遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(347) 小説 化(あだしの)野(5) 他 権力と崩壊

2021-05-30 12:53:53 | つぶやき
          権力と崩壊(2021.5.17日作)


      「権力者とは 
       甘い蜜の花を知った 蜜蜂だ
       決して その場を離れようとはしない」


 権力の崩壊は常に
 内側から始まる
 権力を握れば 驕りが生まれる
 驕りが生まれれば 自己以外 存在しない
 自己以外 存在しなければ 他者は無視
 他者を無視して 総てが 自己中心
 自己が 核 芯 となり自己だけが
 肥大化 してゆく 肥大化する 自己
 自己以外の他者 その分 痩せ細る
 痩せ細った他者 その他者は やがて 自身の命の
 危機を知る 危機を知った他者 権力に束縛された他者は
 自身であって 自身でない 自身でない 自己を生きられない他者
 その他者は苦痛の余り 悶え 苦しむ 必死にもがく
 必死にもがく その力は 始め 小さく ひ弱な力
 ひ弱な力 さざ波 小さな波 に しか過ぎない
 さざ波にしか過ぎない その波は だが 幾度も幾度も
 もがき 苦しみ もがき苦しむそのうちに 次第 次第に
 大きくなり 大きな波紋となって 打ち返す 打ち返す その
 大きくなったさざ波は あちらで一つ こちらで一つ と 数を増し
 数を増したさざ波は その上 更に さざ波どうしぶつかり合い
 ぶつかり合ったさざ波は 更に 更に と 大きな波になり
 大きなうねりとなって 周りを巻き込み 圧倒する
 周りを巻き込み 圧倒する 大きなうねりのさざ波
 ぶつかり 溶け合い 大きくなったさざ波の巨大な力 大きなうねりは
 やがて 世間を巻き込み 世界を覆う 世界を覆う その
 大きなうねりの その果ては
 巨大な権力 その力 巨大な力の構築した
 堅固を誇る 巨大な城の その足下 足元にまで押し寄せ
 ひたひた ひたひた ひたひた と 少しずつ
 城の建つ 基盤の砂 その礎を削り取り 
 崩してゆく 削り取られて崩れた基盤 礎 待つものは
 城の崩壊 力の消滅 権力無力化
 驕れる者は 久しからず
 権力 力の世界 その秩序 その姿
 その姿の 永遠不滅 あり得ない
 存在し得ない
 信なくば 立たず
 民が礎 民の上に建つ城
 力が礎 力の上に建つ城
 二つの城の いずれの城が永遠不滅 ?
 明々白々
 真実はただ一つ



           ----------------



           化(あだしの)野(5)


 
 身支度が整うとすぐにでも宿へ帰る気になって、囲炉裏の火に灰を掛けて消した。昨夜の残り物で食事をして行け、と女は言ってくれたが、それだけの気持ちのゆとりはなかった。それより、女が漁をすると言った湖を見てみたいと思った。そこで女に会い、一晩、世話になった礼を言ってから村へ帰ろう、と考えた。
 猟銃を肩に掛け、小屋の外へ出ると板戸を閉めた。
 昨夜は傷の痛みで動かす事も出来なかった腕が、今朝は自由に動いた。薬のせいに違いなかった。
 先程見つけた、女が通ったと思われる跡を頼りにすぐに林の中へ入った。
 ようやく濃い霧の幾分、薄れかけ始めて来たと思える林の中には、昨夜とは違った明るさがあった。丈高いススキの群れに囲まれていても、辿る方角は容易に見極めが付いた。
 それでもなお、歩行には想像以上の困難が伴った。胸元にまで迫るススキをいちいち掻き分けなければ、眼の前が見えて来なかった。
 両手も、額も頬も、昨夜の歩行で傷だらけになっていた。改めてその痛みが感じられた。
 太陽の光りはまだなかった。

 歩いた時間も距離も分からなかった。
 何処まで行ってもススキの繁茂と杉の巨木の林立だけが続いていた。
 湖は本当にあるのだろうか ?
 次第に不安が増して来た。

 ーー湖は突然のごとくに出現した。丈高いススキを掻き分けての、先の見えない歩行に疲れ果て、半ば探すのを諦めかけていた時だった。何気なく顔を上げた視線の先に、思いがけず見えて来る明るい空間があった。
 もしや・・・の思いと共に、諦めかけていた湖への期待が一気にふくらんだ。
 丈高く繁茂するススキを掻き分けての困難な歩行にも係わらず、気持ちの急かれるままに自ずと速くなる足で湖への方角を辿った。

 言葉もなかった。
 眼を見張るばかりの光景だった。
 深い青を湛えた湖は、その底までも見通せるかのような透明感に満ちていた。
 湖面を取り囲む湖岸の、さまざまな樹々の鮮明に色付いた紅葉や黄葉が、その豊かな色彩をさざ波一つ立てない湖面の青に映していた。
 辺りに満ちた物音一つない静寂(しじま)の中で湖は、夢かと思われるような至上の世界を描き出していた。数限りない色彩の数々が織り成す鮮やかな絵模様に、ただただ、息を呑んで立ち尽くしているより外に出来なかった。

