女将さんとは違ったその美貌の冴えに修二は眼を見張った。
 その間にも女将さんは階段を登って来ていて修二の前に立った。
 修二はそれでも動こうとしなかった。
 女将さんはそんな修二の身体の横から部屋の中を覗き見るようにして、
「まだ、寝てなかったのね。ああ良かった」
 と言って、そのまま部屋の中へ入る気配を見せた。
 修二は慌てて女将さんの前に身体を移動させたが、そんな修二を押し退けるようにして女将さんは部屋の中へ入ろうとした。 
 強引とも言える女将さんの行動だった。
 修二は困惑、混乱したまま、それ以上に女将さんの行動を防ぐ手立てを思い付かなくて呆然と立っていた。
 女将さんは部屋へ入ると散らかった雑誌に眼を向けたが、それを気にする様子もなく、部屋の中央に敷かれた布団の傍に黒い柔らかなスカートで膝を包む様にして横坐りに坐った。
「もう、こんな時間だからどうかなって思ったんだけど、起きていたので良かったわ」
 と、まだ呆然と入口に立ったままでいる修二を振り返って言った。
 修二はその言葉には答える事もなく仕方なく部屋へ入った。
「今夜、うちの人、花札に行っちゃったの。それで、一人で居てもつまらないから、修ちゃんが警察に呼ばれたりして、どうしているかなって心配になって来てみたのよ」
 昼間とは違った何処か親しみを感じさせる優しい口調と共に女将さんは、媚びを含んだ様にも見える眼差しで修二を見詰めて言った。
 そんな女将さんの、その美貌をひと際浮き立たせる薄化粧と共に、女の匂いでその場を包み込む雰囲気に修二はドギマギしながら、
「車で来たんですか」
 と、無愛想に聞いていた。
「ううん、自転車で来たの。十分足らずで来られるんだもの」
 女将さんは優しさの滲んだ口調で言ってから、
「警察では、あんなに長い時間居て何を聞かれたの ?」
 と修二の気持ちを労わる様な口調で優しく言った。
「別に」
 修二はやはり無愛想に答える事より他出来なかった。
 女将さんの何処か、普段と違う雰囲気が修二の気持ちを戸惑わせていた。
「この前来た、お母さんっていう女の人の事 ?」
 女将さんは修二の眼を見詰めて言った。
 その眼差しがうるんでいる様にも見えて修二は戸惑った。
「ええ」
 そう答えただけだった。
「そう。お母さん、ちょうどわたしと同じぐらいの歳なのね」
 と、女将さんはやはり熱い眼差しを修二に向けたままで言った。
 何故か、身体の堅くなる様な緊張感を覚えて修二は黙っていた。
 女将さんはそんな修二から視線をそらすと部屋の中を見廻わした。
 部屋の中には柱から柱へ紐を通して何枚ものパンツやシャツが干されたままになっていた。
 思わず赤面する修二に女将さんは、
「何か、困る様な事はないの。もし、あったら言いなさい。わたしに出来る事ならなんでもしてあげるから」
 と言った。
「はい」 
 息の詰まる思いのまま修二は言った。
 女将さんはそんな修二から視線をそらすと今度は辺りに散らばった様々な雑誌に視線を移した。
 夥(おびただ)しい雑誌の中にはページが開かれたままになっているものもあった。
 女将さんはそんな雑誌の中の、全裸の女性が誘いかける様な眼差しでこちらを見ている一冊を手に取ると、
「あなた、毎晩、こんなものを見ているの ?」
 と言って、媚びを含んだようにも見える微笑みと共に修二を見た。
 修二は夜毎の自分の秘密を盗み見られた様な気がして体中が熱くなった。





