羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

とと姉ちゃん

2016-06-30 18:16:50 | 日記
 国民服を着た高齢の常連客が常子の貸本屋に訪れていた。自粛を求める時世だが読書なら構わないだろうと笑う常連客。常子が今日は姉妹の誕生日を祝うと話すと「良い席になるといいね」常連客に笑顔で言われ、常子も愉しげに応えていた。
 だが、常子が帰宅すると三宅が婦人会を引き連れ金物の徴収を君子に『必需品でなければ』と言いつつ尊大に命じていた。「こんなやり方は」常子が意見しようとすると「また楯突くつもりかっ?」三宅が凄み出し「いえ」二の舞を避けようと、常子は引き下がった。これに三宅はミシンの徴収まで言い出し、さらに額に入れて掲げていた家訓を目を止め「何がお出掛けだっ。非国民がっ!」額を投げ捨てる三宅。ここで「いい加減にして下さい」鞠子が進み出、三宅が身だしなみを整えているのを引き合いに自分達もミシンで身だしなみを整え、心を正し、戦いを忘れていないと捲し立て、三宅を一先ず引き下がらせることに成功した。
「ごめんっ」以前臆病と言って喧嘩した手前、常子はややおどけて鞠子に謝り、少しだけ場は和いだ。ミシンも徴収されずに済んだが家訓の額は押し入れにしまわれることになり、誕生日のお祝いも翌日に行うことになった。それでも工面した小豆でおはぎを作ることを美子は特に楽しみにしていた。
 その日の夜は昭和20年3月10日、いつもと様子の違う空襲があった。常子達は無事だったが、火の始末をしている暇がなかった為、小豆を焦がしてしまい、泣く美子に、君子は小橋家では泣くことを禁止することを提案した。「次に泣くのは嬉しい時」君子はそう言って娘達を励ました。昨夜の空襲で以前住んでいた深川を始め、下町は大きな被害を受けていた。常子が紙一重だったことを思い知らされていると、焼け出された人々の中に子供を二人連れたお竜を見付けた。「お竜さん?」常子は思わず駆け寄って行った。
・・・論破、東京大空襲ときて、お竜か。接点は一度きり。基本、淡白な常子。