 ーーどれだけかの時間が過ぎていた。
 ようやく我に返って、わたしは思わずたじろいだ。
 わたしが立っていたのは、湖面より十メートルは高いかと思われる切り立った崖の上だった。
 あまりに急な斜面に尻込みしながら、後しざった。その時ふと、女の言った言葉を思い出していた。
「湖で漁をしています」
 女はこんな急な斜面を降りて行ったのだろうか ?
 見渡す限り、一面にススキで覆われた切り立った崖の斜面の何処にも、湖へ降りてゆけそうな場所はなかった。
 それでもわたしは、女の姿を探して湖面に視線を走らせた。
 時間的に言っても、女はもう、この湖に出ているはずだ。
 さざ波一つ立てない湖面にはだが、何処を探しても女の姿はなかった。鏡の面のように見える湖面が、湖岸を覆った様々な樹々の紅葉や黄葉を湖水に映し込んで静まり返っているだけだった。
 或いは、あの陰になった辺りにいるのだろうか ?
 ゆるやかな曲線を描いて切り立った崖が、湖面に突き出ていた。それに気付くと、その向こう側を見るつもりでススキの群れを掻き分け、岸辺を移動しながら、なおも女の姿を湖面に探した。
 だが、ようやく開けて来た視界の中にもやはり、女の姿の見えて来る事はなかった。そして、次の瞬間、わたしは更にわたしの眼を捉えて来た鮮やかな光景に言葉を失った。
 対岸の樹々の梢がいっせいに朝の光りに染め抜かれ、一瞬の間に、見事な紅葉や黄葉が溢れるばかりの光りで包まれ、金色の世界を現出したのだった。光りの絵模様が描き出す眼をあざむくばかりの光景だった。
 しかし、光りの移動は速かった。言葉もなく見詰めているうちに太陽は、急速に上昇していた。樹木を覆った影の部分がみるみる失われてゆき、光りの領域だけが樹木の全体を包み込んでいた。
 その素早く動く、失われてゆく陰の部分に否応もなく、時間の推移を意識させられた。
 一挙に現実の世界に引き戻される思いの中でわたしは、そうだ、早く仲間達の所へ帰らなければ、と昨夜からの出来事を思い出していた。
 昨夜、一晩帰らなかった事で仲間達はわたしに何があったのか、心配しているに違いない。
 そう考えると、途端に気持ちが落ち着かなくなった。
 女に会えなかった事に未練を残しながらもわたしは、ひとまず、宿へ帰ろう、と考えた。昨夜、世話になった礼には、また改めて出直して来よう。
 再び、杉林に踏み入るとわたしは、樹間から差し込む朝の光りに向かって歩き始めた。朝日に向かって歩いて行って下さい、と言った女の言葉が頼りだった。

 宿ではみんなが心配していた。主人をはじめ、村人達数人も応援に来ていて、わたしの仲間達と一緒にわたしを探すために宿を出る準備をしていた。
 わたしは午前十時少し過ぎに宿へ戻った。
 ポリーは戻っていた。わたしを見ると首を垂れ、尻尾を振りながらしおれた様子で近付いて来た。
「ポリー !  いったい、おまえはどうしたんだ」
 わたしはポリーの頭を押さえて言った。




          -----------------



          桂蓮様

          何時もお眼をお通し戴き
          有難う御座います
          「身体を起こすアラーム設定」
          強制的でなくなった時に興味が湧いた
          面白いですね でも それこそが本物
          なんでしょうね 何事も押し付けられたものは
          長続きしませんですし
           禅もバレーも武道も突き詰めればその
          根本は変わらないという事なんでしょうか
          とにかく 身体で覚える それが出来た時が
          本物 きっと身体にも無理が
          掛からなくなっているのですね
          痛い 堅い 何事に於いても未熟だという
          事だと思います どの道に於いても達人は
          いとも軽々 無理なくこなしますから
           有難う御座いました



          takeziisan様


          有難う御座います
          ブログ 今回もまた
          楽しませて戴きました
          様々な花々 よくお探しになると思います
          それにしても豊富な花々 気持ちが洗われます
          植林 わたくしの方にはありませんでした
          もっとも山という山がありませんし
          当時は竃で焚く松葉を取るための松林しか
          ありませんでした
          唐松 いい言葉の響きです
          北原白秋の詩を思い出しますし
          伊藤久男が歌った
           "から松林 遠い雲 雲の行方を見詰めてる " 
          唐松という言葉を聞くたびに「サビタの花」
          という歌が思い出されます
          唐松林のたたずまいも好きです
           少年時代のお写真 いい写真ですね
          学生服姿 ? ですよね 
          わたくし自身の少年時代が甦りました
          もっとも温暖な地方 スキーなど出来る
          はずもありませんが それだけに
          スキーには憧れました
           梅 持てる者の贅沢
           きゅうりの採れたて 香りが違います わが家の
          屋上のプランターで獲るものでさえそうです
           ムクドリ 鳥の抜け目の無さ かりんの実
          焼酎で漬けるとか 一度 戴いて処分に困った事が
          あります
           クスリと笑える川柳 いいですね
          楽しませて戴きました
           有難う御座いました
          
           
          
           
           


          
          
           
 
 
 
 

 
 


遺す言葉(346) 小説 化(あだしの)野(4) 他 孤独 熟柿は落ちる

2021-05-23 11:46:16 | 小説
         孤独(2020.9.1日作)

 孤独は寂しいものではない
 孤独には心の純化が宿る
 研ぎ澄まされた心がある
 雑念 雑事 芥の消滅
 孤独は無限大
 解き放された世界 未来を
 見詰める 
 孤独は自由 自立
 遠く 遠い他者との距離
 孤独は微笑み
 孤独は憩い
 孤独は慰め


          熟柿は落ちる(2020.9.21日作)

 
 自身の姿を
 時という鏡の中に映し
 見定める行為を怠るな
 今現在 身に纏った衣装も
 過ぎ逝く時の中では やがて
 身丈にそぐわぬものとなる
 過ぎ逝く時の中
 そぐわぬ衣装のままに なお
 今を 踊り続ける行為は
 哀れを誘う




          ----------------




          化け(あだしの)野(4)

