羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

俺物語!! 1

2015-04-16 20:42:42 | 日記
大和に惚れた猛男だったが、大和が砂川のことが好きだと思い応援することに決めた。モテる砂川と友達であるとよくあることだと猛男が達観していると、授業中に大和からメールがきた。件名は『おはよ~☆☆☆』である。今日が晴天であることを述べ、猛男の1日の幸福を願うメールであった。猛男は他愛なくほだされたが、大和の恋を応援すると決めていたので気持ちを振り切り、まずは砂川がどういうタイプの女子が好きなのか砂川を観察して見極めることにした。
授業中砂川を観察する猛男、徒歩で下校中砂川を観察する猛男、電車で下校中砂川を観察する猛男。(わからん!)帰宅し、風呂に入り、考えたが砂川の好みの女子がさっぱり分からない。そういえば砂川が女子と親しくしているのを見たこと無い。(砂よ、お前は一体どんな女が好きなのだ?)猛男はずんずんと、同じマンションのすぐ近くの砂川の家に入って行った。鍵は掛かって無い。
猛男はそのまま砂川の部屋に入った。「砂、入るぞ」「いつも入ってからそう言うんだな。何その格好?」「風呂上がりだ」「早いね、で?」猛男は咳払いをした。「突然だが、砂、お前はどういう女性が好きなんだ?」「本当に突然だな」猛男はAKBなら誰推し? セイラとフラウ・ボゥならどっち? 歌のお姉さんと体操のお姉さんならどっち? 等と立て続けに聞き、「体操(のお姉さん)かな?」と、何とか聞き出した。
「体操の、お姉さんか」猛男は窓から夕暮れの街並みを見詰めた。大和がどのタイプなのか? よく分からない。「お前、分かり難いんだよ」砂川はちょっとカチンときた。「お前は分かり易いよな。行けそうなヤツなら、誰でもいいんだよな」
     2に続く

俺物語!! 2

2015-04-16 20:42:31 | 日記
「ニコニコしてて、愛想のいいのが好きなんだよな。可愛い感じの」座った砂川を見下ろす猛男。「そうかも知れない。砂、ちょっと出よう」猛男はふいに言い出した。
夕方の街を歩き、階段を登って、近所の高台に来た猛男と砂川。高台は崖崩れ対策でコンクリートの補強が行われ、それがグネグネとうねったようになっていた。徒歩で立ち入れるにしてはフェンスも何も無い。高台には大きな木が一本生えていた。木は途中で二本に分かれ四方に広がっていた。分かれている部分が逆立ちした大きな人間に見える。「うむ、いつ見てもケツだ」木の前に立つ猛男と砂川。「砂、お前は彼女いるの?」「何だよ今日は?」「いるのか?」「いねーよ」「何でだぁ?! お前モテるだろ! 付き合ったりしたいって思わないのか?!」顔を相当近付ける猛男。「何だろう?」頭を掻く砂川。「ダルい」「な?」「付き合って何するのか考えるのダルい」「んぉぐッ!!」戦慄する猛男!(考えたら楽しいの間違いだろうがッ?!)「何で女子に興味無いんだぁッ?!」「興味無い何て言ってねーだろ?」「じゃあ、興味は有るんだな?!」また顔近い猛男。「まあ、普通に」「よぉーしッ!! 分かった!」拳を握り締め、ねじり鉢巻き(巻いてた)を解き、それを肩に掛けて片手を木に突きキメ顔を作る猛男!「脈有りだッ!!!」「どうした?」砂川は困惑した。
その翌日? やはり授業中、猛男に大和からのメールがきた! ザッハトルテを作ったから明日受け渡しても構わないか? といった内容! 了解の旨を返信すると『うれしー』と返信の返信がきた。唐突に『たけおくん』と呼んでいいかとも書いて有る。それならば『大和』とこちらは呼ぶ旨を返信の返信の返信として返す猛男!
     3に続く 

俺物語!! 3

2015-04-16 20:42:21 | 日記
当日! 砂川を無理矢理連れて、待ち合わせの公園に向かう猛男。公園に猛男がその巨体をヌッと現すと顔を輝かせる大和だったが、横から約束してない砂川がスッと現れると大和は戸惑った。「こんにちは」「こんにちは」互いに挨拶する大和と砂川を満足気に(俺に任しとけ!)と見守る猛男。
ベンチに座り、大和のザッハトルテを一口食べた猛男は驚愕した! 「美味い! これがザッハルテルト(ザッハトルテ)か!」夢中で食べる猛男! 「よくそんなに食えるな、太るぞ?」呆れる砂川。「運動するから構わんんッ!!」「食って動いたら、それ力士だろ?」「フッ、力士か」満更でもない猛男。「照れるぜ」「誉めてないけど。俺、何か飲む物買ってくるわ」これに猛男を微笑んで見ていた大和が慌てた。「あ、ごめん。気が利かなくて」「何がいい? ついでに買ってくるけど」「ウチも一緒に」「いーい」片手を振って砂川は歩き去った。
(さすが砂、さりげない)感心する猛男。「砂は格好いいよな」「ええ? うん」「そうだろうなぁ、三歳の時からだからもう10年以上の付き合いになるが」猛男は砂川の良さを伝える為、昔話を始めた。幼稚園の時、劇で『泣いた赤鬼』を行うことになり、猛男は『赤鬼』を元気よく演じて客を楽しませ、砂川は『青鬼』を演じて客を感動させた話。小学一年の時、猛男が学校で小便を漏らすと砂川は笑ったがその後で一緒にバケツの水を被ってくれて皆にはバレなかった話。遠足で猛男が浮かれ弁当をひっくり返してしまうと、やはり砂川は笑った後で弁当を半分以上くれた話をした。
「半分以上だ」猛男は大和に念を押した。「ああ」相槌を打つ大和。一応『砂の良いところ』は伝わったようではあるが、話せば話す程、
     4に続く

