遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(398) 小説 引き金(7) 他 可能性を試してみたい

2022-05-29 12:18:15 | つぶやき
         可能性を試してみたい(2009.3.6日作)


 可能性を試してみたい
 まだ駆け出しにしか過ぎない 
 若手のタレントや芸能人 或いは アナウンサーなどが
 高額の契約金などで引き抜かれ 移籍する時などに
 こんな言葉を口にする この言葉は
 自分の才能 能力の限界を極め
 世間の誰もが それと認めた人たちが
 新たな出発に際して言う言葉だ
 満足な仕事も出来ない 中途半端な人間達が
 やたらに口にすべき言葉ではない
 そんな人間には
 冗談もいい加減にしてくれ と
 言いたい



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          引き金(7)



 長靴(ちょうか)も狩猟服も車に積み込んだ。
 猟銃と弾薬を付けたベルトだけは、不慮の出来事を用心して自分の部屋に残して置いた。
 明日の朝は、それを持って車に乗り込めばいい。
 朝食用のサンドイッチとお茶も、光枝が用意してくれるはずだった。
 ハンドルを握りながら、口にする心算でいた。
 三杉は布団に入る前に、明日への心弾む期待感から改めて、ケースに納められた銃を取り出し、点検せずにはいられなかった。
 光枝がドアをノックして、多美代の帰りが遅くなると告げたのはそんな時だった。
 三杉は「ああ、そう」とだけ返事をして、再びケースに収めた銃を横の壁に立てかけると両手を頭の下に組んで体をベッドの上に投げ出した。
 華やいだ気分が思いがけない邪魔者に侵入されたような思いになって、三杉は苛立った。
 妻からの電話の話しなど聞きたくはなかった。
 帰りが遅くなろうがなるまいが、俺の知った事ではない、と三杉は思った。
 わざわざ、電話など掛けて来る必要はないのだ。
 夜の十時過ぎに帰るものが一時間程遅れて十一時過ぎになろうが、その事にどれ程の違いがあると言うのだ !
 若い男と仲睦まじく衣服のない体を寄せ合い、幸福感に満ちた笑顔を浮かべている多美代の姿が自ずと脳裡に浮かんで来て、三杉は不機嫌になった。
 今の三杉に取っては決定的に失われた世界の出来事だった。そこに辿り着く事は今の三杉にはもう出来ない。
 深い絶望感だけが三杉の心を満たした。ほんの数分前の期待感と昂揚に満ちた気分は煙りのように消えていた。



          四



 泣き疲れて眠りに就く幼い子供のように三杉は、苦悩の中で疲れ果て、何時の間にか眠りに落ちていた。
 その眠りの中で夢を見ていた。
 目覚めた時、三杉は掛け布団を掛けたままのべっどの上に横たわっていた自分に気付いた。
 部屋の中には蛍光灯の白い灯りが点ったままになっていた。
 雨戸を閉める習慣のない三杉の部屋のカーテン一枚を隔てた窓ガラスの向こうは、深い夜の闇だった。
 三杉はベッドに横たわったままの姿勢で、いったい、なんだって俺はあんな夢を見たんだろう、と考えた。
 天井板を見つめたままの視線の奥には、夢の余韻がまだ、生々しく残っていた。
 不思議な夢だった。
 明日の狩猟に関係している事は明らかだった。
 その夢の中で三杉は、猟銃を片手に無限に広がる芒の原を歩いていた。
 あれはいったい、何処の場所だったのだろう ?
 記憶にはない風景だった。
 十一月も終わりに近い芒の原を吹き渡ってゆく風は既に冷たかった。
 時刻は午後三時を過ぎていた。
 三杉の他には広い芒の原の何処にも人の影はなかった。
 その時、突然、三杉の前方、七、八メートルの距離を走っていた猟犬のジミーに追い立てられるようにして、一羽の雉が飛び立った。
 全長、一・五メートルはあるかと思われるような、見事な大きさの雄の雉だった。
 三杉はあまりに不意の出来事に思わず息を呑んで呆然としていた。
 その間に雉は、追い掛ける猟犬から必死に逃れようとするかのように激しく大きな羽を羽搏かせ、芒の茂みから上空へと飛び去ろうとしていた。
 三杉は雉の、その必死の姿に気付くとふと我にかえって、手にしていた銃を肩に当て狙いを定め、素早く引き金を引いていた。
 狙いは違(たが)わなかった。
 雉は一瞬、大きく跳ね上げられるかのように体を上昇させたが、次の瞬間には飛翔の均衡を失い、左の羽を引きずるようにして落下し始めた。
 三杉の先を行くジミーがその後を追っていた。
 雉はやがて、ジミーの前方、二、三メートルの距離で片翼を引きずる飛翔に耐えられなくなったかのように、再び芒の茂みへと姿を没していった。
 ジミーが瞬く間に、その没した辺りへと走り寄っていた。雉の命もそれまでと思われた。
 三杉はジミーがすぐにも血を流し、傷付いた雉を咥えて戻って来るだろうと思い描いた。
 三杉は自らも雉の没した辺りへと近寄って行った。
 今にも傷付いた雉を咥えて来るジミーの姿を想像していた三杉の期待は、だが、なかなか果たされなかった。変だな、と思いながら三杉が雉の没した辺りへと到達した時にも、そこには雉の姿もジミーの姿もなかった。ただ、雉のものと思われる血の跡だけが点々と残されていた。
 それにしても、雉もジミーも何処へ行ってしまったんだろう・・・・
 三杉は血の跡を辿りながら、ジミーを呼んでみた。
「ジミー、ジミー」
 何時もなら二声も呼べば直ちに戻って来るジミーがその時に限って戻って来なかった。
 三杉はそれでも、なお続く雉のものと思われる血の跡を辿って歩いて行った。一体、何処へ行ってしまったんだ。
 気が付いた時には、既に夕闇が迫っていた。
 三杉は慌てて、今来た道を戻り始めた。
 ジミーは依然として、雉と共に姿を見せなかった。
 三杉は再び、ジミーを呼んだ。
 その声はだが、釣る瓶落としと言われる秋の夕暮れの中で、虚しく迫り来る闇に吸い込まれてゆくだけだった。

