水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第三百十ニ回)

2011年05月04日 00時00分00秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第三百十ニ
 専務を通り越しての社長就任である。湯桶(ゆおけ)さんには面映(おもは)ゆい気分だったが、就任した以上は会社のために全力を傾注しなければならない。幸い、就任当時の米翔(こめしょう)には、これといった問題がなく、順調な成長を続けていた。以前、私が手がけた米粉プロジェクトがその後も堅調な営業実績を示し、当期純利益も前ほどではないにしろ、一定幅の黒字を保っていた。営業部長の児島君に社内全般の現状を報告してもらい、私なりに社内を把握しようと努めた。そして、ようやく一段落する運びとなった。社長就任の報告もあり、久しぶりに私はみかんへ寄ることした。それには別の理由で、ここ最近、お告げが舞い降りていなかったことも関係していた。みかんの酒棚に置かれた玉になにか異変でも…と思えていたからだった。本当のところは、いかにも鼻高々に自慢しにいくようで嫌だったのだが、そういう思惑があったためということだ。
 みかんへは、いつもの頃合いに行った。この日はお決まりのA・N・Lへは寄らず、麺坊で塩バターラーメンを食べてから行った。
「いらっしゃい! 随分、貫禄がついたわね、満ちゃん」
「またぁ~。ママには勝てないですよ」
「あら? 私って、貫禄?」
「ええ、かなり…」
「まあ! 満ちゃんも云うじゃない」
 私とママは互いの顔を見合せて笑い転げた。


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