本日6月3日は、古代ローマの執政官ネポティアヌスがローマ皇帝を僭称してローマに入城した日で、和同開珎が発行された日で、フランスの神学者ピエール・アベラールが異端と宣告された日で、越前の朝倉義景討伐中の織田信長が近江の浅井長政の離叛のため越前から撤退を始めた日で、大坂夏の陣で大坂城天守閣が炎上した日で、清の官僚・林則徐が広東虎門でアヘンを公開処分した日で、ロシアと清の間で露清密約が結ばれて日本に侵略されたときの相互援助を約束しロシアが東清鉄道の敷設権を獲得した日で、閣議で1910年8月の併合後の韓国に対する施政方針を決定した日で、日独伊が蒋介石の中国国民政府・蒋介石政権を正式に承認した日で、警察法改正法案の審議での会期延長をめぐり乱闘になった衆議院本会議で議長の要請で初めて警官隊が院内に出動した日で、ジョン・F・ケネディ米大統領とニキータ・フルシチョフソ連首相が初会談を行った日で、阪急の福本豊が939盗塁の世界新記録を樹立した日で、雲仙普賢岳で小・中規模な火砕流が発生して43人が死亡した日で、オウム真理教の一連の事件で特別指名手配されていた菊地直子が神奈川県相模原市において発見されて逮捕された日です。
本日も倉敷は晴れていましたよ。
最高気温は二十七度。最低気温は十六度でありました。
明日も予報では倉敷は晴れとなっております。
今はもう昔のお話。
子供の頃、藏屋敷が立ち並ぶ観光地に狐は住んでゐました。
いつも獨りで歩くことが好きでありましたが、或る雨の日、いつものやうにぽつぽつ歩いていますと人間の男の子達ががやがや噺ながらやつて來ました。
狐は時々人間を見たことがありました。
人間は弐本の足で立つて歩いてゐるので狐は珍しくて面白くて仕方がないのです。
狐の母親は「人間の処へ行くと酷い目に遭ふから人間の処へは近づいてはいけませんよ。駄目絶対」といつも云ふのですけれど、狐は人間の姿が可笑しくて仕方がなかつたのです。
第一、ひよろひよろと立つて歩いてゐるのが可笑しくて仕方がなかつたのです。
狐は子供達の後ろからそつとついて行きました。
「此の辺は狐が出る処だぞ!」
一人の子供が云ひました。
「晝間から出ることはないだろふ」
また一人の子供が云ひました。
「晝間でも雨が降つているから出るかもしれん」
また、もう一人の子供が云ひました。
時々、遠くで雷が鳴つてゐます。
子供達は何となく氣味が悪くなつたのでせう。
歩いていた子供達はふつと足を止めて耳をそばたてました。
「狐は人を化かして悪さをするらしいな」
一人の子供が云ひました。
「狐ぐらい動物のうちで惡い奴はないの。あれは魔物だからな。雨の降る晩は必づ山に灯をつけて人を揶揄うし碌な事をせん」
また一人の子供が云いました。
「狐のやうな惡い奴は捕まえて日干しにして狐汁にして食つてしまうがよい。狐汁は食つたことはないが旨いかもしれん」
また、もう一人の子供が云ひました。
狐は吃驚しました。
狐は今迄にまだ一度も人間と間近に接したことはなかつたし、第一人間のような賢い動物を化したりなぞしたことは一度もなかつたのです。
人間といふものは何といふ嘘吐きなのだろうと思ひました。
狐はだんだん怖くなつてしまいました。
人間はとても怖ろしい動物だと母親が云つてゐたけれど本當だと思ひました。
だから自分達の仲間は晝間は穴の中に引つ込んでいて人間に見つからないやうにしているのだなと思ひました。
急に母親が懐かしくなり、涙をいつぱい溜めて息を殺してゐました。
すると一人の子供が不意に後を振り返つて狐を見ました。
「あ! 狐が出おつたぞ!」
子供達は吃驚してまるで豆が爆ぜたやうな凄まじい勢ひで走つて逃げていきました。
狐も吃驚しました。
さうしてどうしてあんな酷い嘘を云ふのだろふと思ひました。
雨の降る中、狐は濡れながらとぼとぼと「こお~ん。こんこん。こお~ん。こんこん」と泣きながら巣に帰つていきました。
それ以来暫らく、狐は人間達との接触は避けて巣の中で暮らしてゐたのでございます。