 夢の中の三杉にも、なぜ、自分がそこに居たのか、何も分からなかった。ただ、気が付いた時には、既にとっぷりと暮れてしまった夜の中で、大きな木々の林立する杉林の中を歩いていた。一寸先も見えない闇の中では総てが手探りだった。
 それでも三杉はその闇の中を歩き続けていた。
 この得体の知れない、巨木と身の丈もあるような丈高い芒に被われた、蔓草や木々の絡み合う林の中にはどんな生き物が棲息しているのか分からない。 
 そんな不安が闇に怯える三杉を突き動かしていた。
 この林を出てしまえば、再び、芒の原に出られるに違いない。
 微かな期待だけが先行していた。
 だが、三杉はその行動の中で思わぬ怪我を負っていた。
 闇の中、何かの蔓草に足を取られたと思った瞬間には、激しく体が投げ出されていた。
 アッと思う間もなかった。体が宙に浮いたと思った時には、左の腕の盛り上がる筋肉の辺りに鋭い痛みを感じていた。
 闇の中で放り出された体を草むらの中で立て直し、早くも生暖かいものの流れ出て来るのを感じる辺りに右手を添えた時には、破れた衣服の下で傷付いた肉体の感触がはっきりと確認出来た。
 まずい事になってしまった。
 取り返しの付かない事態に陥った事と共に、自分の不注意を後悔しながら、暫くは、激しい痛みに疼く傷跡をじっと押さえて、その痛みに耐えていた。
 体を動かす事も出来なかった。
 肩に掛けていた銃がなくなっている事にも気付いたが、暫くは動けなかった。
 ようやく、どうにか痛みに耐えられるようになると、草の上に膝を付いたまま手探りで辺りを探って銃を探した。
 幸い銃はすぐに見付かった。
 その銃を肩に掛けて、傷付いて重たくなった体を起こし、立ち上がった。
 傷付いた腕をかばっての闇の中の歩行は以前にも増して危険であったが、それでも闇の中にじっとしたまま、得体の知れない何かの生き物に体を這い廻られたり、襲われたりするよりは増しだと思って再び歩き始めた。
 流れ出る血はじっと押さえていた事でどうにか止まっているように思えた。

 初め三杉はそれを何かの生き物の眼の光りかと思った。
 闇一色の中にポツンと一つ、その灯りは浮かんでいた。





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          桂蓮様

          有難う御座います
           冒頭の御写真 何時も清々しい気分で拝見させて戴い
           ています
           今回の新作 何時にも増して 楽しく拝見させて抱きました 
           先生の言葉 傑作揃いです 良いですね 楽しそうな
           練習風景が自ずと浮かんで来ます
           こんな時間が持てる事は幸せですよね
           なんだかだと御自分を卑下しながらチャイコフスキーをソロで踊る
           大変な事ではないですか チャイコフスキーと言えば
           白鳥の湖 くるみ割り人形 名作揃いの作曲家 最も好きな作曲家の一人です
           御成功お祈りしています 六月四日すぐですね
           不安な気持ちもお有りなのではないですか
           何事も本番は緊張しますものね
            そうです 歳を取ると背骨の軟骨が減少し それで
           骨と骨がぶつかり合うようになり 背丈も縮み 痛みが出るという事です 
           でも こればかりはどうする事も出来ません 体を動かし筋を伸ばす事で痛みは
           抑える事が出来ると言っていた専門医の言葉を頼りに
           毎日 体を動かす事を心掛けています 幸い 持病もないので
           今のところは元気です この間 こちらのニュースで
           アメリカのある所の会社では百歳の方が現役の社員として
           働いているという事を言っていました
           背の高い やせ型の人で 動きは遅く見えましたが
           それでも杖も使わず お元気そうでした
            桂連様もどうぞ 百歳までバレーを続ける心算で
           頑張って下さい




           takeziisan様


           有難う御座います
           美しい花々の写真 堪能です
           ブログ 初登場 初々しさ いいですね
           思わず笑みが漏れました
            パタン・キュー 御同様 年々 無理が利かなくなります
           6000歩散歩 美しい風景に心洗われながら・・・
           羨ましいです それにしても御健脚
            桑の実 ドドメと呼んでいました 口を真っ黒にして頬張った 懐かしい記憶です
           桑の実 もう一度 口にしてみたいです
           ジャムを作る 手間ひまを考えると理屈に合いませんが
           その過程の楽しさは 代え難いものがあります
           わが家でも少しばかりのフキで毎年 同じような事をしています 
           少しばかりなので わが家では葉も無駄にしないで  
           煮付けます 葉は苦みがあってみんなは嫌いますが
           わたくしに取ってはその苦みが 何とも言えない味で
           毎年 楽しみにしています
            ユスラウメ 初めて知りました 勿論 初めて眼にしました
           梅は一年おきだと言いますが 不作 気候に左右されているのでしょうか
            今回も心和む時間 有難う御座いました
           十一年のブログ生活 一つの励みになっているのではないでしょうか      
           どうぞ これからも楽しい記事をお寄せ下さいませ
           プレッシャーをお掛けして きまぐれブログ の長く続く事を願っております
           
   




 
           

 
 
 

 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 





遺す言葉(397) 小説 引き金(6) 他 職人 神

2022-05-22 11:40:46 | つぶやき
          職人 神(2022.4.15日作)


 芸術家の自己を追求し 
 最高 最上の高みに達した時点での仕事は
 職人技と言い得るものになる
 職人とは その道に於いて 最高 最上の技術を身に付け
 その技術が 自己と一体となった人を指して言う言葉
 単純 単調に仕事をするだけの人間は たとえ
 物を造る人間であっても
 職人とは言えない 単なる
 作業員にしか過ぎない


 全知 全能の神など 存在しない
 しかし 神は 人の心の裡には存在し得る
 その神を信じる 信じないは
 その人 自身の問題 他者は
 人の心の中の神をも批難 否定する事は出来ない
 その神が他者という存在に 被害 害悪を及ぼすものでない以上ーー
 もし その神が悪徳の神であるのなら
 その存在を神と言う事は出来ない
 神とは 人を超えた 人の救済の為の存在





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          引き金(6)




