遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(342) 小説 蜃気楼(完) 他 同窓会ー切羽詰まって

2021-04-25 12:50:06 | つぶやき
          同窓会ー切羽詰まって(2012.11.8日作)

 
 あの人が亡くなった
 あの人は体調不良で
 ベッドの上の生活

 わたしの連れ合いが亡くなった
 あの人の連れ合いも亡くなった

 七十五歳 後期高齢者
 昭和二十九年三月
 千葉県匝瑳郡白浜村中学校卒業生
 同窓会 話題はいつしか
 暗い色彩に彩られる
 かつては
 数十名を越えた出席者も
 今では十数名
 年毎 回毎に増す
 淋しさ 出席者の減少
 顔を合わせ 言葉を交わせば
 遠く過ぎ去った日々
 今につながる 経て来た
 長い長い歳月も
 たちどころに消え失せ
 あの頃 あの日々  
 少年少女時代が舞い戻り
 時を忘れる楽しさ
 至福の時間が五感を満たす ひと時

 しかし それも束の間
 夢の時間が過ぎれば 別れの時間
 ふたたび 老いの現実 今が立ち戻り
 忍び寄る暗鬱 暗い影が
 身辺を包む 二年に一度の同窓会
 次回会う時 その時には
 どんな現実 どんな影 どんな変化が
 日々 忍び寄る
 老いをかこつ身に
 降り掛かって来ているのか ?
 
 時の 一瞬 一瞬 日常
 生活のあれこれ総てに
 かつての輝き 若かりし
 あの頃 あの日々の
 力強さ 堅固さなどは
 望むべくもなく
 ひ弱な頼り無さだけが 日ごと増し 
 色濃く漂う中
 同窓会も年に一度の開催話しが
 話題に上る

 切羽詰った現実
 眼の前に見えて来る
 人の世の命の終わりの影が
 年老いた身を
 生き急がせる



          ----------------




          蜃気楼(完)


