夏の怪奇小説特集 水本爽涼
第四話 ゴミ人間(3)
ウィスキーをストレートのオンザロックで飲み、ベッドへ横たわる。緊張感からか眠気が訪れない。そこで、ステレオのジャズを聴いて気を紛らわせる。そして漸(ようや)く深い眠りへと吸い込まれていった。
気づくと、音楽を耳に感じた。だが、昨夜のそれではない。しかも、自動車のエンジン音すらする。そして、妙にざわついた動きを感じる。
危機一髪であった。奏でられていた音楽は、パッカー車のカーラジオの音だった。
車から降りてきた二人の清掃員が、私のいる近くのゴミ袋を車中へ放り込んでいる。私は必死で袋を突き破り、脱出した。
急に袋から現れた人間に、二人は一時、唖然としたが、ホームレスとでも思ったのだろう。
「なにやってんだ! こんな所で。…危ねぇじゃねえか!」と、私を一喝した。
「すいません…」と、縺(もつ)れた足で足早にその場を抜け、走り去る。そして、一目散にひた走った。
『何故、自分だけが…』という想いが、脳裏を駆け巡っていた。
家へ着くと、なんと! …家がない。私の家がないのだ。そこは巨大なゴミ捨て場と化している。そして、そこには巨大な立て札が…。
━次は貴方を捨てますよ。ゴミを馬鹿にしてはいけません。━ …と。
第四話 了