遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(493) 小説 希望(17)  他 独裁者

2024-04-14 12:42:27 | 小説
            独裁者(2023.3.30日作)


 
 覇権国家に於いて 
 権力を振るい 君臨する独裁者
 自身の胸の裡に広がる
 欲望の海しか見る事の出来ない 哀れな人間としての 欠陥人間 
 彼等の眼には 人の命の貴重な事も 人権の尊さ 重さ
 平等な事も 映る事が無い 総てが
 自身の欲望に満ちた卑小な脳の世界で処理され
 それが正解と信じて疑わない 愚かな存在 
 独裁者




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              希望(17)



 
 新聞配達のバイクの音は聞いていた。
 あとの記憶が無かった。
 表通りから店の鎧戸を叩く音が聞こえて来て眼が醒めた。
 雨戸の透き間から差し込む微かな光りに気付いて飛び起きた。
「修ちゃん、修ちゃん」
 鈴ちゃんの呼ぶ声が聞こえた。
 電灯を点けて時計を見ると間もなく九時になるところだった。
 服のままごろ寝をしていた。慌ててズボンをたくし上げて窓の傍へ行った。
 急いで雨戸を開け、外を見ると鈴ちゃんが見上げていた。
「今、すぐ開けるから」
 鈴ちゃんに向って言った。
「何よ、寝坊したの ? 早くしないとお店に間に合わないわよ」
 鈴ちゃんは修二を見上げて言った。
 修二は雨戸の残りを開け、部屋を出て階段を駆け下りた。
 鎧戸を開けると眼の前に鈴ちゃんが立っていた。
「バカねえ。寝坊したの ?」
 鈴ちゃんは咎めた。
 その日、マスターは何時もより二時間程遅れて店に来た。
 女将さんだけが独り、先に来ていた。
 これまでにも何度かこういう事があって、それがマスターの花札による徹夜のせいだったのだと初めて知った。
 女将さんは修二を無視したように言葉も掛けなかった。朝の挨拶もなかった。
 修二は終日、女将さんと視線を合わせないように気を使いながら、気まずい思いで過ごした。
 仕事が終わって一人になり、二階へ上がった時には頸木を解かれたような安堵感を覚えて思わず、大きな溜息と共に大の字になって畳の上に転がった。
 店は何時もと同じ様に忙しかった。それぞれがそれぞれに自分の持ち場を滞りなくこなしていたが、女将さんと修二の間に交わされる何気ない会話は一切なかった。
 マスターや鈴ちゃんがそれに気付いていたかどうかは分からなかった。
 それでも、明日の事を思うと気が重かった。
 今までの様な屈託のない気持ちで過ごせるかどうか分からなかった。
「ああ、やだ、やだ !」
 思わず声に出して言った。
 昨日までの何事も無かった穏やかな時間が、再び、夢の中の時間の様に思われて来て、生きている事の煩わしさを改めて覚えた。
 いっそ、此処を出てしまおうか ?
 そうも考えたが、仕事の当ても行く先の当てもなかった。
 二、三日は貯金を崩してなんとか凌げてもその先は・・・・・
 再度、女将さんの愚行への腹立たしさに捉われて怒りを滲ませた。
 翌日も修二は店に留まっていた。
 頭の中にはマスターへの思いがあった。
 マスターは古びた布製の肩掛け鞄一つを抱えただけの、何処の誰とも知れない修二を快く受け入れてくれて、常に優しく接してくれていた。
 マスターへの感謝の思いは修二の心の中では、言葉では言い表せない程に強かった。
 もし、黙って此処を出てしまえばそんなマスターの優しい気持ちと好意を裏切る事になる。
 修二には日頃見ているマスターの一人の男としての姿、立ち居振る舞いに無意識的に憧れている部分があった。
 マスターがどんな過去を持つ人なのか、修二は知らなかった。それでも、ふとした折りにマスターが見せる鋭い眼差しが、修二に畏怖にも近い気持ちを抱かせる事があって、その眼差しと共に、この街の悪(わる)達が一目置くマスターが、通常の世界を生きた人ではないらしいという事だけはなんとなく理解出来た。その影の部分がまた、修二のマスターへの憧れを増幅させていた。
 田舎の家に付いてはこの時になっても思い出す事はなかった。母親の要求などは、はなから受け入れる気持ちは無かったが、あの火事の夜以来、田舎の家は修二の気持ちの中では完全に無いものになっていた。父ちゃんも死んだ、婆ちゃんも死んだ‥‥田舎の家の思い出は完全に修二の気持ちの中では失われたものになっていた。