 二人か三人の子供達と夫に囲まれ 台所に入り、煮物の味付けをしている自分の姿が明子には想像出来なかった。
 台所仕事が嫌いだというのではなかった。得意な料理も幾つかあって、友達を自宅に招いた時などには、何時間もかけてその料理を作った。そして、それはそれで幸せな時間であった。ただ、明子にはどうしても妻として、母としての自分が想像出来なかった。子供も夫も、自分にとっては煩わしいだけの付属物としか思えなかった。仕事の場に立つて、キリッとした姿勢で仕事に打ち込んでいる、そんな自分だけが真実の自分であるとしか思えなかった。ーーその心に従って今日までの自分を生きて来た。その自信に揺らぎはなかった。しかも、その成果は充分に手にしていた。
 それでいて、いったい何故 ? 何が不満だと言うのだろう・・・・ ?
 或いは、柚木正信の姿をチラリと見て、今夜はその思いが倍加されているのだろうか? 満たされぬ愛、対象のない愛、一途に愛を傾ける事の出来る相手のいない寂しさがこんなにも今の自分の心を荒ませているのだろうか ? 
 だが、柚木正信はかつて、自分からその愛を拒否した相手だった。今更、その相手に求めるものはないはずだった。今の明子には望んで手に出来ないものはないのだ。
 いったいわたしは、何を追い求めているのだろう ? 
 わたしが追い求めているものは単なる、幻にしか過ぎないものなのだろうか ? やり場の無いこの心の淋しさ、いったいこれは、何なんだろう ?
 明子はふと時間が気になって自分の腕時計に眼を落とした。
 間もなく十一時半になるところだった。
 十一時半はこの店が看板の灯を落とす時間だった。
 店から追い立てられる前に、柚木に電話を掛けてみようか ?
 なぜか、そんな気になった。理由はなかった。酔いによる気紛れ心に違いなかった。
 柚木は多分、結婚しているだろう。子供もいるに違いない。今日、眼にしたあの姿から想像して、その生活は幸せなものに違いない。
 電話器はカウンターの右隅に置かれていた。過去にも何度か使った事のある電話だった。ホテルのカウンターの電話番号は覚えていた。
 電話はすぐに繋がった。
「わたくし、先程までお世話になっていた、デザイナーの五島ですけど、そちらにMデパートの柚木さんていう方がお泊りだと思うんですけど、お電話繋いで戴けません ?」
 いたずら電話だと思われる事を恐れて明子は名乗って言った。
 馴染みのフロントでは疑う事もなく明子の申し入れを受けた。
「少々、お待ち下さいませ」 
 電話は待つ間もなく繋がった。
「はい、柚木です」
 訝るような響きを含んだ声が聞こえて来た。
「夜分、遅くに御免なさい。御迷惑かと思ったんですけど、先程、ホテルの前で偶然お見かけしたものですから」
 酔っていたが、明子はしっかりした口調で言う事が出来た。
「失礼ですが、どちら様ですか」
 その口調は乾いていた。拒否するような色調さえ込められていた。
 一瞬、明子はためらった。それでも気を張って言った。
「五島明子です」
 柚木は答えなかった。
 その沈黙が何を意味するのか、明子には分からなかった。それでも明子は酔いの勢いに任せてかまわず言っていた。
「もう、お寝みになっていたんですか」
「いえ」と今度は柚木の声が聞こえて来た。
「明日、会議があるので、その書類の整理をしていたところなんです」
 柚木は言った。
「御出張でいらっしゃったんですか ?」
 明子は先程ふと思った事を口にした。
「そうです」
「やはり今も札幌で ?」
「そうです」
 柚木の声は堅かった。
「そちらで御結婚なさったの ?」
 明子は素直に聞いた。
「ええ、まあ」
 柚木の声は曖昧だった。
「おめでとう御座います、って言っていいのかしら ?」
 皮肉ではなく言った。
「有難う御座います」
 柚木の声は相変わらず醒めていた。
「いつまでこちらにいらっしゃるんですか ?」
 明子はその声の調子になんとなく他人行儀な思いを抱いて言った。
「明日、支店長会議が終わり次第帰ります」
 柚木はやはり同じように言った。
「じゃあ、今は支店長さん ?」
「ええ、まあ、そういう事になってます」
「それは重ね重ねにおめでとう御座います」
 明子は言った。
「有難う御座います」
 柚木はそう言ってから、
「あなたも大分、有名になって」
 と、明子に祝福の言葉を返すように言った。
「ええ、わたしもどうにかやっています」
「時々、クイズ番組なども見ていますよ」
 柚木はようやく打ち解けたような口調で言った。
「あら、あの番組、そちらにもいってるんですか ?」
「ええ、もう一本のトーク番組も見ています」
「そうですか。見て下さって有難う御座います。嬉しわ」
「あなたも望みが叶って本望ですね」
 柚木は皮肉ではなく言った。
「それ、皮肉 ?」
 だが明子は少しの親しみに媚を含め、冗談めかして言った。何故だか、柚木のその言葉が軽い痛みを伴って明子の胸の内に刺さって来た。
「いえ、いえ、そんな事はありませんよ」
 柚木もようやく幾分かのくつろいだ口調になっていた。
「先程、ホテルの前でお見かけしたの。お気付きにならなかったでしょう ?」 
 明子は柚木のくつろいだ口調に応えるように、自分もやはりくつろぎの色を滲ませて悪戯っぽく言った。
「いいえ、知っていました。タクシーの中に居る時、あなたがホテルの前に立っているのが見えました。すぐにあなただって気が付きました」
 明子は息を呑んだ。
 あの時、柚木はタクシーを降りると明子の方へは視線を移すこともなく、フロントを目差して歩いて行った。
 既にあの時柚木は、明子の存在に気付いていたのだ。
 明子は激しいしっぺ返しを受けたような思いで呆然とした。
 じゃあ、なぜ一言、声を掛けてくれなかったの か ?
 柚木に対して沸き起こる微かな憎しみの感情を意識した。
 それでも明子は務めて冷静を保ち冗談めかして言った。
「まあ、意地悪ね。知っていて、なぜ声を掛けてくれなかったの ?」
 それに答えて柚木は言った。
「あなたはもう有名人だから、ぼくなんかは近寄り難いですよ」
 柚木がその言葉をどんな思いで言ったのか、明子には分からなかったが、何故か傷付く思いがした。
「偉くなると随分、皮肉がきつくなるのね」
 思わず冗談めかして厭味を言っていた。
「とんでもない、皮肉だなんて。本当ですよ」
 柚木の言葉には幾分くだけた口調の笑いが含まれていた。
「柚木さん、今はお幸せなんでしょう」
 今度は明子が少しの皮肉を滲ませて言った。
「ええ、なんとか」
 柚木はだが、明子の言葉を素直に受け取っていた。
「お子さんは何人いらっしゃるの ?」
 明子は聞いた。
「上の男の子が十歳で、下の女の子が八歳の二人です」
「奥様は札幌の方 ?」
「ええ、そうです」
「羨ましいわ」
「あなたはまだ、結婚しないんですか ?」
「まだ独りよ。でも、もう貰ってくれる人なんかいないわ」
「そんな事はありませんよ。あなたみたいに美人で有名なら、望みどおりでしよう」
「そうならいいんだけど」
 そう言って明子は何故か、途端に胸が詰まって泣きそうになった。懸命にそれを堪えて、
「柚木さん、今でもわたしの事を怒っていらっしゃる ?」
 と言った。
「何故です ?」
 柚木は明子の言った事を理解しかねるように言った。
「だって、あちらへ発つ時、柚木さん、電話を下さらなかったわ。わたし、待っていたんですけど」
 明子は半分、抗議の思いを込めて言った。
「ああ、あの時は何かと忙しくて、つい、忘れてしまいました。失礼しました」
 柚木は言ったが、その言葉には過去を懐かしむ響きはなかった。
 明子はまたしても、その感情を見せない柚木の言葉遣いに傷付く思いで、それと共に、これまで抑え付けていた胸の内の晴れないものを一気に解き放つように言っていた。
「今夜、これからお会い出来ません ? わたし今、銀座七丁目のバーにいるんですけど、そんな遠くないからすぐに伺いますから ?」
「えっ、今から ? いえ、それはちょっと無理ですね。今、明日の会議のための書類を整理しているところなので」
 柚木は突き放すように言った。
 だが、酔いに任せた明子の感情はなおも昂ぶりをみせていた。
「お忙しいのならわたし、お手代するわ」
 明子は言った。すでに半分、喧嘩腰になっていた。
「酔っていますね」
 柚木はその気配には気付いたようで言った。
「酔ってなんかいないわ」
 明子は強い口調で言った。続けて、
「ただ、あなたの姿を見てちょっと懐かしくなったものだから電話をしただけよ。もし、今夜が駄目なら明日、会議が終わった後でもいいわ。会うって約束して下さる ?」
 と言った。
「時間がないと思いますよ」
 柚木はやはり突き放すように言った。
「逃げているのね」
 明子は言った。
「そんな事はないですよ。ーーだいぶ酔っていますね。もう、家へ帰ってお休みになったらどうです」
 柚木は言った。静かな口調だった。
「酔ってなんかいないわよ。ただ、一人ぼっちの家へなんか帰りたくないから、こうして電話をしているんじゃない」
「お友達は傍にいないんですか」
 柚木は言った。
「いないわよ。ホテルのレストランで食事をして、その後、逃げられちっゃたのよ。だから家庭持ちなんて嫌いよ」
「ぼくも家庭持ちですよ」
 柚木は笑いながら言った。
「家庭持ちを自慢したいほど、奥さんを愛しているのね。そんなに幸せなのね」
 思わず涙声になるのを必死に堪えて明子は言った。
「あなただって幸せでしょう。あなたが望んだ通りにあなたは、あなたの人生を生きているんだから」
 柚木は言った。
「そう思う ? そう思ってくれるのは有り難いけど、だけど、それがちっとも幸せじゃないのよ。昔、そこへ行けば有ると思っていたものが、いざ着いてみたら何もなかった。まるで蜃気楼のように消えてしまっているのよ。ねえ、わたし、これからいったい、どうしたらいいの。どうしたらいいと思う ? わたしには分からないのよ。教えてよ。いったいわたし、これからどうしたらいいの ?」
「もう冗談はいい加減にして、家へ帰ってお休みなさい。だいぶ言葉尻が怪しくなっていますよ」
「あなた、わたしに意見をする気 ? あなたにそんな権利なんてないわよ。そうでしょう。あなたとわたしはなんの関係もないんだから。もし、そう言われて悔しかったらわたしを抱いてみなさいよ、昔みたいに。これからわたし、あなたの部屋へ行くから」
 明子は言った。半分、食って掛かる勢いだった。
「バカな事を言っちゃ駄目ですよ。もう、電話を切りますよ」
 柚木は言った。
「わたしを抱く事なんて出来ないでしょう。奥さんが恐いんでしょう。家庭の幸福を乱されたくないんでしょう。そうに決まってるわ」
 明子は続け様に言った。支離滅裂な言葉を口にしている事は酔いの廻った頭でもぼんやり理解していた
「電話、切りますよ」
 柚木は言った。
「切りなさいよ。早く切りなさいよ。酔っ払い女なんか相手にしていても仕方がないわよ」
 明子は言った。
「どうしたんですか。だいぶ酔ってますね。傍に誰もいないんですか ?」
「誰もいないわよ。もう、このバーも看板だし。ーーわたしが泣いているのが聞こえる ?」
 柚木は答えなかった。受話器の向こうから空白だけが伝わって来た。
「ねえ、わたしが言っている声が聞こえる ? 答えてよ」
 明子は叫ぶように言った。
 その時、電話の切れる音が受話器を通して聞こえて来た。