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              takeziisan様


               有難う御座います
              この冬は暖冬だったと言いながら 彼岸が過ぎてもまだ寒さが残る
              強風の日もかつてなく多くて 嫌な年です
              穏やかな春の陽ざしが欲しいものです
               美しい花々 よく御覧になっていらっしゃる
              敬服です またお庭の花々 春の楽しみですね
              狭苦しい都会の中で暮らしていると無性に自然の美しさが恋しくなります
              我が家はその中でも左手には比較的大きな防災公園
              右手には映画「男はつらいよ」の舞台 江戸川の堤防がそれぞれ
              百メートルほどの距離にあるのですが それでも雄大に広がる自然の美しさには
              とても及びません 無性に、子供の頃過ごした環境が懐かしく思い出される事があります
              それにしても 文化祭 よく当時の物をお持ちになっていらっしゃいます
              わたくしの方では学芸会と言って年に一度行われました
              中学三年に菊池寛の「父帰る」を行った事を思い出します
              それこそなんの娯楽も無い田舎 村中が学芸会運動会には 馳せ参じたものでした
              懐かしい思い出です
               高齢者運転免許 わたくしの兄妹でも次々に返納しています
              思わぬ事故 高齢者に多い事をつくづく実感します
              それにしても人間 歳を取るという事は寂しいものです
              今まで有ったものが次々に失われてゆく
              せめて自身は日々 元気に過ごす それを心掛けるようにしています
               どうぞ お身体に気を付けて御無理をなさいませんように
              何時も有難う御座います













遺す言葉(490) 小説 希望(14) 他 人間 その生きる目的

2024-03-17 12:41:50 | 小説
            人間 その生きる目的(2020.1.23日作)

  

 人間が地球上に生きる究極の目的は
 人間 各々が 如何に幸福 安穏に生きられるか
 この一点にのみ集約される
 思想も科学も その為に奉仕 利用されるべきもの
 思想の為の思想 科学の為の科学 その
 至上主義は人間社会に於ける邪道
 人の心 人の命 この視点を忘れた思想や科学は やがて
 人類の滅亡 破滅という道へ突き進む事になるのだろう




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              希望(14) 




「そうか、それならそれでいい。だけど、おまえ、この情報は何処から入ったと思う ? いいか、おまえのおふくろから入ったんだぞ。おまえの実の母親が、わたしを焼き殺そうとして火を点けたんです、って言ったんだぞ。どうだ ? それでも火を点けてないって言うのか ? 実の母親が伊達や酔狂でそんな事を言うと思うか ?」
「そんなの嘘です。出鱈目です」
 思わず大きな声を出していた。
「出鱈目 ? 出鱈目でどうして母親がそんな事を言うんだ ?」
 怒りの表情で修二は黙っていた。
「おまえと母親は旨くいってなかったんだろう。母親が男をつくって病気の父親を放り出してしまったのを、おまえは怒っていたんだろう ?」
「そんなの、関係ありません」
「関係ない ? どうして ? おまえは自分達に苦労を押し付けて来る母親が憎くて、そんな母親を焼き殺そうとしたんだろう ?」
「おれはあの時、寝ていたんです」
「おまえは寝ていた。だけど、母親も寝ていたな。しかも酒に酔ってぐっすり眠り込んでしまった。それで、お前が何かの拍子にふっと眼を醒ましても母親は気が付かなかった。傍には煙草の吸殻やライターがそのまま放り出してあった。いろんな書類も散らばっている。おまえが母親への憎しみを募らせてその母親を焼き殺そうとするには、これ以上に好い条件の揃う事は滅多にないな。どうだ ?」
 刑事の言葉は現場を眼にしたかの様にそのままの事実だった。
 修二にはだが、驚きも狼狽もなかった。腹は坐っていた。
「俺が火を点けたっていう証拠はあるんですか ?」
 強気のまま言った。
 母親からのその場の状況の説明を受ければ、誰にでも考えられる事だと思った。
「証拠 ?」
 刑事は思わぬ言葉を聞いた様に修二を見た。
「証拠なんて、何処からそんな言葉を聞いて来た ? 証拠が欲しけりゃそのうち、ちゃんと見せてやる」
 年端もゆかない修二の思い掛けない言葉に刑事は誇りを傷付けられでもしたかのように、軽い怒りを滲ませて言った。
 取り調べは長身の刑事も加わって更に続いた。
 母親が遺産相続で走り回っている事。母親の男関係。病気の父親を看病していた時の母親の様子。修二と祖母の事。修二が働いていた製材所での日常や母親の下(もと)を逃げ出した火事の夜の事。そして、マスターの店で働くようになった経緯(いきさつ)など、刑事達は脅したり賺(すか)したりしながら、執拗に探りを入れて来た。世間話しの様に話していたかと思うと急に恫喝的になったりした。
「もう、そろそろ、本当の事を喋ったらどうだ ? しぶとい野郎だなあ」
 修二はその頃には疲れ切っていた。
 早くこの場から逃げ出したいという思いだけが強くなっていた。
 何度もマスターの店で働いている自分の姿が頭を過ぎった。
 その生活が夢の中の事の様に思えて明るい色彩の下に懐かしく思い出された。
 息苦しく閉塞感を伴って迫って来るこの部屋と刑事達。
 自分が永久にこの部屋から出られないのではないか・・・・そんな気がして来て気分が滅入った。
「居眠りをするな ! 馬鹿野郎」
 年上の刑事が怒鳴った。
「居眠りなんかしてません」
「今、船を漕いでいたじゃないか」
「眼を瞑っていただけです」
 時折 、どちらかの刑事が席を外した。
 修二だけが絶え間ない言葉の攻撃を受けて休息も与えられなかった。
「くたびれたんだろう ? 本当の事を言え。そうすればすぐに帰してやる」
「俺はやってません」
「やってない、確かにそうなんだな。やってないんだな ?」
「やってません」
「よし、分かった。そんなにおまえが言うんなら、今日はこれで帰してやる。だけどいいか、これで終わったと思ったら大間違いだぞ。この次は、ちゃんと証拠を見せてやるから、何処へも逃げないであの店に居ろよ」
           