 
 女は夜通しの火を守るために、更に太い木の枝を囲炉裏にくべると、
「明日の朝は早く仕事に出ますので、眼が醒めた時には居ないかも知れません。その時には、この鍋の中のものを温めて食べていって下さい。村へは朝日に向かって真っ直ぐ歩いて行けば出られますので」
 と教えてくれた。
「はい、有難う御座います」 
 と、わたしは言ったが、そう言ったすぐ後で先程から気になっていた、まだ年若い女性がなぜ、こんな杉の木立の深い林の中で一人、生活しているのかという思いを更に強くして、不躾ではと思いながらも聞いてみた。
「失礼ですけど、ここに一人でお住まいなんですか ?」
 女はだが、そんな質問にも特別なこだわりは見せなかった。
「はい、両親が亡くなってからはずっと一人です」
 と言った。
 その答えは大方、わたしの想像していた通りのものだったが、それでもわたしは軽い驚きと共に更に聞いていた。
「こんな杉の林の深い中に一人で居て寂しくはありませんか ?」
 女はその質問には、
「はい。もう、馴れていますから」
 と、軽い微笑みと共に言って、特別な感情も見せなかった。
 囲炉裏の中では大きな枝に火が燃え移っていた。
 女はそれを確認すると、
「布団がわたしの物一枚だけしかありませんので、今夜はこの囲炉裏のそばでお寝み下さい。女の寝た布団では嫌でしょうから。上に掛ける物はありますので」
 と言った。
「いえ、何もしないで下さい。この火のそばで横にさせて戴ければ、それで充分ですから」
 わたしは女の心配りに恐縮して言った。
 草深い林の中の夜は冷え込みも強いのか、一段と底冷えが増して来るようだった。わたしは猟銃を手元に引き寄せ、囲炉裏の火に身体を近付けた。
「ここでお仕事をなさっているというと、林の仕事でもしてらっしゃるんですか ?」
 囲炉裏の火の心地よい暖かさと、女の細やかな心遣いに包まれてわたしは傷の痛みも忘れ、すっかり寛いだ気分に浸っていた。その寛ぎが幾分、わたしを饒舌にしていたようだった。先程、女が言った仕事という言葉を思い出しながら聞かずもがなの事まで聞いていた。
 すると女は、
「いいえ、湖で漁をしています」
 と言った。それが極めて自然な事でもあるかのようだった。
「みずうみ ?」
 わたしはだが、女の口から出た思い掛けない言葉に自分の耳を疑い、思わず聞き返していた。
「はい。ここからもう少し奥へ入ると大きな湖へ出ます」
 女はやはり、静かに言った。
「そこで漁をなさってらっしゃるんですか ?」
 わたしは不思議な思いを断ち切れないままに聞き返した。
 過去、何度かこの地方へは狩猟で来ていたが、近くに湖があるなどとは誰からも聞いていなかった。
「はい。町の料理屋さんへ湖の魚を届けなければなりませんので」 
「その漁を一人でなさってらっしゃるんですか ?」
「はい」
 と、女は言った。
 わたしは依然として信じ難い思いを拭い切れなかったが、それでも、
「この辺りに湖があるなんて、全く知りませんでした」
 と言うよりほかなかった。

 ---何時の間にかわたしは眠ってしまっていたようだった。気が付いた時には朝になっていた。
 囲炉裏のそばで横になったわたしの体の上には薄い布団が掛けられてあった。
 囲炉裏の中で火が消え掛けていた。
 背中に忍び寄る寒さで眼が醒めたらしかった。
 小屋のあちこちの透き間から差し込む仄かな明るさが夜明けを教えていた。
 小屋の中には女の姿はなかった。昨夜の言葉通り、仕事に出てしまったらしかった。
 囲炉裏の上の自在鉤には鉄鍋が掛かっていた。火が弱いせいか湯気も立っていなかった。
 昨夜の食事をした食器などが囲炉裏のそばに置いてあった。
 ーーわたしは咄嗟の気懸かりを覚えて慌てて猟銃を探した。
 猟銃は昨夜のままに自分のそばに置かれてあった。
 安堵の思いと共に、女の親切にはなんのたくらみもなかった、と知ってわたしは、改めて女への感謝の気持ちを深くした。
 その思いの中でわたしは気持ちのゆとりを意識すると、今度は小屋を取り囲む状況が知りたくなって、透き間から差し込む明かりを頼りに土間へ降りると引き戸を開けてみた。
 思わず息を呑んでいた。
 引き戸を開けた眼の前、一メートル程までにススキの群れが迫って来ていた。圧倒的なその群れの密度が息苦しさを覚えさせるようでわたしは思わずたじろいだ。唖然とした思いのままわたしは、昨夜はこんなススキの中を歩いていたのだろうか、と思わずにはいられなかった。
 道らしきものは何処にも見当たらなかった。
 女はいったい、この何処を通って湖へ行ったのだろう ?
 興味を誘われるままに小屋の外へ出てみた。
 僅かな空き地に立ったまま、女が通った跡が残っていないか、探してみた。
 ようやく、僅かにススキの折れている場所を見つけ出した。
 多分、ここを通って湖に行ったに違いない。
 杉林の中には濃密に辺りを覆って白い靄が立ち込めていた。
 周囲はまだ暗かった。
 わたしはひとまず小屋の中へ戻ると、一息入れる思いで上がり框に腰を降ろした。この時になって初めて、自分の腕の傷を思い出した。
 その傷は昨夜の女の言葉通り、まったく痛みを感じさせなくなっていた。
 それでもわたしは傷口を検めてみる気になって、ジャンパーを脱ぎ、セーターを脱いでシャツ一枚になり、傷口に張り付いている何かの葉をはがしてみた。
 大きく裂けていた傷口はほぼ塞がりかけていた。それでも傷の完治したわけではない事は、そこからまだ滲み出る僅かな血で分かった。
 わたしは何はともあれ、安心感を覚えるのと共に、このままそっとして置いて宿へ帰ってから本格的に治療をしようと考えた。
 再び、先程はがした葉を傷口に押し当てるとセーターとジャンパーに腕を通した。
 傷口がほぼ塞がりかけているように見えるだけ、セーターが傷口の肉に触れる感覚もなくて痛みを感じなくてすんだ。




          ----------------



          桂蓮様

          コメント 有難う御座います
          ブログ 新作「動的静けさ」
          これはまさしく桂蓮様が目指している
          禅の「悟り」の境地です 禅は体得したものしか
          認めない 優れた職人の方々が難しい作業を
          何気なく行っている 体が覚えているからです
          桂蓮様のバレーもそこまで行ければ
          本物と言えるのではないですか 是非
          頑張って下さい
           御主人様のお話し とても面白く拝見しました 
          男なんて単純な事に熱狂して子供のように騒いでいる
          でも、そのような人に悪人は居ません
          お幸せな御家庭の様子が眼に浮かびます
           脊髄の痛み 是非 ストレッチで直す事を
          勧めて下さい わたくしも神経痛がありましたが
          医師の「筋」を伸ばせば痛みは消える
          という言葉に促され地道に体を伸ばしつづけて
          いるうちに神経痛が消えました
           コロナ予防接種 わが国の状況は散々です
          わたくしはまだしていません。特別 したいという
          思いもありません。副作用も気になりますし
          自分自身で気を付けるより仕方がないと思っています
           辛口 甘口 わたくしは意識した事がありません
          ただ、真実を語りたいと思っているだけです
           おべっか お世辞はわたくしの最も嫌うものです
          ですからわたくしは 誰にも おべっか お世辞を
          言う積もりはありません また 他人の悪口も
          軽々に口にしてはならないと考えています
          但し 批判は辞さない積もりでいます
           いつも拙文にお眼をお通し戴き 有難う御座います