「うん、どうして ? 猟をしちゃあ可笑しいかい」
「そうじゃないんですけど、うちの父も鉄砲が好きで、解禁の日が待ち切れないようにしていたものですから」
「きみのお父さんも銃をやるの ?」
「はい、山鳩や雉なんかよく撃って来ました」
 三杉はなんとなく、父が銃をやるという光枝に親しみを覚えた。多分、朴訥な感じがするであろう光枝の父親の姿が、彷彿として頭の中に浮かんだ。
 三年間、手にする事のなかった横二連のブロウニングは手入れが行き届いていて、すぐにも使用出来る状態にあった。ずしりとした重みの銃を革ケースから取り出して肩に当てると、元気な頃、早朝から日没まで山野を歩き廻っていた時の興奮が蘇った。
「犬は使わないんですか ?」
 銃を手にして、あれこれ動作を確認している三杉に光枝が聞いた。
「使うよ ?」
 家に犬の姿のない事が光枝には不思議に思えたらしかった。
「友達の家に預けてあるんだ」
 光枝は納得したらしかった。
「何を使ってるんですか」
 と聞いた。
「セッターさ」
「ああ、あの毛の長い犬ですね」
 光枝は嬉しそうに言った。
「うん。きみのお父さんは ?」
「秋田犬です。もう、ずいぶん歳を取ってるんですけど、とっても利口なんですよ」
 光枝は自分の家の事を話題に出来る事が嬉しいらしく、顔を輝かせて言った。
 草むらに隠れている雉やうずらを追い出すのがとってもうまくて、一度なんか、わたしが見ている前で、人間の二倍もあるような熊に向かっていって、一歩も後に引かなかったんですよ、などと得意気に話した。
「今度のお休みの時にいらっしゃるんですか」
 ひとしきり、自分の家の猟犬の話しをした後で光枝は聞いた。
「うん。朝の四時起きになると思うけど、その時には頼むよ」
 三杉は言った。
「はい、分かりました」
 光枝は言った。それから、
「これ、どうしますか ? 旦那様のお部屋へ運んで置きますか 」
 三杉が揃えた道具を見て光枝は言った。
「うん、そうしておいてくれ」
 三杉は言った。 
 その夜も多美代はカルチャーセンターへ行っていた。
 三杉に取っては、狩猟に行く事を始め、様々な事で多美代に余計な気遣いをする必要のない事でむしろ、救われるような思いがしていた。
 定休日を前に三杉は、前後一日ずつの休みを取った。
 初日は無理をしない心算でいた。
 早朝の道路は二時間も車を飛ばせば、西川の家に着く事が出来るはずだった。もし、体調が良ければ、そのまますぐにでも山へ入る事も考えていた。
 西川や源さん、直治さんは、三杉の到着を待ってから出発する準備をしていた。
 三杉の体調が良くなければ、三杉は宿で休み、三人だけで山へ入る計画だった。
 多美代には一昨日の夜、休みを取って狩猟に行くと告げていた。
「猟に行くって言ったって、山歩きなどして大丈夫なの ?」
 多美代は三杉の思わぬ言葉に不安も露わに、咎めるかのように強い口調で言った。
 三杉はその言葉に返事を返さなかった。黙っていた。
 言葉を返せば、棘を含んだ厳しい言葉遣いになってしまいそうで怖かった。
 三杉には分っていた。自身の屍のような人生を生きる日々の中で、自分の苛立つ心が知らず知らずのうちに、三杉に取っての唯一の身内とも言えるような存在の多美代に、その不満をぶちまけている、というその事が。
 自分の発する言葉の一つ一つ、一言一言が棘を含んで三杉自身の心をも多美代の心をも突き刺しているーー
 三杉の日常での多美代との会話は自ずと少なくなっていた。かつての日々、なんでもない言葉の遣り取りの一つ一つが心を許し合った者同士の喜びに満ちていた事実が、夢の彼方の遠い出来事だったように思われた。
 
 三杉はその日、何時もより二時間も早く帰宅した。
 幼い奈緒子は母親が外出した夜の、何時もは光枝と二人だけの寂しい食卓に思いがけず、父親が加わった事ではしゃいでいた。
「今日、学校で鉄棒の逆上がりをして四回も出来たのよ」
 と、顔を輝かせ、得意気に意気込んで話して聞かせたりした。
 奈緒子は遅い結婚をした三杉夫婦に四年目にして恵まれた子共だった。
「お父さんにそっくりな眼をしているのね」
 誰にもそう言われるのが三杉に取っては、何よりも得意な事だった。
 陶器を思わせる皮膚のその下に、紅(くれない)を隠した白い輝きに三杉は奈緒子の魂の純粋無垢を覗き見る思いを抱いていた。
 何事にもすぐに感動して心を昂らせ、驚きの表情を顕わにするその無邪気さを愛おしく思った。
 奈緒子はシチューを口元に運ぶスプーンを宙に浮かせたまま、嬉し気だった。
「お絵描きで三重丸を貰ったの」
「ほらほら、シチューがこぼれちゃうよ」
 三杉は優しく言った。
 いったい、この娘(こ)とあと何年、一緒に生きられるのだろう・・・・
 自分の体調不良と考え併せて三杉は、そう思わずにはいられなかった。
 生命の輝きを発散する幼い娘の前で、毎日、死と隣り合わせに生きている自分の生命の危うさを思った。
 奈緒子は父の言葉に宙に浮かしたままのスプーンに気付いて、自分の失敗を可笑しがるように小さな肩をすくめると慌てて口に運んだ。

 食事のあと、三杉は明日の朝、すぐに発てるように光枝に手伝わせて支度を整えた。





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          桂蓮様

           有難う御座います
          新作 脂肪を燃え尽くす
          いろいな意味で楽しく読ませて戴きました
           わたくしは二十代は無理ですが 四十代頃の
          着る物は今でも着られます 何十年も体重が
          大きく変わる事はありません 大腸がんが見つかった時も
          体重の変化はありませんでした 毎週一回 体重計に 
          乗っていますが誤差の範囲内で総てに大きな変化はありません
          その代わり 身長が縮みました 七十代後半のある年
          一年で一センチ五ミリ 縮んだ年がありました
           それにしても韓国や日本と違って アメリカの人々の肥満度 驚くばかりですので
          桂連様 少しぐらいは肥っても傍目を気にする程の事は
          ないのではないですか
          最も 自身の体調に係わる事ではありますが
           チュチュ 確かに着るには勇気のいる衣装ですね
          読みながら自ずと笑みが浮かんで来ます
          それにしてもあちこちの痛み 大丈夫ですか くれぐれも
          御無理の無きよう お気を付けて下さい ちよっとした事柄が
          後々に大きく響く事があります
           檜舞台 それを前にしたこの御文面からは気苦労でありながらも
          また なんとはないワクワク感と言ったような雰囲気が直に伝わって来ます
          まあ ここ暫くは頑張って そのあと ゆっくりお休み下さい
          医師を変える程の痛み 大丈夫ですか
          お気を付け下さい 
           何時も詰まらない文章にお眼をお通し戴きまして
          有難う御座います
           御礼申し上げます


                                     
          takeziisan様

          何時も有難う御座います
           今回もブログ 楽しく拝見させて戴きました
          やれやれ・・・ 実感 
          日々 生きる事にやれやれ という感じです          
           一見 画面ではアジサイのように見える花
          カルミア 初めて知りました その他 いろいろな花
          今回も眼の保養 でした
           それにしても今年の五月はなんという五月 薫風は
          何処へ行ってしまったのでしょう
           サーカス アメリカン フィーリング
          懐かしい曲ですね このグループ 兄妹 親戚の
          メンバーでしたよね
           久しぶりに清々しい気持ちで耳にしました
           センダン 田舎の家の記憶そのものです
          門の所に大きな木が二本あって 毎年 この花を咲かせ
          秋には黄色い実をいっぱい落としていました
           方言 ヒンナン 一見 外国語 ? かと思ってしまいますが
          よく読めばなるほどと納得  方言そのものは初めてで  
          も理解出来ます
           何時も書くようですが その地方が持つ方言独特の
          優しい響きは心地良いものです
           この方言 独特の響きが失われてしまうのは寂しい事です
          言葉の失われる事は文化の失われる事にも通じますので
          方言は是非 大切にして貰いたいものです
           ひまわり いい映画でしたね
          俳優も一流 監督も一流 こういうしっかりとした作品を観てしまいますと
          最近の作品は軽々しくて五分も観ていると なんだこりゃあ という事になってしまいます
           世の中 便利になった分 もの皆総てが軽くなってしまったように感じられます
           政治の世界初め総てが軽薄化へと進んでいるようで悲しい事です
            何時も御力添え 有難う御座います
           