 修二が警察の建物を出た時には午後五時を過ぎていた。
 長い時間、白い壁だけに囲まれた部屋に居たせいか方向感覚が分からなくなっていた。
 少し歩いてタクシーを拾うと「北裏町の味楽亭」と告げた。           
 タクシーの運転手にはすぐに分かった。
 修二はタクシーを待たせておいて二階へ上がりタクシー代を取って来た。
「警察は何んだって ?」
 店に戻った修二にマスターは言った。
 店内は混んでいた。女将さんも鈴ちゃんも忙しそうに働いていた。
「家の事でちょっと聞かれたんです」
「おふくろとの事か ?」
「はい」
 マスターはそれ以上の事は聞かなかった。
「今まで警察に居たの ?」
 背中を見せて洗い物をしていた女将さんが顔だけ向けて聞いた。
「はい」
「お昼御飯は ?」
「まだです」
「じゃあ、向こうへ行って何か食べなさい。お腹空いたでしょう」
 女将さんは同じ姿勢のまま言った。
「大丈夫です」
 修二は言ってすぐに仕事の支度に掛かった。

 その日、修二は店が終わるまでの時間をいつも通りに働いた。
 マスターも女将さんも鈴ちゃんも普段と少しも変わらなかった。
  警察に呼ばれた不快な思いも忙しく働いているうちに忘れた。




