本日3月23日は、ベトナムで胡キリが少帝から皇位を簒奪して陳朝が滅亡した日で、天正遣欧少年使節がローマ教皇グレゴリウス13世に公式謁見した日で、江戸幕府が奉書船以外で海外渡航した日本人の帰国を禁止した日で、パトリック・ヘンリーが「自由を与えよ。然らずんば死を与えよ」の演説を行った日で、ロシア皇帝パーヴェル1世が暗殺された日で、ソビエト連邦が満州国に東清鉄道を有償譲渡する協定の調印がおこなわれた日で、ひめゆり学徒隊に動員令がくだった日で、解散寸前のプロ野球団広島カープが広島県・中国新聞などの再建策提出で存続を決定した日で、中国からの引揚げ第一船・興安丸が舞鶴に入港した日で、児玉誉士夫邸セスナ機特攻事件があった日で、パラグアイの副大統領ルイス・マリア・アルガーニャが暗殺された日で、能登半島沖不審船事件があった日です。
今この時、星辰は正しい位置に付き、ルルイエは浮上する。
本日も倉敷は晴れでありました。
最高気温は十五度。最低気温は一度でありました。
明日も予報では倉敷は晴れとなっております。
狐はやつとのことで十階の床を踏んで汗を払つた。
其処の天井は途方もなく高かつた。
全體その天井や壁が灰色の陰影だけで出來てゐるのか、冷たい漆喰で固めあげられてゐるのか分からなかつた。
さうだ。この巨きな室に先輩はいるのだ。狐は一寸胸の何処かが熱くなつたか熔けたかのやうな氣がした。
高さ二丈ばかりの大きな扉が半分開いてゐた。
狐はするりと入つて行つた。
室の中はがらんとして冷たく、背の高い先輩が手を額に翳してそこの巨きな窓から西の空をぢつと眺めてゐた。
先輩は着物をまとつてゐた。
そしてぢつと動かなかつた。
窓の向ふには大きな入道雲が白く光つてゐた。
先輩が俄かに冷たい透き通つた聲で呟いた。
哀 ふるえる哀 それは別れ歌
拾う骨も燃え尽きて濡れる肌も土に還る
荒野を走る死神の列 黒く歪んで真赤に燃える
哀 生命の哀
血の色は大地に捨てて新たな時を開くか
生き残る哀戦士達
荒野を走る死神の列 黒く歪んで真赤に燃える
死に行く男達は守るべき女達に
死に行く女達は愛する男達へ
何を賭けるのか? 何を残すのか?
I pray, pray to bring near the New Day
哀 哀しみの哀
今は残るだけ
名を知らぬ戦士を討ち、生き延びて血反吐吐く
疾風の如き死神の列 抗う術は我が手には無い
死に行く男達は守るべき女達に
死に行く女達は愛する男達へ
戦う男達は故郷の女達に
戦う女達は信じる男達に
何を賭けるのか? 何を残すのか?
I pray, pray to bring near the New Day
狐は空の向ふにある黒い雲を思つてゐた。
先輩は又ぢつと額に手を翳したまま動かなかった。
狐は堪へかねて一足そつちへ進んで云つた。
「お仕事が忙しいのですね。分かります」
先輩は振り向いて冷ややかに笑つて云つた。「甘いものが食べたい」
其の夜、先輩と狐は夜通し開いている茶店に行つた。
先輩と狐は茶店ですうい~つを食べ続けた。
先輩と狐が茶店を出た頃には夜の向うに夜明けが忍んでいた。