 
   
        


 
 


 

遺す言葉(396) 小説 引き金(5) 他 眠りは慰め

2022-05-15 12:38:36 | つぶやき
          眠りは慰め(2022.5.10日作)


 疲労困憊した時には 眠る
 悩みや迷いに苦悶した時には 眠る
 哀しみに打ちひしがれた時には 眠る
 立ち上がれぬまでに痛手を負った時には 眠る
 他者の裏切り 無責任に怒(いか)った時には 眠る
 眠りは一時(いっとき)の死 仮想の死
 総てを忘却の中に投げ入れ
 無の闇へと導き入れてくれる
 眠りは最良の良薬
 眠りは最良の逃避先
 どんなに人が 苦悩 苦痛
 疲労困憊 哀しみ 怒りに包まれ
 煮えたぎっていようとも
 やがて訪れる永遠の眠り 死が
 総てを運び去ってくれるだろう




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          引き金(5)


 
 大学時代の友人、西川幸三からであった。
 三杉は倒れる以前には六年間、毎年、狩猟期の初めと終わりには、西川達と一緒に山の中を歩き廻って過ごしていた。
 西川は館山で代々続く旅館を経営していた。
 他には二人の仲間がいたが、二人は共に地元の農家だった。五十代後半の直治さんと、六十代半ばの源さんだった。西川に猟の面白さを教えたのも、この二人だった。
 三杉は西川に誘われて猟を始めたその年の狩猟期の終わりには、早くもセッター種の猟犬、ジミーを買い入れ、西川に預けていた。
 西川は三杉が倒れた事は知らなかった。闘病生活三カ月目に、何時ものように誘いの電話を掛けて来たが、三杉の事情を知ると病室まで見舞いに来た。
 病室での一時間余りを過ごした後、西川の帰り際に三杉は、
「もう、山歩きも出来ないよ」
 と、弱気な言葉を口にした。
 それでもまだ当時の三杉は、人生上の死も、男性としての能力の喪失も想像だにしていなかった。口先だけの弱気と言えた。
 三杉がその半年後に退院した事を告げると西川は、
「もう一度、山に入れるように頑張れよ」
 と言った。
「そう、ありたいものだが」
 西川は答えたが、満更、その景色を想像していなかったわけではなかった。
 四カ月後、西川は電話をして来た。
「どうだい。解禁になったけど、行けるかい ?」
 だが、その時にはもう、三杉の絶望的人生の始まりがその気配を見せていた。自身の意のままにならない病魔と肉体の衰えを嫌と言う程に、実生活の中で認識させられていて、
「いや、まだちょっと無理なようだ」
 と、未練を覚える事もなく、西川への否定の言葉を返していた。
 翌年にも西川は見舞い方々、狩猟解禁を知らせて来たが、この時既に、三杉の心の中は蝕まれ始めていた。男性としての能力の喪失、仕事上での体力の限界、どれもが三杉を苦しませた。
 もう、以前の生活に戻る事は出来ない !
 前途が閉ざされていた。病気以前のようにのびのびと夢を描く事が出来なかった。蝕まれた肉体が前途を塞いでいた。
 三杉はしばしば苦悶した。
 俺はいったい、なんでこんな人生の中で生きていなければならないのか ?
 生きている事の意味が見い出せなかった。屍としての人生。
 担当医は治癒しないとは言わなかったが、完治するとも言わなかった。無理をせず、気長に治療に励む事ですね。
 だが、結果は自身の肉体が誰よりもよく知っている。何も出来ない人生。抜け殻の人生。自分が自分でいて自分ではない。
 三杉の思いと心は虚無の暗い淵へ淵へと追い込まれていった。

 今回、西川からの電話を一週間ほど前に受けた時、三杉の気持ちの中には、日常のどうしようもない閉塞感を打ち破りたいという思いだけが強かった。
「うん。ちょっと、体調も良いみたいなので、医者とも相談してみて、また、改めて返事をするよ」
 と、言葉を返した。
 悶々とした日々は依然として続いていた。
 多美代は週二回のカルチャーセンター通いを続けていた。
 帰宅は何時も午後十時を過ぎていた。
 午後七時四十五分にセンターの授業が終わって、それからの時間こそが多美代に取っての本当の時間であるのかも知れなかった。
 三杉はその間、ほとんど、午後九時前には帰宅していた。爆弾を抱えたような肉体の状態で、自身が立ち上げた会社の経営も現社長に任せた上に、気晴らしの為の夜の付き合いさえ思いのままにならなかった。三杉の後を継いだ社長の桂木が順調に会社の業績を伸ばしていてくれる事だけが、現在、会長という立場にありながら何も出来ない自分に取っての唯一の救いであった。

 多美代が三杉の部屋へ顔を出さなくなったのは、いつの頃からだったのだろう ? 
 多美代が自身への後ろ暗い思いから、そうするようになっていたのだろうか ?
 それとも、三杉自身が総ての日常を厭うようになった結果、多美代を遠ざけていたのだろうか ?
 三杉は多美代が家に居る時も帰宅するとまず、九時の就寝を前に母親とくつろいでテレビを見ている奈緒子に声を掛けて、そのまま、自分の部屋へ直行した。
 多美代はそんな三杉に、
「お帰りなさい」
 と声を掛けたが、それ以上の事はしなかった。
 後の事は総てお手伝いの光枝の役割になっていた。それがいつの間にか自然な生活習慣になっていた。
 三杉は時折り、多美代が会っていると思われる男の姿と共に、自身の多美代を失った時の姿を想像した。そして、その時、決まって甦るのは、あのカルチャーセンターのある建物から出て来た時の、何処となく、孤独感と憂いに満ちた多美代の姿だった。三杉はその姿に、多美代の心の裡の葛藤と孤独を覗き見たような思いがした。そして、その思いはまた、自身の肉体の不備へと還っていて、自身を責める気持ちの方が強かった。
 多美代と三杉は、それ以前は、仲の良い夫婦と言えた。
 多美代は三杉が病室にいる間にも、懸命に尽くした。
 三杉の身にこのような肉体上の欠陥が生じない限り、二人は仲睦まじい夫婦として、幸せなな日々を過ごしていたに違いないーー。そう思うと三杉は、自身の不機嫌から、自身で多美代を遠ざけるような赴きのあった事への自覚と共に、一概に若い男に走った多美代を責める気持ちにはなれなかった。そして、それがまた、三杉に自身への嫌悪感を増殖させた。
 三杉は多美代がカルチャーセンターから帰る夜は無意識の内に多美代を避けるように、何時もより早い時刻に自分の部屋へ入った。
 食卓を囲んでの奈緒子と光枝、多美代のいない三人の食事にはかえって話題が弾んだ。普段は口うるさく母親にあれこれと注意される奈緒子も三杉の放任下では、のびのびとはしゃいでいて、光枝とふざけ合ったりしていた。
「奥様、今夜はまた、随分、遅いんじゃないですか ? 事故でもあったのかなあ」
 夫婦二人の事情を知らない光枝はそんな無駄口を叩いたりもした。そして三杉は、多美代が帰る時刻を見計らうと自分の部屋へ向かった。

「旦那様、鉄砲をするんですか ?」
 三杉が何年間も手にしなかった狩猟の道具を収納庫から取り出すのを手伝いながら、光枝は奇跡でも眼にしたかのように言った。





          ーーーーーーーーーーーーーーー




          桂蓮様

           有難う御座います
          i can try  引き受けた以上はやる
           いいですね その意気
          六月の舞台 結果をお知らせ下さい
          楽しみにお待ちしております
          なんだかんだと 弱気の発言ばかりが眼に付いていましたので
          舞台に出るなんて 考えても見ませんでした
          日頃の苦労 苦痛を耐えた成果ですね
          おめでとう御座います
           人の運命は無限の可能性を秘めている しかし 人の運命は人にはどうする事も出来ない
          突然の事故 思わぬ災害 昨日 あんなに元気だった人が・・・・
          それが人の運命です 人はただ日常をより良く生きる事しか出来ない
          人生の幕は生きている以上 何時でも開けますし 開かれます
          これが限界 そう思い 諦めてしまう事が一番 悪い事では
          ないのでしょうか
           人のイジメ 良い御主人様がいらっしゃってお幸せです 
          愛する人が傍に居ればどんな苦痛にも耐えられる でも
          人は結局 最後にはその人とも別れなければならない
          何処まで行っても哀しみが付いて廻る それが人の「さだめ」なのでしょうか
           五分の曲 聴きました
          チュチュを付けた白い衣装のダンサーたちの姿が自ずと
          浮かんで来ました この曲なら 踊りやすいのでは と思いました
           舞台の御成功をお祈りしております
          有難う御座いました




          takeziisan様

           有難う御座います
          グレン ミラーからサッチモ ピアフ ラテンの数々
          単なる郷愁ではなしに あの頃の音楽は音楽として
          立派に存在していました それだからこそ 今 耳にしても
          充分 聴き応えがあるのでしょうね サッチモやグレンミラー
          あの人達のような音を出せる演奏家が今 居るのでしょうか
          今の音楽に関心のないわたくしには分からない事ですが
          これ等の曲や楽団に匹敵する 聴き応えのある音楽が
          存在していますかね みんな 素人っぽいものばかりで
           もっとも 今は何事に於いても素人の時代ではないのでしょうか
          音楽然り 政治も然り 俳優 役者に於いても 素人に
          毛の生えた程度の演技しか出来ない連中が闊歩しています
          寂しく 薄っぺらな時代です
           ボレロ わたくしも好きな曲の一つです あの繰り返しに飽きない 
          作曲者の力量でしょうか ラベルはチャイコフスキー ショパン等と共に好きな作曲家の一人です
          無論 クラッシックの世界には数多くの作曲家がいて
          まだまだ いっぱい好きな作曲家はモーツアルト ベートーベン初め 居ますが・・・・
           山岳写真 花々の写真 満喫致しました 
          レンゲツツジ 昔 銀座四丁目の角にビヤホールがあった頃
          その横の通りに山岳地帯の花々が並べられて展示即売をする時がありました
          その時 レンゲツツジを初めて眼にして 珍しさから買い込み 
          電車の中に持ち込んで自宅まで帰った事がありました
          そのツツジも もうとっくになくなってしまいましたが
          お写真を拝見して思い出しました
           野菜の収穫 羨ましい限りです 獲れたての新鮮さは
          何ものにも代えられない魅力です
          わが家の屋上でも鉢植えのイチゴが一週間ほど前 収穫出来て
          口にしました 店頭物にはない 新鮮さが口の中に広がります
          方言 暖かいですね 良い響きです
           ブログ まだまだ 頑張って頂かないとーー 寂しくなります その意味で 応援 応援 !
          歩数計 4000歩 昨日 ちょっとした用事で歩きましたが
          普段 歩いていないせいか 1500歩ほど歩きましたら
          ヒイヒイという感じです 日頃 よくお歩きのようですので5000 7000 などという数字を拝見すると
          感嘆の思い一入です
          まだまだお元気な御様子 嬉しく思っております
           何時も楽しい記事 有難う御座います
          最近は古い音楽を聴く機会などもめったにないものですから
          ブログ上で拝見すると ひと際 懐かしく感じます
          
          

           
          
           
        
           
 

 
 
 

 
 

 
 
 
 
 
 
 



遺す言葉(395) 小説 引き金(4) 他 基準

2022-05-08 11:53:37 | つぶやき
          基準(2022.5.4日作)

 呼び名や
 世俗の名声に惑わされるな
 それが どんなに有名 どんなに人々に
 持て囃されていようとも
 理解を超えたもの 心に
 感動 感激 喜び の
 さざ波一つ
 呼び起さない ものなら
 無意味 無価値 心を
 豊かにしてくれる もの 今の時を
 幸福感で満たしてくれる そのものを
 見分ける心 自身の
 主体性のみが 唯一
 絶対的基準
 眼で見て 耳で聞き 
 心で感じ取る 総ての事に於いての
 基準
 世にはびこる 虚名に
 騙されるな






          ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





          引き金(4)