             ーーーーーーーーーーーーーーーーー




              takeziisan様


               春の気配 花々の美しさ 嬉しい限りですが また寒さが戻るとか
              気温の激しい変化に身体が追いつきません なんだかこの所
              体調不良ーーとまではゆかないのですが 身体がシャキッとしない
              力が入らない感じでシャキシャキと動く事も出来ません
              やはり老化現象 ? 年々 肉体の衰えが顕著になって来る気がします
              一年と言えない 母親が口にしていた言葉が実感として迫って来ます
              ウォーキング九千二百歩 厳しさが実感されます
               雑草の山 あれも駄目 これも今一つ              
              一口に農業と言っても その厳しさ 難しさが改めて想像出来ます
              今年の野菜の高値 消費者に取っては不満ですが
              農家の方々に取っては不満どころではなく 頭の痛い問題なのではと
              改めて思わされます
               何事もただ新聞ラジオテレビ等でペラペラ気軽に喋って
              言いたい放題の事を言って居る人間達には分からない苦労が
              実践者には付きまとうものだと改めて実感されます
               フキノトウ 今頃 ? という 思いです         
              当地では前にも書いたと思いますが 二月頃だったかに収穫しました
               アラスカ魂 随分昔に観た映画でストーリーも曖昧ですが
              ジョン ウェインとしては西部劇ではない所に新鮮さを感じたのを覚えています  
               山頂に立つ快感 画面からも伝わって来ます      
               好いですね 改めて病み付きになる人の気持ちが分かります
               口の着く言葉 口数が多いですね
               今回も面白く拝見させて戴きました
               有難う御座います

































遺す言葉(489) 小説 希望(13) 他 幸せ

2024-03-10 12:16:31 | 小説
             幸せ(2024.3.2日作)



 ただ夢にだけ囚われ
 日々 何事も無く生きる事の幸せ
 大切さを忘れるな
 人は現に今ある日常の何気ない幸福 幸せを忘れ
 単なる夢 幻 夢想にしか過ぎない幸せに
 憧れるものだ 人は
 どの世界に於いても それなりの
 苦労 苦難から逃れる事は出来ない
 その世界には それなりの 苦労 苦難がある


             夢

 自己の夢
 その頂に辿り着くには
 日々 日常 一歩一歩 一足一足
 階段を登ってゆく
 思いがけず 望外に得た幸運 僥倖は
 ひと時の夢 幻
 幸運に酔い痴れる事は出来ても
 その喜びは束の間 地に足の着かない喜び
 不安定さの故に 瞬時に
 崩れ去って逝くだろう




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               希望(13)



 
 修二は業者が置いていった野菜を調理場に運んでいた。
「おい、修二 ! 」 
 マスターの何時にない鋭い声が修二を呼んだ。
 修二が返事をして店先に向かうとマスターは、通用口の近くに立っていた。
 修二と眼が合うと小さく首を振って表に注意を促した。
 店の入口には二人の男が立っていた。
 すぐに刑事だと分かった。
 二人の鋭い視線は共に修二に向けられていた。
「山形修二か ?」
 大柄で屈強な感じの五十歳前後の男が言った。
「そうです」
 修二の声はかすれていた。
 咄嗟に母親の顔が浮かんだ。
 火事の事で来たんだ、と判断した。
「ちょっと一緒に来て貰いたい」
 警察手帳を見せて言った。
 もう一人の四十歳位かと思われるやせ型の背の高い男は黙ったまま修二を見ていた。
 修二は息が詰まって言葉が出なかった。
「行って来いよ」
 様子を見ていたマスターが言った。
 静かな声だった。
 咎める気配はなかった。
 励ますような響きさえが感じられた。
 マスターは修二の身の上に付いては何も知らなかった。
 修二が住み込みで働くようになっても、過去に付いては何も聞かなかった。
 修二を信用しての事か、軽く見ての事なのかは分からなかった。
 修二はただ、日頃、マスターが持つ、何処か普通の人とは異なる独特の険しい雰囲気に、射すくめられるような思いと共に、ある種の畏敬にも似た感情を抱いていた。
 それが、日常見せてくれる優しい心遣いと共に、修二のマスターに対する従順さを育んでいた。
「なんですか、これ」 
 修二はマスターの言葉に励まされた様に、警察手帳に視線を落として反抗的に言った。
「お前の家が焼けた火事の事で聞きたいんだ」
 口調は穏やかだったが、厳しさのこもった声で刑事は言った。
「知らないですよ、そんな事、俺」
 修二は警察手帳に視線を落としたまま不服そうに言った。
「知ってる事だけ、話せばいいんだ」
 修二は黙っていた。
「行って来いよ」
 マスターがまた言った。
 依然として、修二を励ますような響きがあった。
 修二はマスターの言葉と共に顔を上げて刑事の顔を見た。それから、
「今、着替えて来ます」
 と言った。
「そのままでいい」
 刑事は言った。
「大丈夫ですよ。二階へ行くだけですから」
 マスターが、警戒する刑事の心を読み取ったかのように言った。
「すぐ、降りて来いよ」
 修二の背中に向かってマスターは言った。
「はい」
 修二は答えた。
 あいつが告げ口をしたんだ !
 階段を昇りながら母親の顔を思い浮かべた。
 それと共に、どんな事があっても、絶対に口を割っては駄目だ、と自分に言い聞かせた。
 ライターも燃えてしまったし、証拠になる物は何もないんだから !
 