               完



          ----------------



          蓮蓮様

          コメント 有難う御座います
          無意識の行動にはその人間の
          良い面も悪い面もそのまま出てしまいます
          これは恐い事ですが 物を造ったりする人間に
          於いては 無意識のうちに出来る そう
          なった時にこそ 本物だと言えるのでは
          ないのでしょうか
          「未来の幸せ 過去の思い出」
          再読させて戴きました
          冒頭のお写真 好いですね
          優しそうな御主人様と肩を寄せ合って
          お幸せそうなお姿に嬉しく思いました
          どのような人であれ 人の不幸を見るのは   
          辛いものですが 幸福な様子を見るのは
          見る方にも暖かな思いが伝わって来ます
          日本での写真でしょうか
          人との出会い 大切ですね 良い人との出会いは
          一生の宝物になります そのような宝物を 
          お持ちの桂蓮様はお幸せな方だと思います
          いつもお眼をお通し戴き 有難う御座います 



          takeziisan様

          いつも有難う御座います
          今回もまた 楽しいひと時を
          過ごさせて戴きました
          それにしてもやはり当地から比べると
          豊富な自然を感じます わが家の近く
          ほんの百メートル余りを行った場所には
          大きな江戸川が流れていますが高い堤防で
          向こうを遮られています その代わり
          安全性は堅固に思えますが 堤防に上れば
          見えるのはビル ビルばかりです
          はるか遠方には冬の晴れた日などには
          富士山なども小さく見え 冠雪なども見られます
          あとはスカイツリーがその手前 左側に
          ビル群の上に突出して見えています また反対側
          五十メートル程行きますと大きな防災公園に出て
          桜なども見られますが 所詮 造られたものです
          自然の良さは感じられません
          日記 貴重な記録です 是非 続けて記事に
          して戴けたらと思います 拝読していて
          そうだった と頷く事ばかりです
          川柳 いいですね 皮肉も軽い笑いも
          短い分の中にさり気なく詰まっていて心を刺し
          長文には無い魅力です
          雷鳥 感動的です 実際にお撮りになったのですよね
          羨ましい限りです
          素人野菜つくり 元気の源ではないですか
          スーパーの弁当で夕食を間に合わす
          実感が伝わって来て なんだが拝見しているだけで
          楽しくなって来ます
          どうぞこれからも奥様共々 頑張って下さい
           有難う御座いました
          
         
          


          

 
 
 
 








 
 
 

 
 

遺す言葉(341) 小説 蜃気楼(8) 他 人間の幸福 他

2021-04-18 11:52:52 | つぶやき
          人間の幸福(2021.4.14日作)

 人間の幸福は
 地位 名声 金銭の豊富さ 等で 
 得られるものではない
 その奥にもう一つ 必須のものがある
 何か ?
 人と人との繋がり 心の触れ合い
 心の触れ合いのない人間は
 どんなに地位 名声 豊富な金銭を得ていても
 「虚無」の世界 
 核 芯 のない世界を生きているに等しい
 何故なら 人は
 人の存在の中でしか生きられない存在
 だからだ


          本物

 意識して あれをしよう これをしよう
 そういう境地にいる限り それは まだ
 本物とは言えない 知識からの借り物
 その人の本質のもの とは言えない
 作為のないところ 無意識的に出て来る行為
 それこそが その人の本性に基づいた
 本物の行為 行動 その人の真実
 真性を表わすものだ
 頭で考えるな
 身体で覚えろ



         作為



 無作の作
 作為のない
 自身の身の内から出る行為には
 その人の真実 
 本質が含まれる



          -----------------



          蜃気楼(8)


