水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション (第十九回)

2011年05月28日 00時00分00秒 | #小説

    幽霊パッション    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第十九回
「そうか。…なら第二会議室が空いているから、そこで話そう」
「出たところのキングダムじゃ駄目でしょうか?」
「んっ? まあ、いいだろう…」
 ぞろぞろと他の社員も退社していた頃合いだったから、目立つということもなく、三人は会社からすぐ近くにある喫茶・キングダムへと歩いた。
 店へ入った上山達は、適当に空いたボックス席へ腰を下ろした。
「あっ、ホットにして…」
「僕達も同じで…」
「はい、かしこまりました」
 ウエイターが水を運び、注文を訊(き)くと下がっていった。
「僕達とは隅に置けんな、君達。ははは…、ってことは」
「ええ、そうなんです。この秋、結婚するんです。実は、そのことなんですが、課長にお仲人をお願いしようと思いまして…」
「だって、仲人ってのは、夫婦でするんだろ? 私は独り者だよ。それでいいのかな?」
「はい、そのことも重々、承知をしております。奥様役の方は亜沙美さんの遠縁の方がやって下さるということで了解を得ております」
「そうなの? …お目出たい話だから、私に異存はないよ。こんな私で務まるのかなあ? 部長や専務とかの方が、いいんじゃない?」
「いやあ…、僕達は小じんまりとやりたいんで、返って、そんな上の方は…」
「今後の君の出世を考えりゃ、その方がいいいと思うけどねえ」
「そんな、とてもとても…」
「岬君は全然、欲がないなあ、ははは…。海堂君はそれでいいの?」
「ええ、私は別に…」
 先ほどのウエイターがコーヒーカップを盆に乗せてふたたび現れた。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする