本日2月25日は、藤原忠平が延喜式を奏進した日で、ローマ教皇ピウス5世がイングランド女王エリザベス1世を破門した日で、アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインが皇帝軍の将校により暗殺された日で、日本麦酒醸造会社がヱビスビールを発売開始した日で、グルジア民主共和国の首都トビリシをロシア・ソビエト社会主義共和国軍が占領した日で、アドルフ・ヒトラーがドイツ国籍を取得した日で、ナチス・ドイツ占領下のアムステルダムで市民がユダヤ人政策に抗議するゼネストを行った日で、ニュージーランド・フェザーストン捕虜収容所で日本人捕虜殺傷事件が起こった日で、日本で金融緊急措置令に基づく旧円と新円の交換が開始された日で、ベトナム戦争で南ベトナムクアンナム省フォンニィ・フォンニャット村の民間人を虐殺した韓国海兵隊第2海兵旅団・青龍部隊が同じクアンナム省のハミ村で非戦闘員で民間人の女性・老人・子供・135人を嬲り殺しにした日です。
本日も倉敷は晴れでありましたよ。
最高気温は九度。最低気温はマイナス二度でありました。
明日も予報では倉敷は晴れとなっております。
私は書痴である。
名前は狐。
倉敷で生まれ倉敷美観地区で育つた。
生まれた時の事は頓と見當がつかぬ。
何ても暗薄いじめじめした所でコンコン泣いて居た事丈は記憶してゐる。
始めて本といふものを見て讀んだ時の事は全くもつて覚えてゐない。
後で聞くと、絵本といふ一番子供向きの本を只管讀んでゐた幼児であつたさうだ。
此絵本といふものは幼児を魅了して本好きにしてしまふといふ恐ろしいものであるといふ話である。
然し、其の當時は何といふ考えもなかつたから別段恐しいとも思はなかつた。
但、美しい絵と楽しいお話に夢中になって何だかフハフハした感じが有つた許りである。
幼稚園の年長さんになって少し落ち着いた頃が所謂本というといふものゝ讀始であらう。
此の時、讀書は面白ひものだと思つた感じが今でも殘つて居る。
第一事実を以て事実を伝へる手段である筈の文章が嘘で構成されていることにわく/\して丸で滑稽に思へた。
其の後、本を大分讀んだけれどもあの當時のわく/\した感覚を齎した出會は滅多にない。
加之嘘が真に迫って居る。
さうして真に迫った其の嘘の中からどき/\のお話が展開される。
どうも夢中になってしまって讀むのを止める時が分からなくなって實に弱つたものだ。
是が書痴の初期段階といふものである事は漸く此頃知つた。
其の衝撃が私の運命を大きく変えてしまつた。
其の衝撃から世界はまるで開き直つたかのごとく其の装いを変えてしまつたのだ。
何時もと同じ町。何時もと同じ角店。何時もと同じ公園。
だが何かが違う。
路上を行き交う人々は輝いて見え、建売住宅の庭先に聞こえる洋琴の音は歓喜に満ち、牛丼屋の卓子で慌ただしく食事をする人達さえ愛おしく思える。
此の町は、否、此の世界は光り輝く世界となった。
数日を経ずして私は讀書の虜と成り果てた。
斯くも静かな斯くも呆気無い私の書痴への道を親達は予想し得たであろうか。
我が親達が私を純真無垢に育て上げやうとする試みは此処で潰えた。
しかし私にとつては新たなる始まりに過ぎない。
讀書の魅力に憑りつかれた其の日から私の本を物色し限られた時間で本を讀む苦闘の日々が始まったのである。
図書館や書店は、押し寄せる思想の押し付けによる荒廃をものともせずに其の雄姿を留め、豊富な作品数を誇っていた。
更に新刊の本が供給され続け新聞すら配達されてくるのである。
当然私は知識の向上という大義名分の下に讀書といふ娯楽に溺れた。
そして書痴である事を宣言。
暇が有ると本を読み、時折、紗に構えた事を謂うやうになった。実に可愛くない。
あの運命の夜からどれ程の歳月が流れたのか。
しかし今や私は書痴であることを止める事が出来ない。
私は趣味に給金の殆どを注ぎ込むサバイバルを生き抜き、嘗て今迄如何なる先達も実現し得なかった理想の楽園をあの永遠のシャングリラを夢想の中で実現するだろう。
嗚呼。書痴の恍惚と不安、共に我に有り。
新たなる本を読む楽しみが無限に広がつている此の世界を認識する時、眩暈にも似た感動を禁じ得ない。
狐著 書痴遍歴第1巻 衝撃を越えて 序説第3章より抜粋