         takeziisan様


        有難う御座います
        毎回 よくこれだけの記事が書けると
        感嘆しております
        今回も楽しませて戴きました
        花 鳥 野菜 毎回の"羨み節"今回もまた羨ましい   
        限りだと
         ジャム造り 毎年同じ事の繰り返しで歳をとる
        人生 それで良いのではないでしょうか それが
        本当の幸せだと思っています 同じ事の出来なくなって
        初めてその有り難さが分かるものですが
         中学生日記31 当時の状況がよく分かります
        興味深く拝見しました やはり北陸                    
        わたくしなどの居た関東とは大分 違うなという実感
        関東 特に千葉県は温暖な気候に恵まれ 人間が
        のほほんと育ってしまい お陰でこの県からは
        傑出した人物が出ない などと言われています
        無論 伊能忠敬のような人物も過去には
        居る事はいますが
         方言 やはり貴重ですね 残って欲しいです
        今の時代 そんな方言もだんだん薄れてしまうのでしょうか
         「マロニエの木陰」好きな歌の一つです 
        ふと口ずさむ事も多いです
         川柳 そうだそうだ 納得 納得
         有難う御座いました
         
         
        


遺す言葉(345) 小説 化(あだしの)野(3) 他 雑感五題

2021-05-16 12:13:28 | つぶやき
          雑感五題(2021.3~4月作)

 1 一流のスポーツ選手の闘う姿が美しいのは
   能力の限界と思われるところで
   人間の思いもかけない姿を見せてくれるからだ
   真の美は 想像を超えたところに出現する

 2 野球は傑出した一人の投手 あるいは一人の打者によって
   試合が決定される場面が多いが サッカーは
   組み立てられた組織力によって試合を決定する
   傑出した一人の選手だけで決定するのは難しい
   その点でサッカーは戦争に似ている
   一人の指揮官の下 統一した組織が動くーー戦場に於ける
   兵士の動きを連想させる
   サッカーに世界中の 人々が熱狂する裏には
   人間の戦争好きに相通じるものがあるのかも知れない
   サッカーの試合がしばしば 国の威信を賭けた応援合戦になるのは
   そのために違いない

 3 未来は約束されたものではなく
   予測されるだけのものだ

 4 破壊 浸蝕というものは極めて稀な場合を除いて常に
   最初は何食わぬ顔でやって来て ある瞬間ふと
   鋭い牙をむいて襲い掛かって来るものだ

 5 あなたには見えるだろうか
   あなたには感じられるだろうか
   遠い水平線 あるいは地平線の彼方の何処かで
   黒い不気味な雲が密かに生まれている気配が
   あなたは あなた自身の幸せのために
   あなた自身の人生を生きるために
   しっかりと見定め 感じ取らなければならない
   人生は短い
   後悔しているうちに終わってしまう人生を生きないためにも
   何処かで生まれている密かな気配を見逃してはならない



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          化(あだしの)野 (3)


 この囲炉裏の火が、闇の中ではあんなにもはっきりと見えたのだろうか ?    
 不思議な気がした。
 女は膝丈の紺がすりの着物から出ている、白い素足に履いた草履を脱ぐと座敷へ上がった。
 そのまま部屋の隅へいって古びた大きな木箱からくすんだ茶色の小さな包みを取り出して来た。
 囲炉裏のそばへ膝を折って座ると、
「どうぞ、お上がり下さい。今、すぐに薬をつくりますから」
 と言って、猟銃を肩に掛け、傷付いた腕を押さえたままで土間に立っているわたしを見た。
 わたしはこの時はじめて女の顔を正面から見て、その美貌に眼を見張った。
 陶器のような白い肌をした細面の顔立ちだった。その中で一際眼を引く澄んだ眼差しがわたしに向けられていた。まだ三十歳にはならないのでは、と思われた。
 背中の中ほどまで垂らした黒い髪がうしろで一つに束ねられていた。
 女はすぐに包みを解いて丸い小さな木の容器を取り出した。
 蓋を開けると中に黒い粉末が入っていた。
「薬草を蒸し焼きにしたものです」
 と女は言った。
 それを少しだけ手のひらに取り分けると別の茶碗型の容器に移して、囲炉裏の上の自在鉤に掛かった鉄瓶の中の煮えたぎった湯を入れて溶いた。
 女に勧められるままにジャンパーを脱ぎ、セーターを脱いで、シャッ一枚になって見る腕の傷は、肉がえぐられ、白い脂肪肉が露出していた。六、七センチほどの傷口だった。
 女はまだ、湯気の立つ薬が冷めるのを待ってから、傷口の乾いた血をぬるま湯で洗いおとし、その上に直接、小さな竹の箆(へら)で薬を塗り始めた。
「滲みませんか ?」
 わたしの顔を見て女は気遣うように言った。
「いえ、大丈夫です」
 微かに温かみを残す薬はむしろ傷口に心地よかった。
 薬を塗った後は大人の手ほどの大きさの乾燥させた何かの葉で覆った。粘着く薬でその葉はすぐに傷口に密着した。
「こうして置けば大丈夫です。朝になれば痛みも取れて、傷口も乾いていると思います」
 女はそう言ってからわたしの傍を離れた。
 わたしは礼を言い、セーターとジャンパーを着た。
 囲炉裏に燃える火が暖かかった。昼間の行動による疲れからか、腕の傷による体力の消耗からか、自然に瞼が閉じそうになった。
「食事は・・・、お済みになりましたか ?」
 女は薬を元の場所にもどして来ると言った。--女の他に家の中には人の気配を感じさせるものが何もなかった。それに気付くとわたしは、こんな深い杉林の中に年若い女がたった一人でいるのだろうか、と不思議に思った。
「いえ、まだです。何しろ、明るいうちに宿へ帰るつもりでいたものですから」
 わたしはその疑問は口にせずに女の問い掛けに答えた。--草深い林の闇に明かりを見た時、まず、わたしの頭に浮かんだのは、狩猟小屋か炭焼き小屋に違いない、という思いだった。当然ながらにそこには、ある程度、年を重ねた男の姿があった。
「食事と言っても、こんな処ですから何もないんですけど、何かお食べになりませんか。わたしもちょうど食べようと思っていたところなので」
 女の後ろ、部屋の隅には煤で黒くなった鉄鍋が置いてあった。
 わたしはだが、この時、女の問い掛けとはまったく別に、なぜか狩猟仲間の三人を思い浮かべていた。
 仲間達は今頃、夜になっても帰らないわたしを心配して、大騒ぎをしているに違いない。
 わたしが帰っていれば宿ではこの時間、今日の狩猟の自慢話に花を咲かせ、獲物の鍋を囲んでの酒の席が賑わっているはずだった。もっとも、わたしは今日、あの雄キジに出会うまで獲物は何一つなかったのだが。
 それでわたしは空腹による食事への誘惑より、仲間達への思いに強く引き摺られて、出来るなら今からでも宿へ帰りたい、と考えた。
「有難う御座います。でも、仲間達が心配していると思いますので、やっぱり、これから帰ってみようかと思います」
 と改めて言って、宿へ帰る方角を聞こうとした。
 すると女は、
「これから村へ帰るのは大変です。明日の朝になってからお帰りになった方が宜しいですよ。暗闇の中でこの林を出るのは容易な事ではありません」
 と言った。林を知り尽くした人が持つ実感がこもっていた。
「帰るのは無理でしょうか ?」
 わたしは女の確かな口振りに心細さを抱きながら訊ねた。
「無理な事はないと思いますけど、でも、馴れない人にはなかなか歩き切れないのでは・・・・」
 と女は、さらに曖昧な口振りで言った。
 その曖昧さが一層の困難さを想像させて、わたしの意欲は一段とそがれた。
 結局、わたしは、まだ宿へ帰る事に未練を残しながらも、女の言葉に従うより仕方がないのではないか、と考えるようになっていた。
 女はその間に早くも囲炉裏の傍を立って食事の支度に掛かっていた。
 部屋の隅にあった鉄鍋が囲炉裏の上の自在鉤に掛けられた。続いて、何かの小枝で編まれた食器入れから木製の椀が取り出された。
 そんな中にあって囲炉裏の火が一段と、疲労と傷の痛みに打ちひしがれたわたしの肉体と心を慰めてくれていた。わたしはふと、夢見る思いのうちに、このまま、ここに横になって眠る事が出来たら、と考えた。
 囲炉裏の上の自在鉤に掛けられた鍋からは早くも白い湯気が立ち始めていた。
 女はそれに気付くと鍋の蓋を取った。
 中には山菜と思われるものの入った粥があった。
 女は手製の杓子で鍋の中をかき回し確認するとすぐに用意をした椀を手にして盛り始めた。
「こんな所なので何もありませんが」
 女は恥らうように言って、根菜らしい白い漬物の入った容器と共にわたしの前へその椀を差し出した。
「とんでもない事です。腕に怪我はするし、辺りの状況は分からないしで、今夜はこの林の中で闇に包まれて眠らなければならないのかと思って、困惑していたところです。こんなに親切にして戴いて本当に助かります」
 わたしは心底、その思いを強くしながら素直に礼を言った。
 女はだが、それが特別な事ではないかのように、
「なによりも明日になれば、村へ帰るのにも楽ですし、その間には傷の痛みも取れていると思いますから、今夜はゆっくりとお休みになった方が宜しいですよ」
 と、再び、親切に言ってくれた。