 普段は被った事もないベレー帽を被り、この日のために買った薄茶の入った度なしの眼鏡を掛けた。
 口元から頬にかけては、わざと剃らずに置いた無精ひげを生やしていた。
 総てが妻の多美代に隠れての行為だった。
 多美代が通っているカルチャーセンターは高層ビルの三十六階にあるフロアーの一つが充てられていた。
 夜のクラスが午後六時に始まる事を調べておいた三杉は、六時半過ぎの到着を目差してビルに向かった。
 目的地に着いた三杉は車を地下の車庫に納めると、高速エレベーターで三十六階に向かい、一人だけ、その階で降りた。
 片側に外の見渡せるガラス窓を備えた長い廊下には、幾つもフロアーが並んでいた。
 それぞれに使用されている講座や会社名が明記されていた。
「ジャズダンス 講師 高林信明」
 廊下の中程にあるフロアーの前で三杉は思わず立ち止まった。
 探している講座と講師の名前だった。
 何故か、胸の軽い鼓動を覚えて慌てて周囲の状況に視線を送った。
 幸い、長い廊下の何処にも人影は見えなくて、都会の喧騒も届かない高いビルの中の静まり返った静寂だけが辺りに満ちていた。
 三杉は安堵すると共に、まず最初の目的を達した思いで一度、その前を過ぎるとすぐに踵を返して、今来た方角へ戻り始めた。
 人の眼だけを恐れていた。
 急かれる思いで再びエレベーターの前に立つと、急いで下りへのボタンを押して、眼の前のドアが開かれるのを待った。
 下りのエレベータ―には乗り込む人もなかった。
 総てが喧騒に満ちた都会の真ん中にいるとは思えない静けさに満ちた空気が三杉の気持ちを救ってくれた。
 三杉は高速で下るエレベーターの中で一人、物思いに耽った。
 高林信明、そう書かれた名前の講師が、以前、高速道路渋滞の中で眼にしたあの男なのだろうか。
 扉の向こうからは音楽の響き一つ聞こえて来なかった。
 三杉は腕時計を見た。 
 間もなく七時になろうとしていた。
 授業は一時間四十分だった。
 あらかじめ調べておいた。
 一階に着くと三杉はそのままエレベーターを降りた。
 あとの時間をどのように待つべきなのか ?
 一度、車庫の車に戻り、そこで時間を潰そうと考えた。
 授業が終わり、帰るとなれば誰もが、今、自分が出て来た大広間を通り、ビルの出口玄関へ向かうだろう。
 そこで多美代の行動を監視しようと思った。
 しかし、すぐに一つの不安に捉われた。
 この巨大な建物には出入口が正面、あの玄関一つだけとは限らないのでは、という思いが浮んだ。当然、裏の出入り口や横の出入り口があるに違いない。そして、男と車に乗るとすれば、裏出入り口から車庫に通じる道を通るという事も考えられる。
 この建物構造に詳しくない三杉に取っては総てが、想像裡にしか過ぎなかったが、心の裡は迷路に陥っていた。
 それでも三杉はいったん車に戻ると運転席のシートに体を埋めた。
 緊張感のほどける思いで、一挙に溢れ出る疲労感に襲われた。
 深い溜め息と共に疲れに身を委ねたまま眼を閉じた。
 総てが虚しく思えた。
 いったい、俺はこんな所で何をやっているのだろう ?
 自分がまるで遠い他の人間のように思えた。
 七時半になると三杉は気を取り直して再び車を出て、ビルの正面玄関へ向かった。
 玄関を出て、ビルの建つ敷地内の出入り口、右側、少し離れた場所に大きなモビールが設えられてあるのを改めて眼にすると、その陰に身を隠す事を思い付いた。
 正面玄関から出て来る人々が一目で確認出来た。
 八時を過ぎる頃になると、次々に人々が玄関口に姿を現し始めた。
 三杉はモビールの影に身を隠したまま、その人々の中に多美代の姿を探した。
 見過ごす程多勢の人の数ではなかった。
 それでも、多美代の姿を見付ける事は出来なかった。
 ほぼ、二十分が過ぎていた。
 玄関口を出て来る人の姿もまばらになり、三杉が諦めの気持ちを抱き始めた頃になってその場を離れようとしたその時、突然、モスグリーンの、三杉には見覚えのないスーツに身を包んで、黒のハンドバッグを手に、黒のハイヒールを履いた多美代の姿が三杉の眼を捉えて来た。
 三杉は息を呑むのと同時に、慌てて再び身を隠すと、多美代の姿を追い続けた。
 多美代は一人だった。やや、俯き加減に、まるで何かに思い悩むかのようにうち沈んだ表情で、三杉から離れた七、八メートルの場所を歩いて、敷地内の出口に向かっていた。その姿には、ジャズダンス教室で、溌溂として体を動かし、活気に満ちた様子の姿を想像する事は出来なかった。
 三杉は思わぬ妻のそんな姿に、激しい衝撃を覚えて、胸のえぐられるな痛みを感じ取っていた。孤独感さえが漂うような姿だった。
 三杉はただ、後ろ姿を見せて遠ざかって行く妻のそんな姿を見送る事しか出来なかった。
 そして、三杉がその場を離れて自分の車に戻ろうとした時、ちょうど建物の敷地の門を出ようとした多美代を迎えるかのように不意に、一人の男が姿を現した。
 男はそのまま多美代に近付いた。
 多美代は男の姿を確認すると微笑みと共に迎えた。
 煌々とビルの建つ夜景を照らし出す明かりの中で、その男の姿ははっきりと確認出来た。
 紛れもなく男は、一度、車の中で眼にしたあの男だった。
 二人はそのまま、新宿駅のある方角へ肩を並べて歩いて行った。
 三杉は、一度は多美代の何処となく憂いを帯びた表情の、その様子に救われるような慰めを見い出していた気持ちが、徹底的に打ち砕かれた思いに圧し潰されていた。怒りの気持ちさえもが湧いて来なかった。
 三杉は自分でも何処をどう歩いたのかの認識もないままに車に戻ると、その座席に体を埋めたまま、動く事も出来ないでいた。
 自分の家へ帰るのが怖かった。多美代が何時、帰って来るのか、それを知るのが怖かった。妻が何時、自宅に帰ったのか、それが分からないままに、自宅に帰ってくれていればいいと思った。男と妻が過ごした時間の長さを知るのに耐えられない気がした。
 
 そんな事があった後にも三杉は、多美代を責めたり、咎めだてする事はなかった。
 三杉には敗北感だけがあった。
 絶望的とも言える諦念の中で三杉は、人生の目標を失い、男性としての能力も失った自分を惨めに認識した。あらゆるものが三杉には遠いものに思えた。屍としか言えないような自分の人生だった。そんな中で、真性の死を恐れながら生きる事より外に出来ない自分だけが確かな存在に思えた。