 修二がそれとなく怖れていた警察からの呼び出しはその後無かった。
 母親も陰で何をしているのかは分からなかったが、再び訪ねて来る事も無かった。
 女将さんの修二に対する不機嫌はなお続いていた。
 厳しい口調で用事を言い付ける以外に言葉を掛けて来る事は無かった。
「修ちゃん、あんた、女将さんと何があったの ?」
 ある朝、女将さんとマスターがまだ来ない時間に鈴ちゃんが聞いて来た。
「なんで ? なんにも無いよ」
 修二は不機嫌に答えた。
 一番、聞かれたくない事だった。
 鈴ちゃんはそれでも総てお見通しと言った口振りで、
「嘘ばっかり。なんにも無いなんておかしいよ。女将さん、この頃、随分、修ちゃんに八つ当たりして機嫌が悪いじゃない」
 と言った。
「そんな事、無いよ !」
 思い掛けない鈴ちゃんの言葉に動揺して、思わず荒い口調で不機嫌に言い返していた。
 鈴ちゃんは重ねて言った。
「女将さん、修ちゃんを口説いたんでしょう」
   修二は狼狽した。
 急所を突かれた思いだった。
   その思いを懸命に隠して、
「なんで、そんな事が言えるんだよお」
 と言って突っぱねた。
「だって、女将さん、前にいた子も口説いた事があるんだから」
 鈴ちゃんは訳知り顔で言った。
「チェッ、詰まんねえ事言ってらあ。鈴ちゃんが男に持てないからそんな事言うんだろう」
 修二は相手にしない口調で軽蔑する様に言った。
「あら、お気の毒様。わたしにはもう、ちゃんとした相手がいるんだから」
 鈴ちゃんは修二の軽蔑など何処吹く風と言ったふうに軽く受け流して言った。
「結婚してんのかよお」
「結婚はしてないけど、一緒に暮らしてるよ。今、マンションを買おうと思って、二人で一生懸命に働いてるんだもん」
「じゃあ、他人(ひと)の事なんか、気にしなくたっていいだろう」
「でも、修ちゃんが女将さんに意地悪されるのを見ていると可哀そうになっちゃうから同情してんじゃない」
「そんな同情なんか要らないよお」
「なんで、女将さんの言う事を聞かなかったの ?」
「知らないよお」
「少しは女将さんを慰めてやればいいのに。女将さん、淋しいんだから」
「淋しい ? なんで ?」
 思わず聞き返した。
「いろいろ、訳があんのよ」
 鈴ちゃんは心得顔で言ってそれ以上は口にしなかった。
 鈴ちゃんの思わぬ言葉に修二は興味をそそられた。
「マスターもこの事を知ってるのかなあ」
 思わず言っていた。
「薄々は知ってると思うわよ」
 修二には不可解に思えた。
「知ってて、マスター、怒らないのかい ?」
「これには訳があんのよ」
 鈴ちゃんは事情通らしい口調でまた言った。
「前に居た人、それで店を辞めたの ?」
「ううん、違うわよ。この前の子はここに六年近く居たんだけど、田舎へ帰って店を出したいって言うんで、マスターがいろいろ力を貸してやったのよ」
「マスター、女将さんの事を知ってて、それでも怒らなかったのかい ?_」
 修二には不自然に思えて聞き返した。
「マスター、やたらな事では怒らないわよ」
 鈴ちゃんは言った。
「なんで ?」
「マスター、昔、ピストルで撃たれて怪我をしたのよ」
「ピストル ?」
「そうよ」
「なんで ?」
 また聞いた。





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              takeziisan様


               一週 間を置くうちにめっきり春らしくなって来ました 
              当地の桜も満開 早くも散り始めています
              道路も庭も吹き込む桜吹雪で染まります
              何とも言えない嬉しい春の景色です この桜吹雪と知り敷いた
              一面の桜 満開の花の景色とはまた違ったこの季節の美しい景色で
              何とは無い幸福感に包まれます でも それも
              三日見ぬ間の桜かな 瞬く間に過ぎて行き 世の中はまた
              悲惨に満ちた愚かな人間達の争い事に包まれます
              何百年と続く桜の花の美しさと愚かな人間達の醜い争い
              何時の世も変わらない現実なのでしょうね
               当地 クンシランはまだ蕾です ドクダミもようやく芽を吹いて来たところです
              ドクダミの白い花の群れて咲く景色が好きです
              それにしても様々な花々 よく収集しました
              パソコン上に春の気配が溢れ出して
              これだけで春の気分に包まれます 楽しいひと時でした
              継続は力なり いっ時の気まぐれ気分では出来ない事です
              敬服致します       
               体力減退 年々 強くなります さて これから後 何年 
              これまでの生活が続けられるか 年毎に頭を過ぎります 
              様々に報じられる同時代を生きた人達の死 テレビ画面などに映し出される
              老齢化した姿 人生の週末の時をふと 意識させられます
               相変わらずの農作業 痛っ 痛っ と愚痴りながら
              続けられる事の幸せ どうぞ 御大事にして下さい
               有難う御座いました










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