「何か、お飲みになりますか ?」
「ラムサワーでいいわ」
「いつもの通りに ?」
「ええ、甘口でね」
 なぜか、グラスを口に運ぶピッチが速かった。
 明子自身はその事に気付いていなかった。
 気が付いた時には、カウンターの奥のグラスを並べた棚がゆがんで見えた。
 最後に一本残ったロングサイズのポールモールが、なかなか袋から取り出せなかった。
「ああ、わたし、なんだか酔っちゃったみたい」
 鉛を貼り付けたように重く感じられる舌で、それでも自分をちゃんと見せようとして明子は言った。
「今夜はだいぶ、お飲みになりましたよ」
 たのちゃんも驚いた風で、言った。
「バカねえ。そうと知っていたら、なぜ、止めてくれなかったのよ。あんたが介抱してくれる訳でもないのに」
 明子はそれでも冗談を言う余裕があった。
「すいません。あまり気分が良さそうだったので」
 たのちゃんは笑って言った。
「やけ酒よ、やけ酒」
 そう言うと本当に悲しくなって来て、泣き出しそうになり、懸命に堪えた。
 眼の前にはまだ、三分の一程の量が残っているカクテルグラスがあった。
 これ以上飲むと嘔吐(もど)してしまいそうな気がして、明子は手を出さなかった。
 ようやく煙草に火を付けて、言った。
「氷を入れて冷たくしたお冷をちょうだい」
「はい、分かりました」
 それから後の事は記憶がなかった。多分、カウンターに寄りかかったまま、うつらうつらしていたのに違いなかった。気が付いた時には、透明なグラスの中で氷が溶けて水だけになっていた。
 灰皿の縁に置いた煙草が三分の二程残って消えていた。
 カウンターには、明子のほかに二人連れの男女の客がいるだけだった。
 明子がキョロキョロしてい姿に気付いてたのちゃんが言った。
「どうですか。なんともありませんか ?」
「わたし、眠っちゃったのかしら ?」
「ええ、ちょっとの時間ですけど」
「知らなかったわ。今、なん時 ?」
「十一時二十分になるところです」
 たのちゃんは何処かにある時計を見たのかすぐにそう言った。
「ああ、あ。すっかり氷が溶けちゃって」
 明子は氷の影もない水だけのグラスを手に取った。
「新しいのに取り替えます」
 たのちゃんは慌てて言った。
「いい、いい。これで沢山」
 明子はグラスの水を一気に呑んでから言った。
「煙草をちょうだい」
「セブンスターだけになっちゃったんですけど」
「いいわ。なんでも」
 どれ程の時間、眠っていたのか分からなかった。
 それでも眠ったせいか、気分は幾分、落ち着きを取り戻していて爽快感さえあった。
 たのちゃんが持って来たセブンスターの封を切って一本抜き取ると唇に運んだ。
 たのちゃんがマッチをすって火を付けてくれた。
 先程より、大分良くなった気分と共に明子はゆっくりと煙りを吐き出し、吹かした。もう、呑みたくはなかったが、なんとなく、カウンターを離れる気にはなれなかった。ここからはさほど遠くはない赤坂のマンションの自宅へ帰る気になれなかった。このバーのカウンターに向かって腰を落ち着け、煙草を吹かしている、それだけで気持ちが安らいだ。ーーここには確実に人の息遣いがあって、それが伝わって来る。
 一人だけの部屋へ帰って孤独と顔を付き合わせる事が明子には怖かった。
 自分と係わりのない人間であっても、人の中に居れば気持ちが落ち着いた。
 いつからこうなってしまったのだろう ?
 いつからか明子は、夜が更けてから自分の部屋へ帰るのが怖い人間の一人になっていた。赤坂にあるマンションはいわゆる臆ションと呼ばれる建物で、一人の住まいとしては贅沢過ぎるほど贅沢に、広く、豪華に造られていた。その上、家具は明子が凝りに凝ってどれも、一流と言われるブランド品ばかりが揃えられていた。デザイナーとして認知されてから十年に近い歳月を過ごして来て、友人、知人には、著名人が多かった。俳優、テレビタレント、作家やジャーナリスト、歌手など、数え上げればたちどころに十指に余った。六本木、原宿、新宿、銀座の四ヶ所にブティックを持ち、そこで扱うオリジナル商品は指輪、イヤリングなどの小物にいたるまでも評価は高かった。更に、週二本のレギュラーテレビ番組を持ち、名前も顔も売れていた。スケジュール表は黒や赤の文字で隙間がない程に埋め尽くされていた。不足に思う事は何もなかった。望めば手に出来ないものはない、そういった境遇に近い場所にいた。そしてそれは、明子がかつて、滝川裕子の下で使い走りのような仕事をしながら、デザイナーを目指していた頃から夢に見ていた世界だった。ーー今、明子はその夢を手にしていた。殊にここ二、三年は仕事上では最も充実していて、それなりの成果も手にして来ていたのだ。いったい、それなのに何故 ?
 明子には自分自身の心の裡が分からなかった。暗い夜のつむじ風のように心の中を吹き抜けてゆく、この寒々とした得体の知れないもの・・・・華やかな人々に囲まれたパーティーの席や、バーのカウンターではしゃいでいる瞬間に、ふと、心の隅に顔を覗かせるこのうそ寒さ。ーーそれは日を追い、年を重ねるに従って次第次第に深まりを増して来るようだった。今では明子はそのものが見えると、慌てて顔をそむけて、華やかな現実に身を置いた自分だけを見詰めるようにしていた。いつだったか、その執拗な心を侵食して来る暗いものから逃れるために、変装したスター歌手とラブホテルの門をくぐった事もあった。作家や俳優、テレビタレント、などとも何度かベッドを共にした。近頃ではその節度のなさから、自分が彼等の間でどのように見られているのか、それを恐れるようにさえなっていた。幸いまだ、露骨な悪評はたっていないようだったが。
 だが、近頃の明子は、そんな事に気を使い、恐れる事にも疲れて来ていた。このまま自分が何処へゆくのか ? 先の見えない不安の中で明子は、自分が世間で見られているような成功者ではなくて、惨めな敗北者の一人にしか過ぎない人間のように思え来てならなかった。このささくれ立った心の荒み。いったい、それは何処から来るのか・・・・ ?
  答えが見い出せなかった。ベッドの上で交わす愛だけでは満たされない何か ?
 それはいったい、なんなのか ?
 家庭の温もり ?
 人と人との繋がり合い ?
 現在明子が持つ、数多くの友人、知人との間の繋がりだけでは不足だと言うのだろうか ? 心の繋がりがないとでも言うのだろうか ?
 そんな事はない。仕事の上で行き詰まれば、良い相談相手になってくれる滝川先生もいる。
 辰野重臣にしても、佐野一枝にしても、信頼出来る友人だ。女優のY ・S。男性作家のM ・O。今は結婚しているが、変装してラブホテルの門をくぐった歌手とは今でも友情は続いている。彼等は誰もが親身になって明子の悩みを聞いてくれ、相談にも乗ってくれる。その意味で明子は、友人に恵まれているとも言えるのだ。それでいていったい、何故 ?
 家庭の温もり ?
 確かに明子は家庭の温もりというものを知らない。故郷の福岡を出て以来、ずっと一人の生活を続けて来た。しかし、それは自分から望んでの事ではなかったのか ? 結婚生活は夢見た事さえなかった。柚木正信との関係の中に於いてさえそうであった。



          ----------------

          桂蓮様

          有難う御座います
          風邪との事 御気をつけ下さいませ
          変な病気が蔓延しています
          くれぐれも御大事に
          それにしても便利な世の中になりました
          こうして遠く離れたアメリカにお住まいの方と
          まるで近所同士のように会話が出来るとは
          その良し悪しは別としましても
          中国嫌い 何処の国に於いてもそこに住む
          人々は悪い人ばかりではないと思いますが
          その国を治める者達が問題ですね
          習近平体制 気を付けなければいけないと思っています
          彼らにしてみれば自分たちが生き残る為の  
          必死な思いの足掻きなのでしょうが
          「常にあるもの無いもの」再読させて戴きました
          面白いです 自分の心は秋なのかも知れない
          秋が終わればまた春も巡って来ます きっとまた
          新たな自分の発見があるのではないでしょうか 
          有難う御座います



          takeziisan様

          有難う御座います
          ブログ 今回も変わらず
          楽しく拝見させて戴きました
          いろいろ懐かしい思い出が甦ります
          わたくし達も窓拭きしました
          田植え休みありました 
          わたくしの方では虫下しではなくて
          検便でした 当時はマッチ箱に入れて
          みんな懐かしくいい思い出です
          キジ 白い花 いいですね
          今 わたくしの庭では羽衣ジャスミンが
          強い香りを放ち 満開です 欄の花々も
          咲いています 確かに最近 花の開花が
          早くなっているようです 温暖化のため
          でしょうか
          それにしても豊かな自然 羨ましいです
          アルバイト プラターズ いい記事でした
          懐かしく 心に沁みました 
          野菜 畑 川柳相変わらず楽しませて
          戴きました
          「グレンミラー物語」当時 見ました
          ジェイムス゛スチューアートだったのですね
          もう一度見てみたいと日頃から思っているのですが
          普段 外出しなくなった現在 テレビ放映を見る
          ぐらいしか方法はありません つい最近
          タイロン パワーとキム ノバックの「愛情物語」を
          懐かしく思いながら見ました
          有難う御座いました
                  