 食事のあと、女とわたしは囲炉裏を挟んで向き合った。
 小屋の中には時折り爆(は)ぜる火の音と、杉林の中の丈高いススキを揺らして過ぎる風の音のほかには、聞こえるものは何もなかった。
 



          ---------------

          takeziisan様

          コメント 有難う御座います
          今回もブログ 楽しませて戴きました
          がび鳥 初めて聞くように思いますが
          このさえずりには笑ってしまいました
          まるで何かに話しかけているようで
          返事をしてしまいたくなりそうです
          楽しませて戴きました
           菅原洋一 この頃は歌を自分のものにしています
          前にも書きましたが 音をはずす菅原洋一には
          しみじみ 人に取っての年齢というものを意識  
          せずにはいられません
           イチゴ安泰 まずはおめでとう御座います
          それにしてもまた 無駄な気苦労が一つ増えましたね
           中学生日記 何時も書くようですが そのまま
          わたくしの思い出に繋がります 懐かしさが滲みます
          わたくしもそのうち 中学生時代のものを纏めたいと    
          思っています
           「シェーン」あの少年がいいですね
          シェーンの去って行く先に見える墓地のような影
          あれは流れ者 シェーンのこれから先を
          暗示しているのでしょうか 少年を演じた
          俳優も亡くなったと記憶していますが
           コロナ 何時 終わるのでしょうか
          うんざりです
           「化野」 キジの美しさから連想した物語を
          書いてみたいと思いました 概要は出来ていますが
          何処へ辿り着きますか・・・
           御期待に添えるようなものになるとよいなとは
          思いますが
           何時も有難う御座います
          
        

          桂蓮様

          有難う御座います
          新作が見当たりませんでしたので
          旧作「旅の支度」を拝見させて戴きました
          再読に耐え得るのはやはり
          文章の力のせいでしょうか
          この表現は英語では と思いながら読むのも
          楽しいです 
          冒頭の御主人様とのお写真 飛騨の辺りでしょうか
          思わず笑顔が洩れます いいお写真ですね
          たびたび御主人様のお写真をお載せになる
          きっと仲睦まじいのだな などと想像しております
          この御文章の結末 旅行も坐禅も
          行(おこな)ってみなければ分からない 
          思い掛けない結論ですが
          まさしく禅の境地です 知るという事は理屈ではない
          その一言ですね
          


 
 
 
 
 



 

   

 
   
   
   
   
   
   

遺す言葉(344) 小説 化(あだしの)野(2) 他 無と神

2021-05-09 11:51:22 | つぶやき
          無と神(2020.7.31日作)


  この世は無 無 無の世界
  で であるからこそ 人はそこに 様々 
  自分達の神を創り やれ
  何々神 何々神 と それぞれ
  自分達好みの衣装を纏わせ 崇め 奉り
  勝手気ままに 様々 人を惑わせ 迷わせ
  七転八倒 大騒ぎを している それがこの
  人間社会 この世の現実 その姿
  この世に 神はいない 全知全能の 神は無い 神は
  人それぞれ 自身の心の内に育み 育て
  自身を律する 心の糧とすべきもの
  偶像神 木偶の神は いらない この世は無
  無であるからこそして 人はこの世を
  自身の意志 心のままに 生きる事が出来る 可能になる
  無であるからこそ人は 純粋無垢な 自身の足跡 生きた証しを
  その 空間に刻み 残す事が出来る 
  偶像神 木偶の神に囚われ 掟に従う
  その世界 そこには
  自身の心のままに息を吐き 息を吸い 
  歩みを進める場所はない
  偶像神 木偶の神 その掟が総てを縛る
  邪魔をする 心の自由は保てない
  心の解放 自由の世界 無の世界 人が
  この世を生きる 最高 最善 最良 最上舞台
  最高 最善 最良 最上環境 無の世界 無の世界 こそが
  真実 最高 最善 最上 最良 に 人を活かす
  
              囚われない !