          三



 四年ぶりで三杉が狩猟へ行く気になった誘いの電話があったのは、狩猟解禁日が過ぎて間もない夜の事であった。





          ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





         桂蓮様

         お忙しい中 何時もお眼をお通し戴き
         有難う御座います
          今回 旧作 いじめなのか 拒絶なのか を
         拝見させて戴きました 英文はありませんでしたが 
         前にも拝見した記憶があります
         今回は英文比べ読みとはまた違った
         文章の中身自体に興味を読み取りました
         何時の時代にも 何処にも いじめ 悪口の好きな
         人間はいるものです 仏教を修める人の中にも と
         ありますが 畢竟 そんな人間は袈裟を纏った俗物にしか
         過ぎません あまり気になさらない方がよろしいのでは
          世の中 多士済済 隠れた場所に聖者が居ると思えば
         世の中に名の通った人間の中にも 屑に等しい人間が
         数多く居ます それこそ そんな時には 禅の立場
         人は人 我は我 どうぞ御勝手に と行きましょう
          余り 地位や名声 所属に気を取られずに その人間
         本質を見つめてゆこうではありませんか 
          またの新作 お待ちしております
         でも 御無理のないよう のんびり ゆっくり
         お願いします
           何時も応援 有難う御座います



          takeziisa様


          有難う御座います
           今回もいろいろ教えられ事の多いブログでした
          ガビチョウ初見 名前は馴染んではいました
          キンポウゲが馬の足型
          ハハコグサ 屋上にも庭にもよく見るありふれた草が 
          聞きなれた名だとは 知らずにいました
          昼に咲く月見草とは・・・
           君子欄 わが家でも満開 自然にこぼれ落ちた種から生えた       
          ものがあちこち咲き誇っています 一種 絢爛です
          わが家では今年 例年になく羽衣ジャスミンが満開
          長持ちしていまして その香りを朝 起きる毎に満喫しています  
          夜の闇に漂って来る香りもいいものです
           川柳 笑い ほのぼの 心の和み 楽しませて
          戴きました
           コンドルは飛んでいく
          この楽器の音がいいですね 大好きです
          広大な山岳風景が自ずと頭の中に浮かんで来ます
           様々な花々 山岳風景 美しい写真 満喫 楽しませて
          戴きました
          有難う御座いました
       

遺す言葉(394) 小説 引き金(3) 他 神よ

2022-05-01 13:25:39 | つぶやき
          神よ(2009年2月20日作)で
            (この文章は2014年7月13日 2回目に
            掲載したものですが 現在 不穏な空気が
            充満している世界の情勢を思い 再度 掲載する
            事にしました) 


 神よ 哀れなわたしに あなたのお力をお貸し下さい 
 神よ あなたのお力で この苦しみからお救い下さい
 神よ 全能の神よ われわれ人類のすべてに幸福と平和を
 神よ 生きとし生けるものすべてを あなたの御光りで御包み下さい

 もし 神というものがいるのなら
 神はなんと不公平なのか
 もし 神というものがいるのなら
 なぜ神は 一人を愛し 一人を苦しめるのか
 もし 神というものがいるのなら
 なぜ神は 一人に幸福を与えて 一人を不幸に陥れるのか
 もし 神というものがいるのなら
 なぜ神は この苦難に満ちた時代に
 否 いつの時代に於いても 苦難に満ちたその時 その場所で
 沈黙を続けているのか

 神という存在が もし 居るとしたら
  神はなんの為に存在しているのか
 人を救う為にか
 あるいは 差別をする為にか
 神が目差しているものは いったい なんなのか
 神が存在する事にどんな意味があるのか
 われわれには知り得ない深い叡智が
 その存在の裏には隠されているのか

 もし 神の存在に深い叡智が隠されているとしたら
 隠されたその叡智の扉はいつ開かれるのか
 神よ 明日では遅い 今この時 この瞬間こそが大切なのだ
 この時 この瞬間に 何人 何十人 何百人 何千人 
 あるいは 何万何十万もの人間が理不尽に苦しみながら
 苦悩の中で命を落としてゆく
 神よ 命こそが この世界では至上のものではないのか
 命こそが 人々が生きるこの世界に於いて 最も尊ばれ 総ての価値の
 基準となるべきものではないのか

 神よ もし 神というものがこの世に存在するのなら
 その神は 絶え間なく勃発する人間同士の醜い争いや
 その果ての 人間社会の悲惨に眼を向ける事は出来ないのか
 その解決に 力を貸す事は出来ないのか
 それとも神は われわれへの見せしめの為に
 一人の人間の不幸を 黙って見過ごしているとでも言うのだろうか
 万人の幸福の為には 一人の人間の不幸が必要だとでも言うのだろうか
 そして神よ 人類全体への見せしめの為に犠牲になった一人の人間の
 不幸の報われる日はあるのか

 神よ もし 神といものがこの世に存在するのなら
 その神は この世界の悲惨 人間社会に満ちた愚行を
 どのように見ているのか
 今こそ 信仰薄い一人の人間に あなたの真実を お伝え下さい
 神よ われわれ人間には 今生きているこの時こそが大切なのだ
 今この時にこそ あなたのお力が必要なのだ 僅かばかりのものでいい
 苦悩のない 平穏な生活を恵んで欲しいのだ
 願わくば 全知全能の神よ 生きとし生けるものすべてに平等に
 あなたの御力と御光りを あの世ではない この世で御恵み下さい


    " 何日か前にロシア正教会の復活祭とかなんとかの
     祭典が行われたとテレビが報じていた その中で華やかに
     着飾った祭司だかなんだかぞろぞろと群れて 如何にも神妙
     厳かな様子で練り歩いていた 司祭達は世界の平和の為に
     とかなんとか口にしていた
      これが噴飯もの お笑いでなくて何であろう
     世界の平和を乱し 人々の生活を混乱に陥れている張本人は
     司祭様たちよ
     あなた方のお膝元にいるのだ よくもぬけぬけと
     世界の平和を祈るーーなどと言えたものだ 
      この現実からみても 教会 宗教などというものの 如何に
     誤魔化しの世界であるかという事が分かる    "     




          ーーーーーーーーーーーーーーーーー



          引き金(3)