          
 
        
          

 
 

     

遺す言葉(340) 小説 蜃気楼(7)他 巨大怪物国家 中国

2021-04-11 13:42:06 | つぶやき
         巨大怪物国家 中国(2021.4.9日作)

 今 中国で起きている事は ?・・・・
 様々なマスコミを通して見る限り
 中国という国家の背後に かつての 
 「ナチス」の影が見えて来て 仕方がない
 ウィグル族への 弾圧 強制労働
 第二次世界大戦時に於ける
 「ユダヤ」民族の姿が重なり
 見えて来る 「ジェノサイド」
 民族大量虐殺 アメリカ バイデン政権は
 ウィグル問題を そう 断定したという
 その他 海洋に於ける 様々な
 侵略行為 香港 台湾 への圧力
 日本近海 その海域にも しばしば 接近を試みる
 中国船舶 巨大な国力 人力 その背景下
 力の誇示 かつて ナチス ヒトラーの行った行動が
 そのまま 重なって見えて来る
 自身の力の過信 その過信の下 近隣諸国を脅かし
 侵略行為を繰り返す 「ナチス」
 ヒトラーの生き写し 
 ナチス ヒトラー
 中国 習 近平 
 現在 中国の最高指導者 習 近平
 あの 常に 他者の背後 人の
 心の中を探り 窺っているかのように見える
 重く沈んだ暗い眼差し 異様な光りを帯びた
 鋭い眼光の 習 近平 その
 冷静沈着 非情にも見える指導者の下 今 中国は
 かつてのヒトラーが 目差した と同じように 世界の秩序
 その支配を 目差している ? 否 たとえ
 目差していないにしても 自由主義社会
 その国々の間にくさびを打ち込み
 自身の国の主義主張 領域を広げるーーそんな魂胆の
 明らかな姿が 垣間見えて来る 現在 世界は
 トランプ かつてないと思われる程の無能 無謀な
 大統領 その大統領下のアメリカ アメリカが
 急速に力を失い 秩序を失った結果 自由主義
 その国々の間の秩序が乱れ 混迷している
 長引く混迷 乱れる秩序の中 冷静沈着 
 非情な眼差しで常に人々の背後を窺い 人の
 心の中を探っているかのような 習 近平
 習 近平指導の下 中国という巨大怪物国家が
 新たな世界の秩序 かつてのナチス  極悪非道国家が試みた
 世界の掌握 覇権の獲得 それを目差して動いている
 自身の国が持つ 権威主義 その主義で世界を固める 統一する
 そんな意図が 巨大怪物国家 中国 という国の動きの中に
 透けて見えて来る・・・ こう考えるのは
 思い過ごしか ? 或いは
 愚かな人間の妄想か ? 今現在 世界が陥る
 混乱状態 秩序の乱れ 加えての コロナ災厄 
 自身の支配下に 世界を置く 大きな野望 思いを遂げるには 
 絶対的好機 これ以上の 好機 チャンスは ない
 乱れた世界に手を延ばすーーー 何が起きても不思議はない
 おかしくはない 
 非常事態 その接近 差し迫り 
 そう考えるのは やはり 単なる危惧 ? 
 愚かな人間の 思い過ごし ?
 第二次世界大戦 あの悲惨 悲劇
 この時代の中に 再び あの惨事の 起こらない事を 今はただ
 願い 祈るばかりだ 



          -----------------



          蜃気楼(7)