          -----------------


          化(あだしの)野 (2)


 手探りで歩きながらの用心は闇の深い林の中では、なんの用心にもならなかった。足首を何かの蔓草に絡ませたと思った時には、猟銃を背負った体が闇の空間を泳いでいた。
 空を探る手で何かに掴まろうとしたが、掴まるものがなかった。右の二の腕に肉をえぐられるような鋭い痛みが走った時には体は大地に投げ出されていた。
 草の繁みの中で横たわったまま、慌てて痛む箇所を押さえた左の手のひらに破けた革のジャンパーを通して、早くも流れ出した血の感触があった。
 頭の中が混乱した。鋭い痛みを伴う傷への危惧と共に様々な思いが錯綜した。
 こんな闇の中で、こんな怪我をしてしまって、どうしたらいいんだ ?
 疼く痛みが心臓まで達した。
 その痛みを圧縮するように歯を食い縛り、力の限りに傷口を押さえた。
 出血はそれでどうにか抑えられているようだった。
 ーー肩に掛けていた銃がなかった。
 痛みを伴う傷口を押さえたままて周囲を探した。
 猟銃は繁みの中ですぐに見付かった。
 安心すると共に、しばらくは傷の痛みで動けなかった。両膝を草の上についたままで疼く痛みに耐えていた。
 過ぎた時間は分からなかった。痛みが幾分なりとも薄れてくるとようやく銃を取り上げ、肩に掛けて立ち上がった。
 すでに夜の冷気が林の中に忍び込んでいた。
 このまま、この闇の中を歩いて行ってもいいのだろうか ?
 そう考えたが、闇の深い林の中ではじっとしている訳にもゆかなかった。どのような生き物がこの夜の中で活動するのか分からない。
 得体の知れない生き物に体の上を動き回られることを想像すると怖気が走った。
 取りあえず、歩ける所まで歩いてみよう。
 そう決心すると再び、闇の中での手探りの一歩を踏み出した。

 歩行は依然として困難を極めた。
 倒れた時に傷付けたのか、額や頬の辺りが滲みるように痛かった。
 腕の傷の痛みにその痛みが重なって、頭の動きが鈍って来るのが分かった。
 気持ちをしっかり持たなければ駄目だ !
 時折り薄れかける意識の中で自分を励ました。
 闇の中で張られた蜘蛛の巣がしきりに顔にかかって来た。
 粘つく感触が限りなく不快だった。
 傷口を押さえた手の方の腕でその不快感を拭い取った。
 次第に視力が闇に慣れて来た。
 林立する樹々の黒い影が、おぼろげながらに判別出来るようになって来た。
 暫くして。闇の中に灯りを見付けた。
 眼を凝らしてみると人家の明かりのようにも見えた。
 二つの小さな火の色が風に揺れるススキの穂の間に見え隠れしている。
 なおも眼を凝らし、疑いを抱きながらも闇に運ぶ足が自ずと早くなっていた。
 
 洩れる明かりは紛れもなく人家のものだった。そこが林の終わりではないらしかったが、それが人家であるのは間違いなかった。
 狩猟小屋か炭焼き小屋に違いない。
 闇の中で灯りに近付いた。
 家の裏手らしかった。
 家屋の黒い影に沿って表へ廻った。
 杉の巨木とススキが家を埋め尽くしていた。
 それでも表には庭と思える小さな空き地があった。
 そこに出た時には一度に緊張感がほどけていた。と同時に、疼く傷の痛みが甦った。
 痛みを堪え、傷口を押さえたままで入り口の戸を叩いた。
 中から女の声の返事があった。
「どなたでしょうか」
 若い声だった。
 草深い林の中の粗末な小屋からの、若い女の声に意表を衝かれた。
 戸惑いと不審を抱いたまま、それでもわたしは言った。
「夜分遅くすいません。林の中で道に迷ってしまった者なんですが、ちょっと、村へ帰る方角を教えて貰いたいと思いまして」
 ーー返事がなかった。
 声の主が若い女性のように思えただけに、警戒心を持たれたのだろうか、と疑った。
 すると突然、眼の前の引き戸が開けられた。と同時に狭いそのすき間を通して家の中の明かりが僅かに外に流れ出た。
 外から見える家の中は暗かった。上がり框(かまち)のそばに囲炉裏があって 火が燃えていた。
 その火の明かりを背にして女が戸口に立った。
 女の顔は判別出来なかった。逆光になっていた。姿の若い事だけが分かった。
「これから村へ帰るんですか ?」
 女は闇の中に立っているわたしをすぐに見付けたらしく、言った。
 だが、その声にはわたしの無謀を咎めるかのような響きが込められていた。
「はい。猟をしていて林に迷い込んでしまったものですから」
 わたしはそれで、言い訳がましく言った。
「怪我をしてらっしゃるんですか ?」
 闇の中でも見分けが付くのか、女は目敏くわたしの腕の怪我に視線を向けてそう言った。
「はい、林の闇の中で蔓草に足を取られたと思った時にはもう転んでいて、木の枝か何かで刺してしまったらしいんです」
 わたしはまだ痛みの治まらない傷口を押さえたままで言った。
「それなら、中へ入ってすぐに手当てをした方がよろしいですよ。そんなに血が・・・」
 女に言われて初めてわたしは、左手で押さえていた傷口に眼をやった。
 傷口を押さえた手も、破けた革のジャンパーも流れ出た血で赤く染まっていた。
 女は見も知らぬ、突然の夜の訪問者を怪しむ様子も見せなかった。まるで、日頃から親しくしている人と向き合っているかのように自然だった。
 わたしの気持ちはそれでもなお、一刻も早く村へ帰りたいという思いで急いでいた。
「でも、御迷惑ではないでしょうか」
 わたし煮え切らない思いのままに言った。
「いいえ、そんな事はありません。すぐに手当てをした方がよろしいですよ。そうすれば痛みも取れると思いますから。いつも怪我をした時に使っている良い薬がありまはすので」
 女は心底、わたしの腕の怪我を心配するように言った。
 わたしは女の心遣いに感謝の思いを深くするのと共に、傷の痛みが取れるという言葉に心を動かされた。もし、この痛みが取れるんなら・・・・
 体全体が熱を持ったように熱くなっていた。その上、一日中山野を歩き廻っていたせいで疲労感も深かった。傷の痛みによる体力の消耗と疲労感ーー、わたしの気持ちは次第に女の言葉に従う方へ傾いていた。

