幽霊パッション 水本爽涼
第十六回
『問題は、どうやって調べるかですよね』
「君は消えてるときは、どこにいるの?」
『えっ? どこって…消えてるだけですよ』
「だからさあ、消えてどこにいるのって、訊(き)いてんの!」
『それは…空間です。ただ、この三次元じゃないんですがね』
「ほう…三次元って、他の次元もあるってことだな。それは意味深な言葉だ」
『いけない! つい口がすべっちゃったな。ちょいと事情で、今は、これ以上のことは訊かないで下さい。お願いしますよ! 課長』
「んっ? 君がそう云うんなら…、そうするよ」
『ありがとうございます。また云える時期が来れば、きっちりと説明しますので…』
「はいはい、分かりました。それはいいよ。で、問題は君が云ったように、どうやって調べるかだ」
『課長に何かいいお考えはないですか?』
「今、すぐに云われてもなあ…。一日二日もらおうか。君も考えといてくれ」
『分かりました、僕も考えてみましょう。じゃあ二日後、会社で…』
「出来れば、会社が終わった頃にしてもらえると、ありがたいんだがね…」
『はい、なるべく、そうします』
幽霊平林は、そう云うと、跡形もなくスゥーっと消え失せた。
次の日と、その次の日の二日は現れないんだ…と、上山はしみじみと湯に浸かりながら思った。すると、なぜかリラックスした気分が全身に漲(みなぎ)り、久々の開放感を心底、味わうことができた。ただ、その二日の間に、不可思議な現象をどのようにして調べるかの方法を考えておかねばならないという問題は残っていた。浴室から出た上山はバスローブを纏(まと)い、ゆったりとソファーに座ると、徐(おもむろ)に借りた本を開いた。