【ソウル聯合ニュース】北朝鮮が実戦配備のため最終発射実験を行ったと主張する口径300ミリの新型長距離ロケット砲が南北軍事境界線付近に配備されれば、韓国中部まで射程圏内に入る。韓国側には有効な迎撃システムがまだないとされる。
北朝鮮の朝鮮中央通信は22日、前日にロケット砲5発を発射したニュースを伝えた上で、「南朝鮮(韓国)作戦地帯内の主要打撃対象を射程圏に置く威力ある大口径放射砲(ロケット砲)の実戦配備を控えた最終試験射撃」と説明した。これを受け、同ロケット砲は近く実戦配備される見通しだ。
昨年10月の軍事パレードで初めて公開された口径300ミリのロケット砲の射程は最大200キロに達する。ロケット砲の弾頭には殺傷能力が高い高性能爆弾と建物の破壊が可能な二重目的弾(DPICM)を装着できる。
口径300ミリのロケット砲は1990年代に中国が開発したWS1Bロケット砲をまねたと推定される。
WS1Bは口径が302ミリ、射程は80~180キロで4~6の発射管を備えている。弾頭に装着される150キロの高性能爆弾は、約2万5000個の破片に散らばり殺傷半径は70メートルに達する。二重目的弾は475個の子爆弾から成り、子爆弾1個の破壊半径は7メートルだ。
北朝鮮は口径300ミリのロケット砲に自制制御・誘導装置を搭載し精度を高めたとみられる。こうした装置は砲弾を最大200キロ先の目標物まで正確に飛行させる。
韓国の首都圏を脅かす従来の口径240ミリのロケット砲(最大射程90キロ)を最前線地域に配備した北朝鮮が口径300ミリのロケット砲を新たに開発したのは、韓国中部の中核施設を狙っているためと分析される。
軍事境界線付近で同ロケット砲を発射した場合、平沢の在韓米軍基地を含む首都圏全域と群山の米軍基地、陸・海・空軍本部がある忠清南道・鶏竜台までが射程圏に入る。
韓国軍には音速の5倍で低空飛行する同ロケット砲を迎撃できる兵器はまだない。北朝鮮のミサイルを破壊する「キルチェーン」を2020年代半ばまでに構築する計画だが、車両に搭載されひそかに機動するこのロケット砲を迎撃するのは容易ではない。
韓国軍の対応兵器システムを強いて挙げるなら、ロケット砲発射基地を事前に無力化する多連装ロケットシステム(MLRS)「チョンム」だ。軍は昨年8月からチョンムを実戦配備し先月初めには実射撃訓練を公開した。だが、チョンムは射程が約80キロにとどまり口径300ミリのロケット砲の射程圏外でこれを攻撃するには限界がある。
また、韓国軍が保有する地対誘導ミサイル「ATACMS」の場合、短距離弾道弾ATACMS「ブロック1A」の射程が300キロだが、命中率に限界があるという指摘がある。