 家の中は木の枝と萱を編んで仕上げただけの粗末な造りだった。
 茣蓙を敷いただけの座敷は六畳ほどの広さだった。
 囲炉裏に燃える火の色が唯一、この家の明かりだった。



           ---------------



           takeziisan様

           有難う御座います
           今回も楽しい一時を過ごさせて戴きました
           キヌサヤ採れすぎ 羨ましい限りです
           総てが自分の自由になる まあ 努力は
           要しますが それがまた 楽しいのでは
           ないのでしょうか 何もない人生なんて
           つまらないものです 出来ればおすそ分けに
           預かりたいものです
            月影のナポリ 森山加代子も亡くなりましたね
            今回も様々な花のお写真 堪能しました
           それにしても 何時も言うようですが 豊かな自然
            コバン草初めて知りました むろん 初見です
            蕗 わが家の小さな庭でも収穫しました
           わたくしは蕗の葉が好きなのです 葉は皆は
           捨ててしまいますが、葉だけ集めて煮付けます
           むろん 灰汁だしはしますが それでも苦味が   
           残ります その苦味に嵌っているところです
            川柳 相変わらず楽しいですね
           短い言葉の中でずばり 言い切る所が爽快です
           今後に御期待しています でも  御無理のないよう
            イナゴ 懐かしい風景です わたくしの方には
           そういう習慣はなかのですが 群れ飛ぶ景色
           それは全く同じで眼に浮かびます
            イチゴ泥棒 ひどい人間がいるものです
            御愛嬌に一個や二個なら許せますが 人間の
           本性は何時の時代も何処の地域 国に於いても
           変わらないようです 困ったものです
            いつも有難う御座います


 

 

 
 

 
 
 
 


 
 

遺す言葉(343) 小説 化(あだしの)野 他 運命 ほか三篇

2021-05-02 13:04:08 | つぶやき
          運命 ほか三篇(2021.4.22日作)


 人は運命から 逃れる事は出来ない
 しかし 運命は 様々な可能性を秘めている
 日々 全力で今を生きる それのみが
 人の出来る事 あとは
 その人の運命が 運命の定めた方向へと
 運んでくれるだろう
 予測する事の出来ない運命
 時には 偶然がもたらす 僥倖もある
 だが 人は 精一杯 今を生きる 人の出来る
 その努力で 開ける運命もある 
 運命は常に 隠れている 
 誰もその 正体を見る事は出来ない
 叩けよ されば開かれん
 叩かなければ 扉は開かない

        ---------

 人は常に 控えめであった方がいい
 自分を大きく見せようとすればする程
 態度が大きく 傲慢になり 他者の眼には
 その人格が小さく見えて来る
 常に控えめであれば 他者は自ずと
 等身大 あるいは 
 それ以上に自分を見てくれるだろう
 心が大事 気持ちが大事
 人は心と心で繋がり合う存在

        ----------

 人は常に
 今 眼の前にあるものに 
 心を動かされる
 どんなに美しく 貴重な存在であっても
 今現在 眼の前にある欲望に
 打ち勝つ事は出来ない
 人間の多くの不実もそこから生じる

        -----------

 人生は 大半が虚構
 自身の真実を生きる物語は
 少ない



           ーーーー-------------


          化(あだしの)野

            奇妙な体験をした。それは多分 " まぼろし " と    
            言われる類のものであろうが、わたしの感覚の中
            では、明らかな現実だった。現在、こうして生きて
            いる日常の感覚と異なるものは何一つなかった。そ
            して、それが " まぼろし " だったとは今になっても
            思えない。しかし、それは事実 "まぼろし " だった
            に違いない。何故なら、それは再び見る事が出来な
            かったのだから。それはそこに存在しなかった。



 
            一
 

 草原の太陽は西に傾きかけていた。その時、猟犬のポリーに追い立てられてススキの茂みから、見事な大きさの一羽の雄キジが飛び立った。わたしの眼の前、二、三メートル程の距離だった。
 わたしは咄嗟に二連の銃を構えてキジに狙いを定めた。
 人差し指の素早い動きと共に二度の銃声が響いて、中空に飛び立ったキジは明らかに二発目の散弾をその身に浴びていた。
 キジは一瞬、何かに驚いたように羽ばたきをやめると瞬く間に、無様にもがきながらの落下を始めた。
 ポリーは素早くそのキジを追った。キジはたちまちススキの原に没していった。
 ポリーがすぐにでも獲物を捕らえて来るであろう事は誰の眼にも明らかに見えた。ポリーは事実、早くもキジの没した辺りに到達していた。
 その時だった。思いがけずポリーの眼の前から傷付いたキジが飛び立った。
 飛び立ったそのキジはススキの穂先を渡り歩くかのように低く飛翔しながら、懸命に後を追う猟犬の追跡から逃れて行った。白銀に輝くススキの穂先に点々として血の跡が残された。

 キジは二、三メートル程の距離を飛翔したかと思うと、やがて、力尽きたように草原を取り囲む巨大な杉林の中の、ススキの繁みへと再び没して行った。
 ポリーは猛然と獲物を追い、杉林に飛び込んだ。
 わたしは胸元まで迫るススキの穂を掻き分けて、やがては獲物をくわえて来るであろうポリーを想像しながら、白銀の穂先に記された血の跡を辿った。

 ポリーはだが、いつまで経っても戻って来なかった。杉林の中には早くも夕闇の気配が漂いはじめていた。
 わたしはそれでも構わずポリーが辿ったと思われる跡を追って、なおも林の中へ踏み込んで行った。
 ポリーは過去に於いて、いつでもわたしの期待を裏切る事のなかった優秀なセッター犬だった。すぐに獲物をくわえて来るだろうと信じ切っていた。
 杉林の闇はその間にも一段と暗さを増していた。急速に迫り来る闇がまたたく間に周囲を包み込んでいた。
 わたしはいつの間にか視界の失われてしまった事に気付いて、慌てて帰ろうとした。二本の指を口に含むと指笛を鳴らした。ポリーにわたしの傍へ戻れという指笛だった。二度三度と鳴らした。
 わたしはポリーがその指笛を聞いてすぐに戻って来るものと信じていた。取りあえず、自分が入って来た道を辿って草原の方へ戻り始めた。