「いや、今日はこれで失礼しましょう。明日、講演で、朝早く発って福岡まで行かなければならないので」
 辰野重臣はそう言ってから、傍らの佐野一枝に言った。
「佐野さん、いらっしゃれば」
「いえ、わたしも、もう失礼します。鎌倉まで帰ると大分、遅くなってしまうので」
 佐野一枝は三十二歳で、月刊ファッション雑誌「モード」の編集長をしていた。
 辰野重臣は四十五歳の現在売れっ子服飾評論家だった。
 この日、明子は二週間程前に行われた春夏もののショーに関する記事を「モード」に載せて貰った礼に、二人を食事に招待していた。明子も既に三十八歳になっていて、デザイナーとしての地位もようやく安定して来ていた。世間では今、最も注目されるデザイナーの一人にも数えられていた。この五年程、明子は精力的に作品を発表して来ていて、佐野一枝も辰野重臣もその度に、好意的な扱いをして来てくれていた。
 三人は肩を並べてロビーを抜けると玄関を出た。
 ホテルの前には三台のタクシーが客待ちをしていた。
「タクシーで一緒に東京駅まで行きましょうか」
 辰野が佐野一枝に声を掛けた。
「そうですね。ーー辰野さんは津田沼でしたっけ ?」
「そう。東京駅から快速電車があるのでちょうどいい」
 先頭のタクシーが三人の前に近付いて来た。
 辰野と佐野一枝が乗り込むとタクシーはそのまま見送る明子を残して走り去った。
 明子は小さく手を振って二人を見送った。
 さて、自分はこれからどうするのか・・・・
 自分一人残された明子には特別の予定もなかった。後は、赤坂にあるマンションの住まいに帰って寝るばかりだった。
 なんとなく、胸の中が虚しかった。奇妙に寂しかった。
 一人で銀座へ出て、行き付けのバーにでも行ってみようか ?
 そう呟いて、足を運ぼうとした時、一台のタクシーが玄関正面前に止まって、すぐにドアが開き、中から一人の男性が降りて来た。
 男性は右手にアタッシェケースを持っていて、何処かの会社の社員のようにも見えたが、既に五十歳にも近い年頃かと思えた。なんとはない品の良さが身のこなしに感じられて、明子の眼を奪ったが、そのまま明子はホテルの前を離れて晴海通りへ向かおうとしとて、ふと、足を止めた。
 男の姿の何かがその時、明子の記憶の中に絡んで来て、思わず振り返っていた。しかし、男性の姿は既にホテルの中に消えていた。と同時に明子はその時、咄嗟に、直感のままに今の男性は柚木正信ではなかったか 、と思った。そしてそう思うとその思いに間違いのない事がほとんど確信的に信じられて、柚木正信に間違いない 、と思った。
 明子は晴海通りに向けていた足を思わず引き返して、再びホテルの玄関前に戻った。
 玄関のドアを通して見えるフロントでは今、消えていった男性がフロントマンに何かを話し掛けている様子が見えた。続いてフロントマンが部屋の鍵らしきものを手渡す様子も見えた。
 男はそれを手にしてすぐにエレベーターの前へ行くと、開いたドアのエレベーターの中へ消えていった。
 明子はただ、呆然としてその場に立っていた。ホテルの玄関のドア越しに見る男性の姿は後姿しか見えなかったが、それでもそれが柚木正信であった事に間違いないと明子は確信した。
 まるで一瞬の幻でも見ているような感じだった。呆然とした思いのままに気を取り直すと明子は再び、晴海通りに向かって歩き始めた。
 柚木さんは今は東京勤めなのだろうか ?
 いや、ホテルの部屋を取ったという事は、そうではないという事だ。出張で東京へ来た。それでホテルの部屋を取った。
 だが、柚木さんの実家は小岩だったのではないか ? なぜ、小岩の実家へ行かないでホテルに部屋を取ったりしたのだろう ?
 疑問は尽きなかったが、単純な思惑で解決出来る事ではなかった。
 明子は晴海通りへ出て歌舞伎座の前を通り、四丁目へ向かった。
  四丁目交差点へ出ると眼の前に柚木と最後に別れた時に降りた地下鉄への入り口があった。十数年前の夜、明子はその階段を降り、柚木はビルの角を曲がって有楽町駅に向かったのだった。
 総てが今では夢の中の出来事のようだったが、柚木正信だと思える人の姿を改めて眼の前に見た気がした明子には、夢の中の事のようにも思えるそれらの総てに改めて、心を掻きむしられる気がした。思わず喉の奥に込み上げてくるものを意識して涙ぐんだ。
 四丁目から五丁目、そして七丁目へ来ると裏通りへ入って行き付けのバー「誘蛾灯」のドアを押した。
「誘蛾灯」の店内は空席だけのようだったが、実際には入り口に近いカウンターに二人の客がいた。
 明子は観葉植物の並んだ間を通ってカウンターの一番奥の席に向かった。
 明子がカウンターに付くと学生アルバイトのバーテン、たのちゃんがすぐに明子の前に来た。
「いらっしゃいませ。お一人ですか ?」
 たのちゃんは言った。
「そう、一人。振られちゃったの」
 明子は明るい声を繕って言った。
「お珍しいですね。ーーさっきまで杉本さんがいらっしゃったんですけど、五分ぐらい前に帰られました」
 たのちゃんは明子の言葉を冗談のように受け止めてから言った。
「あら、そう。それは残念だったわね」
 明子も明るさを装って言ったが、別段、残念にも思わなかった。
 杉本夏夫はミュージカルの貴重な脇役として知られていた。年齢は明子と同じぐらいかと思われたが、正確なところはよく分からなかった。独身のプレーボーイとしても知られていて、明子も二度、杉本とベッドを共にしていた。その事は公には知られていなかったが、今でも杉本は友人の一人だった。



          -----------------



          桂蓮様

          たびたび コメント有難う御座います
          どうぞ わたくしの書くものに余り
          お気をお使い下さいません様に
          お気軽にお読み戴けましたら それだけで
          嬉しく思います
           「人を読む」 拝見致しました
          わたくしは何よりも その人の眼に
          注目します 日本では 「眼は口ほどにものを言う」
          或いは「眼は心の鏡」とも言います
          自分の言う事に自信を持つ人の眼は澄んでいて
          清らか 力強いです 自信がなく 総てに曖昧な
          人間の眼には 落ち着き 力が無いものです
          近頃 テレビを見ていてよく思うのですが
          ブリンケン米国務長官 この人はいい眼を
          しているな と思いながら見ています 力があって
          常に正面を見ているような感じを受けます
           ひるがえって日本の官房長官 全く力も意志も
          感じられない死んだような眼をしています
          話す言葉にも覇気が感じられなくて
          総てが事務的 文章を読んでいる そんな感じに
          しか思えません 淋しい限りです
           人は褒めて育てる と言います
          たった一つの小さな才能でも 褒められれば
          次の段階への 意欲が湧きます 人をおとしめ
          けなす事 欠点ばかりをあげつらうのは
          百害あって一利なしです でも おべっか 
          お世辞だけは避けたいものです お世辞 お上手も
          やはり 百害あって一利なし です
           トランプの移民問題 日本でも報じられました
          最近 テレビ画面にトランプ氏が映らなくなった事で
          ホッとしています 親と子を引き離す なんという
          無謀 無茶 わたくしは第二次世界大戦下
          東京大空襲の折りに 同じような状況を経験して
          おりますので その痛みが切実に胸に響いて来ます
          幸い わたくし一家は全員無事でしたが 
          この経緯はこのブログの三十六回に
          掲載してありますので お気が向いた時にでも
          お読み戴けたら嬉しく思います
           桂蓮様の御文章はどれも御立派ですよ 論理的で
          良いと思います 自信を持ってこのブログを
          お続け下さい 有難う御座いました



          takeziisan様

          有難う御座います
          今回も楽しませて戴きました
          色とりどりの花 思わず眼を奪われます
          それにしてもこのような自然に触れられる    
          環境が羨ましいです タヌキ ハクビシン イノシシ
          まるでわたくしの居る所からみると
          昔話 童話の世界です
          水浴び 懐かしいですね 一気に昔が甦ります
          前にも書いたと思いますが 何処でも
          大きな違いはないようです そのまま
          わたくしの体験です
          田中邦衛 弘田三枝子 顔なじみが次々に
          亡くなって逝きます 淋しい限りです
          川柳 今回も楽しませて戴きました
          クスッと笑えるところが俳句にはない
          川柳の良さですね
          それにしても花の名簿 よく集めました
          ブログ上で気軽に拝見出来る
          良い資料ですね それにはそれなりの
          御苦労が伴う事でしょうが でも こうして
          何かに打ち込めるというのは 人が生きる上でも
          良い事ではないのでしょうか 物事に対する 
          興味が持てなくなってしまっては 人生の終わり
          ですものね これからも様々な情報 心待ちに
          致しております 有難う御座いました

        

          
                
          
          
 
 

遺す言葉(339) 小説 蜃気楼(6) 他 ミャンマー軍への手紙

2021-04-04 12:54:36 | つぶやき
          ミャンマー軍への手紙(2021.4.2日作)

