水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (87)五感[その四 嗅覚(しゅうかく)]

2019年12月22日 00時00分00秒 | #小説

 さて、その次に控(ひけ)えしはぁ~~! と歌舞伎の白浪五人男の口上(こうじょう)調でガナるつもりはないが、^^ 五感のその四として、嗅覚(しゅうかく)がある~~ぅ! 香道(こうどう)という匂(にお)いを嗅(か)ぐ古来の作法もあるくらいで、嗅覚は日常の楽しいひと時を人に与えてくれる五感の一つである。身の体裁(ていさい)を気にされるお方なら、香水[パヒューム]のいい香りで自己主張されることだろう。別に広島出身の某歌手グループの宣伝をしている訳ではない。^^
 とある繁華街である。食べ物店が軒(のき)を連(つら)ねる中、なんとも芳(かぐわ)しい匂いが漂(ただよ)う。そんな中を二人の男が歩いている。
「ははは…匂いだけで満腹になりますなぁ~」
「ははは…その通りですなっ! ということで、私、今日は朝抜きで来ました」
「ということは、腹ペコですか?」
「ええ、まあ…」
「実は、私もなんです。奇遇(きぐう)ですなっ!」
「さようで…」
「おっ! 老舗(しにせ)鰻福(うなふく)のいい匂いがしてきました。楽しみですなぁ~」
「鰻は、やはり、ここの老舗ですからなっ!」
「さようで…。おやっ? おか(怪)しい。今日は、どういう訳か匂いが濃(こ)くならない…。そうは思われませんか?」
「そういや…」
 二人はトボトボと歩き進み、鰻福の前に来た。店前には、本日臨時休業の紙が張られていた。
「道理で…」
「ですな…」
 二人はガックリと肩を落とした。長年の老舗の店に染(し)み付いた匂いが流れ、二人を店へと運んだ訳だ。嗅覚は人を引き寄せる楽しい感覚なのである。^^ 

                                


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