 三杉は多美代への自分でも思ってもみなかった、胸の裡に沸き起こる疑惑に苦悩の日々を送った。
 三杉にはだが、多美代を問い詰めるだけの勇気はなかった。多美代の変身の因が自分自身にある事を三杉は理解していた。その上、多美代を問い詰めて事実を確認する事への恐れもあった。
 三杉にはただ、苦悩に悶々としながら、自分の妻をそんなにまで変える事の出来る男への、心を焼かれるような嫉妬の感情を深める事しか出来なかった。
 そんな日々の中でのある夜の事であった。三杉は帰宅途中の高速道路で渋滞に巻き込まれた。大型トラックの横転事故の為に百メートルを走るのに十分も要するという状態だった。平常通りに走っていればとっくに自宅に着いている時間になっていた。煙草も禁じられている三杉は、待ち時間による思わぬ疲労感に苛々しながら、車窓のガラス越しにあっちを見たり、こっちを見たりして疲労感と退屈を紛らしていた。
 その時、つと、一台の車が三杉の車の横へにじり寄るように近付き、そのまま、また、ゆっくりと動いて車両後部を見せて行った。その間、二分か三分にしか過ぎなかった 。
 しかし、その時、三杉の眼ははっきりと、一人の若い男の隣り、助手席に座って居て、何かをその男に話し掛けている妻の多美代の姿を、高速道路を照らす明かりの中で捉えていた。
 三杉は思わぬ光景に息を呑むのと同時に、途端に沸き起こる激しい胸の締め付けられるような痛みを覚えて、思わず握ったハンドルに力を込めるとそこに額を押し付け、痛みに耐えていた。
 二人を乗せた車はその間、少しずつ三杉の車から離れていった。
  三杉はだが、暫くは車を動かす事も出来ないでいた。
 渋滞が幸いした。
 三杉は暫くたってから、ようやく体を起こすと急いで上着の内ポットに忍ばせてある舌下錠を取り出し、口に含んだ。
 三杉が眼にした妻を乗せた車はその間に見えなくなっていた。
 その夜、三杉がようやく自宅に辿り着いた時には、何時もなら三十分程で帰れる道程を一時間半もの時間を要していた。
 多美代は既に帰っていた。
「随分、遅かったのね」
 居間に居て三杉の姿を眼にした多美代は言った。
「うん」
 とだけ三杉は言った。
「わたしも、少しちょっと前に帰ったところなの。道が渋滞で混雑していて」
 多美代は言った。
 普段と変わらなかった。あの僅かな時間の出来事を三杉が眼にしていなければ何事も変わらなかった。
「お風呂にしますか」
 光枝が三杉に聞いた。
「いや、風呂はいい」
 三杉は答えると、多美代と顔を合わせるのを避けるように、怒りの感情を押し殺してすぐに二階の自分の部屋へ向かった。
 顔面が引きつり、蒼白になっているのが自分でも判断出来た。多美代にその顔を見せたくなかった。
 部屋へ入ると三杉はベッドの上に鞄を放り出し、そのまま腰を下ろして暫くはじっと動かないままでいた。
 息苦しかった。何時また心臓の痛みが襲ってくるのか、不安に怯えた。
 眼をつぶり、苦痛に耐えるその頭の中に浮かんで来るのは、つい先程眼にした、妻と若い男の姿だった。
 狭い車の中で肩を並べ、言葉を交わし合う姿は、日常、ありふれた行為に違いなかった。妻が車でカルチャーセンターの若い男性講師に帰りついでに送って貰う、そこに、取り立てて目くじらをたてる要素はないように思えた。それは三杉にも理解出来た。
 しかし、それでいながらなお、三杉の胸の中には波立つものがあった。
 それがなんであるのか、理屈を超えた勘と言うより外なかった。
 三杉は今、多美代の胸の中で自分はどれ程の意味を持っているのだろうか、と自身を顧みざるを得なかった。もし、車の中に居たあの男が多美代に嘗ての生気を取り戻させた張本人だったとしたら。・・・・
 三杉はあの若い男に嫉妬と嫌悪の感情を抱いた。
 屍と化したような今の自分という存在。総ての行動に付き纏う制約。今の自分に生きている価値はあるのか ?
 三杉は自分の存在への絶望感と共に、果たしてあの男が自分の妻に生気を吹き込み、取り戻させた張本人なのだろうか、と心の奥にくすぶる嫉妬の感情と共に、知ってどうなるものでもない事への興味に突き動かされていた。
 偶然、車の中で眼にした若い男と妻の寄り添う姿への悶々とした思いは、日が経ってもなお、消えなかった。
 三杉はとうとう決心すると、二人を見た夜から一カ月半ほど経ったある夜、新宿にあるカルチャーセンターにへ車を走らせた。





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          takeziisan様

          コメント 有難う御座います
          お忙しい中 どうぞお気になさらぬようお願いします
          何時もお励まし戴き わたくしの方こそ御礼申し上げます
           今回も美しい写真の数々 楽しませて戴きました
           雑木林公園のある環境 羨ましい限りです
           ビリー ヴォーン 灰田勝彦 水島道太郎 それに
          「地獄の顔」懐かしいです 地獄の顔 この映画の
           広告が中学校のすぐそばにあった小さな雑貨店の
          店先に掛かっていたのを今でもはっきりと覚えています
          水島道太郎の名前もその広告の中で知りました
          映画そのものは後に見ましたが
           昔の女優さんの写真 懐かしく眼を通しました
          何人か 眼にした人達も居て 感慨ひとしおでした
           今回も野菜作りの現場 楽しく拝見しました
          それにしてもジャガイモ タマネギ 例年なら安いものが
          今年は高いです
           フキ わが家の庭でも大きくなってきました
          連休中には採るつもりでいます
           買い物も足トレ 情景を思い浮かべ 自ずと   
          微笑んでいました 歳を重ねると日々の一瞬一瞬が
          貴重なものに思えて来ます
           古い写真の数々 貴重な想い出ですね それにしても
          良く旅をしていますね 旅は年老いて来ると貴重な
          財産になります わたくしなども あちこち 数は少ないですが
          旅をした想い出があって テレビなどでその地方の画を
          見ると懐かしく 感慨を覚えます
           今回も様々な記事 お写真 堪能させて戴きました
           有難う御座いました



          桂蓮様

          有難う御座います
           無理をなさらないように 失礼ですが
          年齢と共に体力の衰えは顕著になり 総ての事の
          回復が遅くなります 慢性になっては怖いので
          くれぐれも御用心を
           新作 拝見しました
          春になれば花が咲き 秋になれば葉が落ちる
          悟りの世界です 他人は他人 自分は自分
          坐禅はそんな世界を会得するための修行
          その坐禅で得た経験を日常に活かさなければ
          坐禅をした意味がない 白隠禅師は言っています
          それが日常に生かされないならば 坐禅をしても
          古狸が穴の中で居眠りをしているようなものだと
           禅 悟りは日常のものです 特別 変わった世界が
          ある訳ではありません 道元も一休禅師も言っています
           経を読んではならない 坐禅しろ
           掃除をしてはならない 坐禅しろ            
           商いをするな 坐禅しろ
           馬に乗るな 坐禅しろ
           畑を耕すな 坐禅しろ
          これは坐禅が特別なものではなく 日常の中 人が
          生きる上に於いて常に無の心を大切にして
          物事に捉われる事なく 今この時 眼の前の総てに
          その時 その時の最善を尽くして生きよ と言う事です
          商いをする時にはその商いに最善を尽くす 畑を耕す  
          時には その仕事に最善を尽くす キョロキョロ
          よそ見をするな という事です
           自分の事は他人には分からない
           他人の事は他人にしか分からない
          無駄な詮索などするなと言う事です
          新作 良い御文章でした
          辞書片手の英文との合わせ読みが楽しく 
          旧作でも飽きないのです
           誤字 御指摘 有難う御座いました
          訂正しておきました
           細心の注意を払っているつもりですが 人間
          絶対と言う事はありません 自戒です
            何時も有難う御座います
          くれぐれもお体には気を付けて下さい