 ミャンマー軍の最高司令官よ
 あなた方の国で今 何が起こっているのか
 あなた方は理解していますか ?
 あなた方の行為によって 
 あなた方の国の人々 国民が
 どのような状況に陥っているのか
 理解していますか ?
 この国 日本 あなた方の国から遠く離れた
 この国 日本にも 今現在
 あなた方の国で起こっている国民 人々の
 悲惨な現在を生きる姿が 連日
 新聞 テレビ ラジオ等で報道され
 伝えられて来ています あなた方の愚行 
 暴力行為によって 必死に
 自身の命を守るために逃げ惑う人々
 年端もゆかない 幼い子供達
 自分一人では行動する事も出来ない 年老いた人達
 そんな人達の苦難と苦痛に満ちた悲惨な姿が 連日
 報道され 映像や音声に映し出され 載せられています
 のみならず
 あなた方の愚行 愚劣な行為によって
 命を落とした人の数が何百人・・・・
 傷を負った人の数は・・・・ 
 あなた方はこの国 日本でも映し出される
 その映像の中でいとも平然とした表情で
 自分達の行為 行動を 正しいものと主張し
 正当化していますが あなた方は
 人の命が失われ 傷付く事を
 どのように思い 考えているのですか ? あの
 赤子から 若者達に背負われ 命の危険から逃れようとする
 年老いた人々の姿を見て 
 どのような思いと感慨を抱きますか ? もし この状況
 命を奪われる 日常の平穏 平和な暮らしが奪われ
 生きているのにも困難な状況が身に迫る
 このような状況が あなた方の親族 身内
 親兄弟子供達に起こった時には
 どのように思いますか ? 平然として
 相手の行為 行動を受け入れ
 黙認出来ますか ?
 いいですか 今
 あなた方が行っている行為は どのように弁明しようとも
 許される行為 行動ではないのです 人の命を奪い 傷付ける
 どのような状況下でも 許され 弁明されるべき
 行為ではないのです 人はそれぞれ
 人として生まれて来た以上 自分の命を
 生きる権利を有しているのです それを奪う行為は
 犯罪行為 そのものです いいですか
 ミャンマー軍の人達よ 今 あなた達が行っている その行為は
 犯罪行為なのです 即刻 手を引いて下さい 止めて下さい
 遠い国 日本の国民の一人として 厳重に抗議 声明します
 それにしても国連 この機関は この現状をどのように
 認識し 見ているのか 世界の
 政治に携わる人間達は 何をしているのか ? 何故 苦難にあえぐ
 ミャンマー国民 人々を
 助けようとしないのか ? この国 日本の政治家達は いったい
 何を考えているのか ? 即刻 行動を起こし この愚行を
 停止させるべきではないのか ? そして かの大国
 中国 ロシアは ?
 ミャンマー軍の愚行を見て 心が痛まないのか ?
 権威主義の国々 一部の権力者が総てを統治する国々
 そういう国では このような行動も許されるのか ?
 ミャンマー軍のこの愚行 暴挙を
 批難する事にも賛同しない この愚かさ
 この権力者達の愚か極まる行動 行為 愚行には ただ
 唖然とする



          ----------------



          蜃気楼(6)

 明子自身もまた、その言葉を聞いて一瞬、心の中に走る動揺を意識した。ひと時の間を置いてから明子は言った。
「いつから ?」
「十月」
「この十月 ?」
「うん」
「ずいぶん急なのね」
「うん、昨日言われた」
 柚木は自身が受けたショックを隠そうともしなかった。
「どうするの ?」
 明子は柚木の胸の内が分からないままに聞いた。
「どうするって・・・。行かない訳にはゆかないだろう。行かなかったら会社を辞めるしかないよ」
 柚木は不機嫌そうに言って口をつぐんだ。
 二人は無言のまま人ごみの中を歩いた。
 気が付いた時には行きつけのレストランに着いていた。
 テーブルに着いて、ボーイが注文を聞いて去ると明子は言った。
「どうして、あんなに一生懸命にやって、旨くいっていたのに転勤なんてさせるのかしら ?」
「営業部次長になるんだ」
「企画課の課長から営業部に移って、次長に昇進っていう事 ?」
「うん。昇進かどうかは分からないけど、とにかく、転勤っていう事なんだ」
「じゃあ、おめでとう、って言っていいのかしら ?」
「おめでたくなんかないさ。憂鬱だよ」
「どうして ? 札幌は始めて ?」
「うん」
「御両親は ?」
「両親の事は兄貴がいるから心配ないけど、日光より向こうへ行った事がない人間にとっては、札幌なんて島流しにされるようなもんだよ」
「不安 ?」
「勿論、不安さ。勝手知らない所だし、・・・ねえ、札幌へ一緒に行ってくれないかな」
 柚木は熱意のこもった眼で明子を見詰めて言った。
「わたしが ?」 
 明子は柚木の唐突な言葉に驚いて思わず聞き返した。
「うん」
 柚木の眼は真剣だった。
「でも・・・それは無理よ。養成所通いもあるし」
 迷いはなかった。明子の本心だった。
「来年の四月で終わるんだろう ?」
「ええ。でも、わたし、専科へ進みたいと思ってるの。本格的にデザインを勉強してみたいので」
「もう一度、結婚してくれって言っても駄目 ?」
 柚木は明子の顔を覗き込むようにして言った。
「御免なさい」
 明子は言った。それから一息ついて、その言葉を補うように、
「柚木さんがそんなに言ってくれのは嬉しいし、柚木さんがわたし、好きなんだけど、でも、わたし、やっぱり、デザイナーへの夢を諦める事が出来ないものだから」
 と言った。
「いや、今、すぐにでなくてもいいんだ。五島さんがそう約束してくれれば、いつかはという思いで、あっちへ行っても頑張れると思うんだ。それに永久に向こうにいる訳でもないし、もし、出来たら結納だけでもして、正式な結婚はデザイナーへの目途が付いてからでもいいから」
 柚木は熱意を込めて言った。
「でも、やっぱり無理よ。わたし、滝川先生にも目を掛けて戴いているので、その期待に応えたいという思いもあるので・・・。やっぱり、無理だわ」
 明子は柚木の心遣いを裏切るような胸の苦しさを覚えながら言った。
「そうか」
 柚木は明子の言葉を聞くと呟くように言って、あとは言葉を呑んだ。
 その夜の食事は会話も弾まない気まずい雰囲気のうちに終わった。
 明子は気まずさと共に食欲もないままにサラダもハンバーグも半分以上残した。
 レストランを出ると柚木はすぐに、
「今夜はこの事を話しておきたかったので、これで失礼するよ」
 と言った。
 明子はふと、自分が突き放されたような感情を抱いて動揺したが、
「御馳走様でした」
 と言った。
 食事は何時も柚木が支払いを受け持っていた。
 柚木はそれでも銀座四丁目の地下鉄入り口まで明子を送って来た。
「いつ、札幌へは発つの ?」
 明子は別れ際に聞いた。
「今月の二十日過ぎになると思う」
 柚木は言った。
「今月の ? ずいぶん急なのね」
 まさかという思いで明子は言った。
「正式には、来月になってからの仕事なんだけど、いろいろ細かな打ち合わせなどもあったりするから、その間、行ったり来たりしなければならないと思うんだ。滝川先生との仕事の担当者は決まっているし、あとはその彼がやるから」
「もし、発つ前に時間があったら、電話をしてくれる ? お見送りをしたいと思うから」
 明子は言った。本心だった。
「有難う。その時は電話をするよ」
 柚木も拘りのない口調で言った。
 明子は柚木と別れ、地下鉄への階段を降りてホームに立つと、ふと、空虚な思いに囚われて気持ちの重く沈んでゆくのを意識した。
 心は晴れなかった。奇妙なわだかまりが胸の内に残っていた。多分、明子に対しては常に優しく接していてくれた柚木の期待に応えられなかった事への、拘りに違いなかった。だが、仕方がなかったのだ、と明子は思った。わたしはわたしの道を進んで行きたい。その思いを諦める事もまた、出来なかった。デザイナーを目指す夢。それは明子に取っては今を生きる事の総てだった。

