本日6月9日は、ローマ皇帝のネロが自殺した日で、壱岐・対馬に高麗の兵船が襲来して元寇・弘安の役が始まった日で、天海による日本初の木活字による経典『大蔵経(寛永寺版)』が完成した日で、ウィーン議定書が締結されてナポレオン戦争後のヨーロッパの新しい国際秩序・ウィーン体制が始まった日で、清とフランスが停戦協定を締結して1884年の天津停戦協定に定められたコーチシナ・トンキンのフランスによる植民地化を容認した日で、「展拓香港界址專條」が締結されてイギリスが香港の新界の99年間の租借権を獲得した日で、チャールズ・キングスフォード・スミスがアメリカからオーストラリアまでの太平洋横断飛行に成功した日で、中国国民党軍が日本軍の進撃を止める目的で黄河を氾濫させた為に河南省・安徽省・江蘇省の住民に100万の水死者と600万人の被害者が出た日で、日本国とインドとの間で平和条約が調印された日で、サッカー日本代表がFIFAワールドカップで1-0でロシアに勝ってワールドカップで初勝利をあげた日です。
本日の倉敷は晴れでありましたよ。
最高気温は二十八度。最低気温は二十一度でありました。
明日は予報では倉敷は雨となっております。お出かけの際はお気を付けくださいませ。
或る夜の事。
狐は先輩と一緒に或るパブリック・ハウスのカウンター席に腰をかけて、絶えず氷入りのミルクを舐めてゐた。
狐は余り口をきかなかつた。
しかし先輩の言葉には熱心に耳を傾けてゐた。
「私は私に好意を抱いている人は其の人が其の事を隠していても何となく分かるのよ」
美人さんの先輩は頬杖をしたまま極めて無造作に狐に云つた。
「正確に云うと私は私に欲情している人は其の人が其の事を隠していても何となく分かるの」
ふうん。私にはよく分からない話です。
「香りがね。違うの。そんな人は」
ふうん。お馬さんも匂いで分かるみたいですね。そのような事は。私には分かりません。
「君はその香りがどんなものか知りたくない?」
いえ。知りたくはありません。
「因みに私は今、君に発情しているのだけれども私の体の香りを嗅いでみる気はない?」
セクハラはやめてください。知りたくないと云つているのです。
「因みに君の体から発情した人の香りがするような気がするのだけれども其れは気の所為なのかな?」
セクハラはやめてください。気の所為です。
「そんなことはないと思うんだけど?」
もし仮に私が先輩に発情してしまつたならば其れは我が身の一生の不覚。其の時は喉を突き此の世からお去らばいたします。
「ふむん?」
先輩はお喋りを止めて考え込んだ。
狐の言葉は先輩の心を知らない世界へ神々に近い世界へと解放したのかもしれない。
狐はカルーアを注文し、割賦の中でミルクと混ぜ合わせてカルーア・ミルクを作り、舐めた。
先輩は言つた。「私の事が好きな癖に」
狐は何か痛みを感じた。が、同時に又歓びも感じた。
人の好みとは様々なものであるな。面白ひものだ。
そのパブリック・ハウスは極小さかつた。
しかしパンの神の額の下には赫い鉢に植ゑたゴムの樹が一本、肉の厚い葉をだらりと垂らしてゐた。