 広さ三畳程の部屋だった。
「その椅子に座って待っていろ」
 長身の刑事が言った。
 刑事は入口の扉を閉めてすぐに出て行った。
 小さな、ガラス二枚の窓が修二が座った椅子の後ろの高い位置にあった。
 鉄製の柵で窓は守られていた。
 部屋の壁は白い漆喰で塗られていた。
 修二が座った椅子の前には木製の古びた四角い机があった。
 傍には修二が座ったのと同じ様な椅子が二つ置かれていた。
 二人の刑事が再び姿を見せた時にはは三十分以上が過ぎていた。
 何も無い空虚な部屋で長い時間を待たされて修二は苛々していた。
 二人の刑事は無言のままそれぞれが椅子に座った。
 机に着いてからも二人は無言のままで手にした書類を動かしていた。
 分厚い書類の束だった。
 書類の整理が付くと年上の刑事が初めて口を開いた。
「名前は山形修二だな」
「そうです」
「十七歳」
「そうです」
「家族は母親と二人だけか ?」
「そうです」
「去年三月八日、家は火事になったな」
「はい」
「なんで火事になったんだ ?」
「分かりません」
「ここには煙草の火の不始末が原因だと書いてある。そうなのか ?」
「分かりません」
「火が出た時の様子を覚えているか ?」
「分かりません。眠ってたから」
「どうして火事に気付いたんだ ?」
「あふくろが火事だって叫んで分かったんです」
「それで飛び起きたのか ?」
「そうです」
「それからどうした ?」
「鞄を持って逃げたんです」
「なんで、鞄なんか持って逃げたんだ ?」
「婆ちゃんが死んだ時に貰った香典が入ってたんです」
「よく、その鞄がある所へ行けたな ?」
「何時も仏壇の傍に置いてあったからです」
「寝間着のまま飛び出したのか ?」
「いや、服を着てました」
「着替える時間はあっのか ?」
「服のまま寝てたんです」
「何時も服のまま寝るのか ?」
「違うけど、あの夜はおふくろと喧嘩して、そのまま寝てしまったんです」
「なるほど」
 刑事は言った。それから、正面から修二の顔を見て、
「おまえはなかなか、説明が上手いな」
 と、軽い笑みを浮かべて言った。
「なんで、今ごろになって呼び出したのか分かるか ?」
 刑事は修二に視線を向けたままで言った。
「分かりません」
「あの夜の火事は、おまえが火を点けたんだっていう情報が入ったんだ」
 刑事は言った。
 修二に驚きはなかった。やっぱり、あいつだ、と思った。
「いくら、おまえが隠し立てをしたって、結局、最後には分かってしまうんだ。はっきり言わないで隠し立てをすればする程、罪は重くなるんだぞ。どうだ ?」
「俺。放火なんかしてません」
 刑事の口調に対抗するように修二は強い口調で言い返した。