 柚木が何時、正式に札幌へ発ったのか、明子は知らなかった。柚木からの電話はあの夜以来、一度もなかった。
 月が替わってからも柚木からは転任の挨拶状一枚、電話の一本も届いて来なかった。明子はその状態が決定的だと自覚した時、仕方がない事だ、と自分に言い聞かせた。自分の言葉を拒否した者に未練がましく、あれこれ事後報告をするなど馬鹿げた事に違いなかった。
 それでも明子の気持ちの中にはなお、柚木の言動に未練を残す心が、晴れない霧のように渦巻いていた。胸の内は奇妙に淋しかった。


             三


 午後十時に近い時刻だった。東銀座にあるTホテルのロビーも一日の終わりを思わせて閑散としていた。フロントに居る二人の男性も、ドアマンも、何処か手持ち無沙汰といった風情を見せていた。
「これから四丁目へ出てみませんか ?」
 明子は連れの二人に言った。



          ----------------



          桂蓮様

          有難う御座います
          拙作をお読み戴いての御感想
          面白く拝見致しました
          女の領域には立ち入らないように
          面白い御忠告です でも
          物語を書く側としては 構成上
          女性の領域にも止むを得ず立ち入らなければ
          ならない場合も有ります それに悪徳をも
          書かなければならない場合もあります
          良識に従って悪影響のあるものは書かない 
          自身の領域ではないものには立ち入らない
          それのみではどうしても物語が
          希薄になってしまいます
          わたくしの場合 この欄に書くことによって
          少しでも人間の心の内 見えない部分を見詰め
          人間というものを見詰めてみたい
          そういう思いがありますので 男も女も
          人間の善も悪も書かない訳にはゆきません
          人間の悪徳 良識 総てを含めて書くのが
          小説 物語の世界ではないかと思うのです 
          それによって人間の本質も掴む事が
          出来るのではないかと思うのです ただ
          それがお読み戴く読者の方々に抵抗なく
          受け入れて貰えるかどうかは 書く者の
          腕次第です もし 前回のわたくしの書いた物が
          不快感をしか残さないとしたら それは
          わたくしの力不足という事に他なりません
          今回も貴重な御意見 有難う御座います

          禅の悟り
          拘らない心 いいですね
          有るがままに受け入れる いいですね
          それが禅の究極ではないでしょうか
          その意味でも桂蓮様は 悟りの心 禅の本質に
          少しずつ近付いているのではないですか
          どうぞこれからも坐禅 お励み下さいますよう
          有難う御座いました

          「難しさと易しさの境目」
           再読させて戴きました
           全面的に賛成です そうです
           本当に理解している人の文章は
           簡潔に物事の本質を捉えます
           物事を理解しているとだけ
           思っている人間の文章は的確に
           本質を掴めないのであっちへうろうろ   
           こっちへうろうろしていて なかなか
           本意に辿り着けません それに
           自分の理解が中途半端なものであるゆえに
           やたらに難しい専門用語などを借りて来て
           誤魔化します
           格言に「夜郎の本箱」という言葉があります
           (夜郎とは昔 中国にあったという古い国ですが
           この言葉に関しては夜郎自大という言葉が有名です)
           自分ではなんでも知っているつもりでいて
           実は書物などを読み漁って得ただけの知識で
           物事の本質に付いては何も理解していない人間に
           当てはめて言います そして 世の知識人 あるいは
           テレビなどにしきりに出て喋りまくっている
           コメンテーターなどと称する人間達には如何に
           この種の人間の多い事か !
                      有難う御座いました
   
          
           
           takeziisan様

           何時も有難う御座います
           ブログ 今回もまた 楽しく拝見させて戴きました
           花々の多彩な色と種類に驚いています
           よく 見付けられますね 感服しきりです
           それにしても自然が豊かなように感じられます
           鳥たちの写真も楽しく見せて戴きました
           オナガ あんな色をしていましたかね
           この地方でもオナガは見られて 尾羽が
           黒かったように思っていたのですが あれは
           違う鳥だったのかも知れません
           キジ 堪能しました キジはわたくしの憧れの鳥で
           いつか このキジをテーマに物語を書いてみたいと
           思っているところです
           新谷のり子 懐かしいですね わたくしは昔
           フォークには感心がなかっのですが 近頃
           しきりに宣伝されている昔の楽曲を集めたCDの
           中の楽曲を耳にしたりして おお フォークにも
           ずいぶん良い楽曲があっんだなあ なんて
           思っています 今の寝言を歌にしたような楽曲とは
           わけが違うと思っていたりします
           桜と菜の花 わたくしの県の小さな鉄道 
           小湊鉄道の風景を思い出しました この鉄道の
           沿線の菜の花と桜の風景は見事です
           何時だったか NHKの「小さな旅」という番組でも
           放送していましたが その風景を保つ為には やはり
           それなりの御苦労があるようです
           野菜 のらぼう菜 名前は聞いた記憶がありますが
           思い出せません 小松菜はスーパーなどでも売って
           いますが 百円を出すと大きな束が買えて
           これで農家さんはやっていけるのだろうか などと
           要らぬ心配をしたりしております
           今回も楽しくさまざまな記事を拝見させて戴きました
           有難う御座いました