朝から蜆(しじみ)は綻(ほころ)んだパジャマを針と糸で繕(つくろ)っていた。蜆に言わせれば、綻んだ衣類と使えなくなった襤褸(ボロ)は、まったく異質のものだという。どう違うのか? を簡単に説明すると、綻びは修理可で襤褸は修理不可のただの破れた布(きれ)という内容が隠れているらしい。どちらも同じ布なのだが、使用できるか? での選別だそうだ。さらに、傷んだ衣類でもその傷み具合で破れと綻びの二段階に分別できるのだそうだ。綻びは、まだ大した破れではない軽度のもので、破れは、中程度以上に繕いを必要とする衣類ということになる。ふ~~~ん…と聞かずに聞いていたが、友人の言うのを無碍(むげ)にも出来ず、ほお! と一応、相槌(あいづち)は入れておいた。まあ、そんな話はともかくとして、破れた衣類は誰でもそのままには出来ないから、ついつい弄(いじ)って繕いたくなるものだ。そんなことで・・でもないが、蜆は朝から綻んだパジャマを繕っていた。
「お大事に! 無理をなさらないよう…」
繕いを終えた蜆は、そう呟(つぶや)くようにパジャマに語りかけたという。それを聞いた私は、初めて聞き耳を立て、変わったやつだ…と思ったが、まあ友人のことでもあり、黙ってお汁(つゆ)を啜(すす)ったというようなことだった。破れた衣類とはまったく関係ないが、夏に蜆汁は精がつき、いいと聞く。
完