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              takeziisan様

            
               楽しい記事 懐かしい写真 堪能しました          
              書けない文字 読めない文字 タケナワ
              酒盛りの盛んな状態に関して表現する文字としての酣は分かるとして
              何故 橋の闌干(通常 欄干と書きますがこの文字も使います)の闌が
              タケナワに使われるのか ? 面白く拝見しました
               野菜収穫 大根には思わず笑ってしまいました             
              形自体もそうですが まるで人の笑っている顔に見える模様
              傑作です 苦労のあとの収穫の喜び
               花粉 車が黄色くなる事はありませんが クシャミ頻発です
              星取表 面白いですね わたくしは週一回の
              体重測定をしています もう十年以上も続いていますが
              多少 体重の減少が見られますが それなりに元気です
              膝のチクチク痛みも食事と体操で克服しました
              今は快調ですが 流石に体の堅くなった事だけは自覚せすばにはいられません
              柔軟体操は毎朝行っているのですが 
              年齢による現象と諦めています
               蘇州夜曲 若き日の長谷川一夫 李香蘭
              昭和十五年 わたくしが生まれて二年目 なぜか懐かしく時代への郷愁を覚えます
               もうすぐ彼岸 何時まで寒い事やら 今年は暖冬という事ですが
              こちらも日曜には雪が一二三センチ積もりました
              春の陽気が待ち遠しいです
               何時も有難う御座います





              桂蓮様


              コメント有難う御座います
             文頭の文章 年寄りの説教だとお取り戴くのはちょっと心外です 
             わたくし自身 他人様へ説教など出来る身では有りません
             何時も此処に掲載する文章は日常の中で自身が納得した
             感慨 思いを書き留めているだけのものにしか過ぎません
             自身の心の呟きなのです それにわたくし自身 自分を年寄りだとは思っていません
             身体的には確かに確実な衰えを実感しますが 思考的には今が最も
             充実している時だと思っています  
             年齢を重ねた経験の中で得た知識として 揺るぎない確信の下に
             書き留めています
             どうぞ、これからも年寄りの説教などとは思わずに一人の人間の考えた事として
             良否を御判断戴けましたら嬉しく思います       
             勿論 人それぞれ考え 思いは異なります こんな文章は嘘っぱちだと
             思われる方もいらっしゃると思います それはそれでわたくしのどうこう言える問題では
             ありません ただ わたくしはわたくし自身だという確信の下
             掲載してゆく心算でいます
              バレー 以前にも書いたと思いますが 良い御趣味を見付けられました         
             楽しみと共に心身の健康 充実にも役立ちます
             明日は今日よりもっと良く・・・・日々の生活に潤いと張りが生まれます
             どうぞ これからも頑張って下さい
             御健闘を祈ります 
              有難う御座いました
             和文 英文 分離 確かにこの方が文章の流れとしては自然な気がします



              


























































遺す言葉(488) 小説 希望(12) 他 重石

2024-03-03 14:52:46 | 小説
           重石(2024.2.25日作)


 過去に拘り 過去を背負って
 未来へ歩く重石にするな
 重石にすれば足は疲れて歩けない  
 二度と戻らぬ過去ならば      
 未来へ向かう心の栄養 糧として 
 総てを呑んで 呑み尽くせ  



          無駄


 人は飲み食い生きる
 無駄な口は動かすな
 頭と身体を動かす 
 頭と身体を動かす事で
 この世は前へと進んで行く
 口先一つ 口先だけの動きでは
 世の中総ては空の空
 


         寒紅梅 観て来て後の あと幾年




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              希望(12)