 それ程深く、林に踏み込んだという感覚はなかった。すぐに草原に出られるものと思っていた。しかし、わたしは何処かで方角を違えていたようだった。草原はいつまで経っても見えて来なかった。
 わたしはようやく、自分が方向違いをしているらしいと気付いて狼狽した。
 それでも自分に出来る事は何もなかった。眼の前に広がる丈高いススキの群れを掻き分けながら闇雲に、巨木の林立した杉林の中を歩いて行くより仕方がなかった。
 いったい、ポリーの奴は何処へ行ってしまったんだ。
 わたしは苛立ちと共に不満を吐き出すように呟いた。
 再び、二本の指を口に含むと指笛を鳴らした。
 指笛はすでに木立の見極めも困難になり始めた林の闇を縫って鋭く響いた。
 ポリーがこの林の中にいれば当然、聞こえるはずだった。
 わたしは耳を澄まして辺りの様子を窺った。ポリーがススキの繁みを掻き分けて走り寄って来る音を探った。
 微かな葉擦れの音を響かせれる林の闇に、だが、ポリーの来る気配は無かった。
 突然、何処かの杉の梢でねぐらを争うのか、喉を引き裂かれるような不気味な声で叫びあう鳥たちの大きな声がした。
 その声が途絶えると一際深い静寂(しじま)が辺りを領した。
 わたしは静寂を嫌って大きな声でポリーを呼んだ。
「ポリー、ポリー !」
 わたしの声はだが、林の闇に吸い込まれるだけで、やはりポリーは戻らなかった。
 わたしはますます困惑した。方角も分からないこの林の闇の中で、いったい、どのように行動したらいいのだろう ?
 足元にはススキや木々の枝枝に絡まり合う蔓草の繁茂があった。闇の中でともすればその蔓草に足を取られそうになり、危険が察知された。
 依然としてポリーが戻らない事を確認するとわたしは仕方なく、また、歩き出した。胸の高さにまで迫るススキの繁みの中で闇に囲まれ、じっとしている訳にはゆかなかった。とにかく、歩いていれば、何時かは草原に出られるに違いない。この林を出てしまえば、あとはなんとかなるだろう。


          ----------------


          takeziisan様

          コメント 有難う御座います
          拙文を正確にお読み戴き 感謝
          御礼申し上げます
          この物語のテーマ 明子が恩師 滝川裕子に憧れ
          無意識裡に求めていた名声 地位 それを手にした
          時の幸福感 だが それを手にした時 名声 地位
          などというものも結局は 人と人との繋がり
          心と心の触れ合い その中でこそ始めて生き 輝いて
          来るものであり それの無い場所では単なる飾り 
          空虚なものにしか過ぎなくて 心の満たされる事はない
          明子が辿り着いた場所 仕事一筋に生きて来て心の潤い  
          の無い場所では かつて夢見た幸福な思いも蜃気楼のよ   
          うに消えてしまっていて心の満たされる事はない
          人が生きる上で真に大切なものは何か ? 
          それを主人公の心の荒みとして描いてみました
           ブログ 今回も楽しく拝見しました
          北陸と関東の外れ 遠いようで誓いものですね
          サーカス 運動会 そのままわたくしの
          記憶の中の出来事です シバタサーカス 来ました
           ハクビシン イタチ タヌキとの競争 外から
          拝見する限り いや 楽しいです 頑張って下さい
           年々 体力の衰え 実感します 何時まで出来るか
          そんな事などが頭をよぎる年齢になりました
           ブログ記事 同感です アッという間に消えてしまう
          恐ろしさ 反面 この便利さ 当分 ここで
          御厄介になる積もりでいます
           毎回 お励まし戴き 有難う御座います


          桂蓮様

         今回もコメント 有難う御座います
         拙文に対する思わぬ方向からの御批評
         ちょっとびっくりしていますが そういう
         見方もあるのかな とも思っています
          二人の続きがあるのか という御指摘
         でも 二人の関係はもうありません
         男性が無言で電話を切った その時点で
         総ての幕が下ろされました 二人の関係は
         遮断されました
          二人を再会させたのは お互いの気持ちを
         確認させる為の仕掛けです その時 男は
         家庭を持ち 社会人としても真摯に生きている
         その気持ちに迷いはない ですから タクシーの中で
         女主人公を眼にしていても 言葉を掛けることも  
         しなかた 男の気持ちの中ではは総てが
         過去の出来事として整理されているのです
          一方 女性の方は一見 華やかに見える世界に
         生きていても 心の空虚が埋めきれない 何故なのか ?
          女主人公には自分の心が理解出来ない この虚しさが
         何処から来るのか ? その苦しさが女主人公の心を
         荒ませている そんな折り 偶然 過去に誠実に
         自分に接してくれた男性に出会い その誠実な人柄に
         懐かしさを抱くと共に荒んだ心が自と引かれてゆく
         ですが男性は既に女主人公とは別の世界に生きている      
         二人の子供にも恵まれ 幸福な家庭を築いている 
         女主人公の入り込む余地は無い ここで既に二人の間には 
         決定的な溝が出来ています 二人の心の溶け合う余地は    
         無いのです 男はなんの迷いもなく仕事が終われば
         家族の下へ帰って行くでしょう 一方 女主人公の方は
         依然として 心の支えとなるものを見い出せずに苦悩を
         重ねるでしょうが 何時かはきっと心を寄せ合う事の
         出来る男性と巡り会えるものと期待しています

          何時も肯定的に見ている とのお言葉
         あえてそうしている訳ではありません 素直な気持ちです
         その人の持つ欠点が特別に誰かを傷つけたり 悩ませたり   
         しない以上 わざわざ騒ぎ立てる必要はないのではーー
         人は誰しも欠点を持つものです 暴き立てる   
         必要はありません

         「他己と自己の気づき」気づきなくしての暗記は
         何にもならない その通りです ですが世の中には
         暗記だけの知識人がいかに多い事か これは「禅」
         の道にも通じる事です
          その気づきに気づき人は やっと 学ぶ事が出来る
         その通り 良い言葉です
          何時も有難う御座います