羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

とと姉ちゃん

2016-06-21 18:21:30 | 日記
 夜、食が細くなった滝子を君子が気遣っていると「大学を卒業したら工場で働くことにします」打ち明ける鞠子。仕事の後で書くとも言ったが戸惑う常子。清も隈井に店を任せ、日本木材統制株式会社で働くことを打ち明けた。「早く(戦争に)勝たないかな」ボヤく美子。
 後日、隈井が以前から端材で作った木の玩具を青柳商店の庭で、近所の子供達に美子と共に配っていた。はしゃぐ子供達。縁側で滝子と見守る常子。「前から作っていたみたいです。この界隈の重苦しい雰囲気を吹き飛ばしたいって」微笑んで見ている滝子。「あっしは泣き虫ですけどね。人の事は笑わすのが好きなんですよ」隈井は常子にそう語っていた。
 隈井の考えに触発された常子は『笑い』の企画を会議で提案したが、同様の企画を以前谷が提案して時世を気にした他の社員に反対されて断念していた。「もう一度、決を取ろう」谷は改めて挙手を求めたが、最初は常子と谷しか挙げない。しかし「僕も賛成」遅れて手を挙げる五反田。「美しい女性の悲しむ顔を見たくないので」すかす五反田だったが「本当は、笑える雑誌が読みたいんだよ」と続け、他の社員達もこれに続いた。『笑い』の特集の雑誌を作ることが決まった。
 昭和16年10月。鞠子が工場の事務員として就職し、清も件の会社に就職し、寝込んでいたはずの滝子が常連客相手に身なりを整えて「ウチは青柳商店ですよっ」と見栄を切り、その回復を皆に期待させていた。その日、常子は『笑い』の特集の雑誌の挿し絵を五反田の先輩の花山という男に描いてもらう為に内務省を訪れた。花山は国民標語の選定をしていた。「帰れ、邪魔をするな」「いや」「帰れ、邪魔をするな」「ですから」「帰れ、邪魔をするな」不意に振り返る花山。「三度も言わせるなぁーっ!!」戦後、仕事のパートナーになる花山の勢いに、この時の常子は圧倒されるばかりだった。
・・・なぜかホラー調のラストカット。

ヤロカ火 8

2016-06-21 18:21:06 | 日記
A8  「あの猫、『子孫も』とか言ってたよね?」
「ああ、まあ、そんなような事、言ってた」
 二人は互いに目を逸らして赤面した。と、それぞれ持っていた御守りが、ドクンッ、と脈打つ感覚があった。
「え?」
「何だ?」
 二人が驚いていると、高架下のトンネルに奇妙な人影が三体いた。三体とも両手が燃えている。よく見れば一人は老婆、一人は会社員、一人は小学生であるようだったが体が異様に捻曲がっていた。
「ヤロカヤロカヤロカヤロカヤロカヤロカ・・・」
 その者達は口々に呟いていた。
「あの人達っ、そうだよね?」
「くっそっ、またかっ!」
 岳は寧々の前に立ち、御守りを手にボクシングの構えをとった。燃える手を持つ者達はそれに反応し、一斉に二人に走り寄ってきた。
「やろかぁッ!!」
「やる時ッ!」
「やるッ! ヤルッ! 殺るぅッ!!」
 叫んで迫るその者達の口の中に、光る目を持つ小さな者達が無数に蠢いていた。

ヤロカ火 7

2016-06-21 18:21:00 | 日記
A7  前方の高架下から風が吹き込んできた。
「風、冷たいね」
「もう10月だからな」
 二人はそのまま高架下へと歩いて行っていたが、その目の前で不意に寧々が足を止めた。
「寧々?」
「岳ちゃんさ、その連絡がつかなくなった人って、まさか」
「うーん、どうだろう? 確かに不自然だとは思った。トラブルは聞かないし、社員だしな。急に蒸発っていうのはちょっと」
「大丈夫なのかな? 岳ちゃんに近い人だし、また・・・オバケだったら」
「近いといっても同じ現場の人ってだけだ。それに、山元からまたもらった御守りもあるし、寧々も持ってるだろう?」
「そうだけど」
 寧々は内ポケットから霞真淵神社の御守りを取り出した。岳もポケットから同じ御守りを取り出した。
「あの『猫』は、俺達の手には化け物に対抗する力が宿ったとも言ってた。きっと、大丈夫だ」
「そうだね、モフモフ猫が言ってたね」
 その『猫』の尻尾で巻かれた事のある寧々にとっては『モフモフしてる』印象が強いらしかった。
「あのさ、岳ちゃん」
「ん?」