 
 あらゆる事がこの母親の前では無意味に思えて気力が萎えた。
 実際には婆ちゃんがどうであったのか、修二には分からなかった。
 嫁の悪口を世間に言いふらして歩いていたのか・・・・ ?
 父親が丈夫だった頃には婆ちゃんと母親との関係は悪くはなかった。世間的にによくある普通の嫁と姑の関係だった。
 あるいは、母親が自分を守る為に作り上げた話しなのか ?
 唯一つ、はっきりしている事は、婆ちゃんは修二と同じ世界に住む人間だったという事だった。
 修二に取って大切なのは、その事実だった。責任も義務も忘れて男に走り、自分の欲望だけに捉われた無責任な母親の言った事など、どうでもよかった。
「それは確かに病気の父ちゃんの面倒を看なかったのは悪いかも知んないよ。だけど、仕方がなかったんだよ。医者代だって掛かるし、お金の出るところなんか何処にもなかったんだから。お前だってそのうち大きくなれば分かると思うけど。見てみなよ、家が火事になっても保険金の一つだって入って来やしないじゃないか。みんな父ちゃんが吞んじゃったんだよ」
 修二にはしつこく言い訳をする母親がなおさら不潔に見えて来て昂ぶる感情だけを懸命に堪えていた。
「とにかく、お前にもいろいろ苦労を掛けて済まないと思うけど、もう、父ちゃんも婆ちゃんも居ないんだから、これからは丸山さんと三人で仲良くやっていこうよ」
 母親は急に馴れ馴れしい態度を見せて擦り寄って来た。
 修二はだが、男の名前を聞いた途端にこれまで懸命に抑えていた感情が一気に膨れ上がって、その感情と共に、
「嫌(や)だ ! 」
 と、腹の底から湧き出る野太い声で言っていた。
 憎しみと怒りの混じった修二の思わぬ声に母親は圧倒されて、一瞬、恐怖の表情で身を引いた。それでもすぐに気を取り直して怒りの表情を滲ませた。
 修二は怯まなかった。
「手前えなんか親じゃねえ。唯の色気違えだ。さっと男ん所さ帰(け)えりやがれ ! 」
 と吐き捨てた。
 母親は修二のその言葉に血相を変えた。
「まあ、親に向ってなんて事を言うんだよ、お前は」
 と言った。それから、
「そうかい、分かったよ。じゃあ、これからは一切、わたしとは関係ないって言うんだね」
 と言った。
「そうだ ! 」
 修二は言った。
「それならそれでいいよ。だけど言っておくけどね、あの家はわたしが始末するからね。わたしはまだ、あの家の者なんだから。それでいいんだね」
 母親は言った。
「勝手にすればいいだろう」
 修二にはどうでもいい事だった。そのまま母親の前から立ち上がった。
 母親はそんな修二を見て慌てた。
「待ちなよ。まだ言いたい事があるんだよ」
 と言った。
 修二はその場を離れようとした。
 母親はその修二に言った。
「ちょっと、お前に聞くけどね、あの夜の火事はお前が火を点けたんだろう。わたしを焼き殺そうとして、お前が火を点けたんだろう」
 思わぬ母親の言葉だった。
 修二は心臓をわしづかみにされた思いで息を呑んだ。
 思いがけず母親が真実に迫って来た !
 修二は呆然として立ち尽くしていた。
 そんな修二に母親はなお、憎しみの眼差しを向けたまま言葉を続けた。
「警察ではわたしの煙草の火の不始末だって思ってるけど、そんな筈はないんだよ。あの時、わたしはちゃんと、灰皿で揉み消しているんだから。だけど、警察にはお前が火を点けたなんて言えないと思って黙ってたんだけど、お前がそんな心算ならわたしはもう一度、よく調べて貰うからね。いいかい ?」
 修二は母親のその言葉には答えなかった。そのまま母親の前を離れた。
 二人の刑事が修二を訪ねて来たのは、それから何日かして後(のち)だった。





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             takeziisan様

             
              有難う御座います
             山の景色 何時見てもいいですね
             心が洗われます
             NHKで百名山を放送していますが 険しい山々
             辿って行くとやはり思わぬ景色が眼の前に広がる
             この醍醐味 病み付きになると思います
              蘇州 思わず 水の蘇州の花咲く春を と歌が頭の中に浮かんで来ました
             ミモザ 花の季節 待ち遠しいです と共に雪景色
             何故か懐かしさと共に拝見しました 当地では           
             ここ何年か このような景色に包まれる事は有りません
             以前は よく経験したものですが やはり温暖化のせいでしょうか
              ミラー グッドマン べーシー 昔が偲ばれます
             川柳 堪能 いいですね 次回 期待です
             やはりこうして表現されたものを拝見しますとなんとなく
             心がほのぼのと豊かになるのを覚えます そうだそうだの共感
             楽しいです
               有難う御座いました