それはバランス感覚だと言われています。
作品を作るときに私がまず考えるのは、一文字の場合
どんな文字を書きたいか?
が先行します。
字書をめくりながら、インスパイアされる文字を探します。
あるいは、大きな出来事があって、その出来事を一文字で表す事が出来る場合、文字の意味先行となります。
探し出せたら、それをみながらまずは臨書。
形から入り、そこに意味を込めて書き、最後はオリジナリティが出せるまでブラッシュアップしていきます。
文言の場合は、
どんな文章を書きたいか?
が先行します。
めくるのは、いろんな言葉が収められた『墨場必携』です。
今の気持ちを表す言葉を探します。
見つかったら、それぞれどんな文字にしたいか、字書をめくってそれぞれをコピーして並べ、ベーシックなお手本を作ります。
この先は、一文字の場合と同じです。
文字の大きさや形、濃淡、潤渇、などのバランスを考えて作品を作るわけです。
達人になると、即興の揮毫でバランスをとりながら書く事が出来るようになります。
練られた作品にはじわっとくる奥深さがありますが、即興の作品にはより作者のエネルギーをより感じる事が出来る作品が多い様に思います。
音楽で例えるなら、スタジオ盤とライブ盤の違いにかなり近いでしょう。
即興の作品は、出来上がった作品を見るより、揮毫を生で見るほうが、百倍感動するはずです。
つまり、血と汗と涙を肌で感じられるライブの良さですよね。
一気に仕上げたと思われる数々の名品を揮毫している場面を見る事が出来たら、どれほど興奮出来るか想像するだけで興奮してしまいます。
しかしそれは無理というもの、、、。
だからこそ、我々は想像力を働かせて、懸命に臨書するのです。
目の前にあるお手本の形から入り、そこに作者が込めた思いを読み取り、新たに自分の解釈を注入して、リスペクトしながらもお手本と対峙してそれを越えようとする作業こそが尊いのであります。