水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

世相ユーモア短編集 -64- 気になる

2025年01月24日 00時00分00秒 | #小説

 最近の世相は気になることが多い。気にしなければいいのだが、これだけ情報社会が進んだ昨今の世相では、否応なしに社会問題が目や耳に飛び込んでくる。で、気になる・・と、まあ話はこうなる。^^ よくよく考えれば、自分の生活とはまったく関係がない事柄が多いのだが、一端、気になり始めると止めようがないから困る。気にしなければいいのだが、気になるのだから、どうしようもない。^^
 とある最先端のウイルス研究所である。
「先生っ! こんなウイルスが…」
 電子顕微鏡に映し出されたウイルスは、今まで見たこともない新種のウイルスに思えた。
「気になるな…」
 所長の教授は、そう呟(つぶや)くと首を傾(かし)げた。そのウイルスは映し出されたのだが、数分経っても少しも動かなかった。
「妙ですね…」
「ああ。私が見てるから…」
 教授は腹が空いたのか、それとなく、いつもの昼食を催促した。
「もう昼ですね…。あの店で、いつもの、買ってきます…」
「ああ、私は魚だよ、魚っ! 肉じゃないよっ!」
 昨日、弁当を間違えて買ってきた助手に、教授は諄(くど)く念を押した。
「はい、分かってますっ!」
 助手は少し怒れたが、グッ! と我慢しながら白衣を脱ぐと、急いで出ていった。
 気になることは生理的な現象が最優先するようです。^^

                   完


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