俺物語!! 4

2015-04-16 20:42:10 | 日記
自分の間抜けな話になってしまう為、恥ずかしくなってきた猛男。黙ってザッハトルテをまたムシャムシャ食べ出した猛男を大和は覗き込んだ。「どおしたのぉ?」「いや」赤面する猛男。(しっかりしろ! 二人を応援するって決めただろ!)自分を叱る猛男! 「大和!」「はい!」急に呼ばれて驚く大和。「砂は体操のお姉さんが好きで、『女性』に興味があるそうだ」「そうなんだぁ」そうは見えてなかった大和!「彼女はいない!」そう言って、更に何か応援する材料がないか猛男が思案していると「また、作ってきてもいいかな?」とおずおずと聞いてくる大和。「ああ」モシャモシャ食べ続ける猛男。
砂川が戻ってきた。大和に飲み物を渡す砂川。「はい」「ありがとう」黙って猛男にも渡す砂川。「ありがとう」大和が代金を払おうとすると、砂川はいつもケーキを作ってもらってるからと断ったが、「ウチ、こおいうの、キッチリしないと気持ち悪いから!」と支払った。この様子を見詰める猛男は(大丈夫だ。お似合いだぞ、大和)と、仏の顔で頷くのであった。
日が暮れて、別れる段になると、「えっと、あの、またメールしたりしてもいいかな? ケーキの好み聞きたい時とか」と大和が猛男に問い出すと、(大丈夫だ。分かってるぞ、大和)「いいぞ!(俺は味方だ!)砂のメアドも教えてやれ!」猛男は砂川の肩を叩き促した。「え?」困惑する大和。「何で? いいよ」「別にいいけど」砂川はスマホを取り出した。「じゃあ」結局流れで大和もスマホを取り出し、メアドを交換する二人。「それじゃあ、また」「ああ」大和は猛男に言って、笑って手を振り去ろうとした。その時!
いかなる偶然か?! 建築ビルに釣られた極太鉄骨が大和の近くに落下! そのまま大和の方に倒れてきた!!
     5に続く

俺物語!! 5

2015-04-16 20:42:01 | 日記
「大和ォッ!!」ダッシュする猛男。「嫌ぁーッ!!」座り込む大和! 大和に被さり庇う砂川! 鉄骨は、「ふんぐぬぬぐぬぬんんくがぁッッ!!!」猛男が支えていた!!「猛男くん?」「早くぅッ! 行けぇッ!!」滝汗の猛男!「任せた!」砂川は大和を連れ、鉄骨の下から逃れて行った!(そうかぁ、ここで俺は鉄骨に行ってしまうからダメなのか。王子様に、なれないのか)徐々に鉄骨に押し負けていく猛男。(まぁ、いいだろう。あの子は助かるんだから。それで、いいんじゃねーか?)いよいよ下敷きになってゆく猛男!
意識も一瞬暗転するが「気を付けてよ!」砂川が後ろに入ってきた!「これ、コイツじゃなかったら死んでるから!」後ろに話し掛ける砂川! 近くを工事の作業員達が慌ただしく走る。何らかの処置を始めたようだ。「砂、お前」後ろを振り返る猛男、見ると砂川の後ろで顔を真っ赤にして大和まで鉄骨を支えていた!「実は、ウチ、結構、力有るし」その言葉に猛男は更なる剛力を発揮した!「んんん、うおらぁああッ!!!!」鉄骨を、猛男は投げ飛ばした!!
何とか助かり、息も絶え絶えの三人。大和は猛男が頬に怪我をしているのを見付けると鞄から絆創膏を取り出し傷に張った。「いっつも助けてもらってるね。ありがとう」大和の笑顔に猛男はすっかり心を奪われ、フラフラになった猛男は帰り道、マンホールにハマり、車道に出そうになり、砂川がフォローしなければ危ういところだった。
夜、大和から電話が掛かってきた。(しっかりしなければ。応援すると決めたんだ)「もしもし!」「大丈夫だった?」「大丈夫だ!」「えっと、次会うとき砂川君無しでいい?」「いいぞ」(ついに、恋の相談か)猛男はそれに答えるつもりだった。
・・・鉄骨の召喚っぷりが、魔法かよ! どうなることやら